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3幕 ブレイズライダー2.5 ファースト・チェンジ(7)

「ジェネラルGさん! 今すぐにブレイズライダーを仕留めましょう!」


「そうね、嫌な予感がしてきたわ!」


 近くのビルに叩きつけられたダースオーガを一瞥すると、ヴァッサとジェネラルGが俺目掛けて攻撃を仕掛けてくる。


「そうはさせるか! 彼には助けて貰った恩がある!」


 しかし、俺とヴァッサ達の間に割って入るように上空から巨大な影が降下する。

 突然現れたその黒い装甲服は両腕から陽の壁を生じさせると、二人の攻撃を防ぎきる。


「クロガネ参上! 無事か、ブレイズライダー? さっきとは立場が逆になったな」


「……無事とは言い難いけど、とりあえず助かった」


 助けてくれたクロガネに礼を言いながら立ち上がると、ジェネラルGが叫び出す。


「ちょっと! 貴方の一張羅はさっきアテクシが破壊した筈でしょ! なのに、何でまた着込んじゃってるのよ!」


 そういえばそうだ。

 確か俺が駆けつけた時に、クロガネの装甲服は破壊されていた筈。


「さっきお前に壊されたのは、BM―1とのコンペに使われて負けた試作品だ。今着ているこいつは、最初から戦闘用に作られた『黒鉄二式』……らしい。俺はよく分からないけど、文がそう言ってたから多分そうなんだろう」


 どうやら、さっき破壊されてた装甲服とは別物らしい。

 しかしさっき破壊されてすぐに次の装甲服を用意できるとは、経済的に余裕があるのは羨ましい。

 金がすべてとは言わないが、全く羨ましい事だ。


「て、敵が増えたオニ! これは不味いんじゃないかオニ!?」


 ともあれ、思わぬ増援を得る事ができたうえに、鬼達は動揺までし始める。

 これは風向きが変わってきたか?


「……これだから鬼を使うのは嫌だったんです。一人増えただけで、ここまで動揺するなんて――」


「一人増えただけ? おいおい、さっきダースオーガを吹き飛ばしたのは俺じゃないぜ」


 先程と変わらず笑顔を浮かべてはいるが、こめかみに青筋が浮いてるようにみえるヴァッサの言葉をクロガネが遮る。

 ……脳裏に一人のヒーローの姿が過るが、すぐにその考えを打ち消す。

 まさか、さっき別れたばかりだし、彼女なわけが無いだろ。


「まさか!? 皆さん、上空に気をつけて――」


 俺と同じ人物に思い当たったのか、ヴァッサは周囲に警戒を呼び掛けようとするが、その途中で上空から突撃してきた人影によって蹴り飛ばされる。


「気付くのが少し遅かったね。ストームガール、再び参上ってところかな」


 着地した状態から姿勢を整えつつ、ポニーテールを揺らしながら俺とクロガネの方に振り向いたストームガールはそう言ってニカッと笑う。

 ……マジかよ。


「は、早すぎないか? さっき飛び立ったばかりだろ」


「文ちゃんに感謝しなよ。ボクの事は気にしなくていいから、目一杯飛ばしてブレイズライダーを助けてほしいだってさ。全力で飛ばなきゃ、ここまで早く帰って来れなかったよ」


 成程、多田博士のお願いに応えて、全速力で往復してきたという訳か。

 ……いや、全力を出すだけでここまで早く動けるのは異常だろ。

 流石はスーパーヒーローってところか。


「ああ、だから楓花に抱えられてた文が泡を噴いて気絶してたのか」


 ストームガールの話を聞き、合点がいった様子でクロガネが俺の方を見ながら呟く。

 鎧の下に隠れた顔は、どんな表情をしているのかわからない。

 ……多田博士には、後でちゃんとお礼を言っておこう。


「二人してまたアテクシの邪魔をするって訳ね。このお礼はキッチリと――うおっ!?」


「その前に此方からお礼参りをさせてもらおうか。よくも拙者の弟子をリンチしてくれたな!」


 立て続けに仲間を倒されて激昂するジェネラルGだが、その眼から光線が放たれるよりも早く、クロガネ達と同じように空から降下してきたピンクのジャージを着た男の振るう刀から逃げる為、攻撃を中止してその場から飛び退く。


「も、桃太郎さん!? 空を飛べたのか!?」


「当然だ。拙者にかかれば、そのくらい朝飯前よ」


 空から降ってきた桃太郎さんは俺の問いに、自信満々な様子で返す。

 この人、本当に人間かよ。


「ちょっと! アテクシを前にして、余所見している場合――ぬほぅ!?」


 俺の方を見ている桃太郎さんに攻撃を加えようとしたジェネラルG。

 しかし、今日何度目かになる空から振ってきた人影に蹴り飛ばされてしまう。


「何を言ってるんだ、桃太郎。俺に抱えられてここまで来たんだろうが」


 忍び装束の上からウィングスーツを身につけた雉鳴さんが、ジェネラルGを蹴り飛ばしてから桃太郎さんの隣に降り立つ。

 ……さっきのはうそかよ。 


「細かい事はどうでもいい。大事なのは弟子を助ける為、ここまでやってきたという事実。さあ、一緒に鬼どもを倒すぞ!」

 ……本当、なんでこの人は根拠のない自身に満ち溢れていて、俺を弟子認定してくるんだろう。


「まさか、ヒーローが集結するなんて。折角分断したのに、無駄になってしまいました」


「どうやら形勢逆転みたいだな。今の内に降参した方が良いんじゃないのか?」


 俺達ヒーローが集まった現状を嘆くヴァッサに、降伏を促す。

 尤も、聞く前から返事はわかりきっているけどな。


「お断りします。降参するくらいなら戦って散りますし、そもそも負ける気なんてありませんよ」


「そうだろうな。それじゃあ、これで遠慮なくぶっ飛ばせるって訳だ」


 交渉決裂。

 お互いに引く気は一切無いという意思がある以上、決着を付ける手段は一つしかない。


「よく言ったぞ、ヴァッサ。それでこそノワールガイスト幹部の一人! 敵の数は増えたが、全員まとめて我らの名を知らしめる為の生け贄にすればいい! 奴等を叩きのめせ、鬼達よ!」


「そうね。アテクシ達の名を広めるには、無名のヒーロー一人だけじゃ少し足りないと思っていたところなのよ。さあ、機械人形ちゃん達も行ってらっしゃい!」


 ジェネラルGとダースオーガの号令が響き渡ると、鬼や機械人形が群れをなして俺達に襲いかかる。


「馬鹿正直に正面から仕掛けてきたか。新しいクロガネの力、試してみるか!」


「俺も手伝う。世界征服なんて企むアホども、燃やし尽くしてやる!」


 クロガネの装甲の一部が展開し、飛び出した砲筒と突き出した両掌から光弾が発射されるのに合わせ、火球を放ち敵を迎え撃つ。

 二人ぶんの攻撃に曝された敵達の一部が地面に倒れて動かなくなるが、攻撃の手数が足りないのかその勢いを殺すには至らない。


「二人とも、中々やるね。アタシも負けてられないかな!」


 ストームガールはそういうと飛翔し、大胆にも敵の密集している中央部に降り立つ。


「す、ストームガール! 怖いオニ!」


「いや、飛んで火にいる夏の虫オニ! このまま全員でタコ殴りに――」


 鬼達が喚き散らし、機械人形がストームガールへと攻撃を仕掛けようとする中、ストームガールを中心にして竜巻が巻き起こり周囲の敵を吹き飛ばす。

 宙へ巻き上げられた鬼達やバラバラになった機械人形が、重力に従い落下する。

 その数、目視だから正確にはわからないが全体の約半分。

 ……もう、彼女一人でいいんじゃないかな。


 「どうしたの? そんなんじゃ、アタシを倒すなんて――」


「流石はスーパーヒーローと云いたいところですが、貴女達の相手は鬼と機械人形だけじゃありません!」


 竜巻が消え去り、姿を現したストームガールの元へといつの間にか近づいていたヴァッサが飛びかかった。

 その光景を目にした俺も、ヴァッサを止めるべく駆け出そうとする」。


「勿論、わかってるよ。そして、貴女の相手もアタシだけじゃない!」


「斬り捨て御免! 覚悟ォ!」


 俺が一歩踏み出した瞬間、いつの間にか遥か上空まで飛び上がっていた桃太郎さんが、雄叫びをあげながらヴァッサ目掛けて刀を振り下ろしながら降下する。

 突然の攻撃をヴァッサは後退して躱すが、着地した桃太郎さんは刀を振るいながら前進を続け、ヴァッサを追い詰めていく。


「い、いつの間にあそこまで……いや、それよりもどうやってあんなに高く跳んだんだ?」


「竜巻が発生した同時に、嬉々として飛び込んでいた。相変わらず無茶苦茶な奴だ」


 目の前で起きた事に対する疑問を呈した俺に、雉鳴さんが焦った様子も見せずに返事をする。


「竜巻の中に飛び込んだって、正気か?」


「本当だ。どれだけ自分に自信があれば、荒れ狂う竜巻の中に飛び込むなんて所業ができるんだ」


 雉鳴さんの話を聞いてボヤくクロガネに、思わず同調する。

 言うこともそうだが、やる事も無茶苦茶だ。


「あいつにとってはあの判断が正気なんだろ。さて、俺もそろそろ仕事をするかな」


 雉鳴さんがそう言うと、一瞬にして彼の姿が消え去った。

今回の話を読んでいただきありがとうございます。

ブクマ・ポイント・感想をもらえれば筆者のモチベーションが上がるので非常にありがたいです。

次回は来週日曜日の昼十二時投稿なので、読んでもらえたら励みになります。

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