3幕 ブレイズライダー2.5 ファースト・チェンジ(6)
「まあ、お前らが逃げても地獄の底まで追い回すけどな!」
仲間があっさりと殴り倒されたことに警戒したのか、鬼達は逃げ出す事は無いものの距離をとる。
「ええい、小癪な真似を! ……時にヴァッサよ、ターゲットの小娘はどこにいる? 何故この生意気なヒーローしかいないのだ?」
大人しく燃やされていればいいものを、纏わりつく炎を振り払って、ダースオーガはヴァッサに多田博士がどこにいるのか問いかける。
「多田博士は、残念ですが逃げられてしまいました」
「ヴァッサちゃんにしては珍しいわね。それじゃあ、もう一つの目的にシフトしたって訳ね」
……もう一つの目的?
「おい、お前達の目的は多田博士の頭脳だけじゃ無かったのか! 何を企んでる!」
俺の問いに、ヴァッサは一度くすりと笑ってから口を開く。
「普通は聞かれて答える事なんて無いんですけど、特別に教えてあげます。私達のもう一つの目的、それはノワールガイストの名を世界に知らしめる事です!」
「……は? 何で秘密結社の存在を公にしようとするんだよ。お前ら馬鹿なのか?」
予想もしていなかったもう一つの目的に、煽る気は無かったのに辛辣な事を口走ってしまう。
「今までのように隠れて活動するなら悪手でしょうけど、世界征服の為に表舞台に出て活動するのだから、アテクシ達の事を知って逆らう気も起きないようにするのよ」
「そして貴様は我らノワールガイストの名を世に知らしめる為の生け贄、第一号になるという訳だ。光栄に思うが良い」
……世界征服とはまた、大きく出たもんだな。
「そんな不名誉な称号、お断りだね。というか、誰にお願いしても断られるから、諦めとけよ」
「貴様の意思など関係ない。さあ、お前達、この生意気なヒーローを叩きのめすのだ!」
ダースオーガが周囲の鬼や機械人形に指示を飛ばすと、俺目掛けて一斉に飛びかかってくる。
「一番槍……いや! 一番金棒はいただいたオニ!」
「お前ら程度で、俺を倒せると思うなよ!」
最初に近づいてきた鬼が振り下ろした金棒を受け止めると、炎を灯した拳で受け止め溶かす。
「か、金棒が――ぐえっ!?」
動揺する鬼を蹴り飛ばすと、背後に迫っていた別の鬼へと振り向き殴り付け、鬼達の背後から銃口を向けていた機械人形目掛けて炎を放ち、その銃身を溶かす。
行き場の無くなったエネルギーが暴走して爆発し、機械人形の腕が破壊されるのを尻目に近くにいる鬼達へと攻撃を加えていく。
「勘違いしてるようだけど、貴方の相手は鬼と機械人形だけじゃないのよ!」
遂に仕掛けてくるか。
ジェネラルGの出方を伺うべく身構えると、奴の両目が怪しく光り二筋の光線が放たれる。
黙ってやられるつもりはないので光線を防ぐべく炎を放つが、横合いから放たれた水流により消火されてしまう。
「たとえ炎を使えても、私の超能力の前では無力ですよ。さあ、どう乗り切りますか?」
ヴァッサはお手並み拝見という様子だが、攻撃された此方としてはそれどころではない。
その場から飛び退き光線をかわすが、着地すると同時に頭上へ影が差す。
「隙あり! こいつを受けられるかな!」
見上げればダースオーガが光剣を振りかざしながら、俺目掛けて飛びかかっていた。
先程の戦闘で戦ったからわかっているが、あの光剣の攻撃を奴の言う通りまともに受ける訳にはいかない。
まともに受け止めようものならスーツごと俺の身体は焼き斬られてしまうだろう。
しかし、普通にかわそうにも態勢を整える前に奴の剣は俺の元に届く。
……仕方ない。
「ぐっ、がぁぁぁ!」
点火装置を作動させ、靴裏から火花を散らすと同時に爆発させて自身の身体をその場から無理矢理吹っ飛ばす。
ダースオーガの光剣は空を切るが、無理な態勢で動いたことで身体に痛みが走り、思わず呻き声を上げてしまった。
「私の挑発に乗らず、自らの身体を無理矢理吹き飛ばしてかわした――うおっ!?」
感心した様子のダースオーガだが、返事をしている暇など無い。
俺は立ち上がりながら奴の手元に握られた光剣目掛けて炎を放ち纏わせると、爆発させて破壊する。
「どうだ! これでお前の剣は破壊――おい、そんなのありか?」
ダースオーガは破壊された光剣を投げ捨てると、懐から新たに二振りの光剣を取り出すと、両手に携える。
「予備の光剣はまだまだあるぞ。さあ、もっと激しく抵抗しろ! そして無様な最期を衆目に晒し、我等ノワールガイストの名を世に広める為の生け贄になるといい!」
ダースオーガはそう言うと、周囲の鬼達と同時に駆け出してくる。
最優先で避けるべきは、ダースオーガの光剣。
今までの経験からして鬼達や機械人形の攻撃は勿論、ヴァッサの放つ水やジェネラルGの光線に当たったとして致命傷になる事はない筈だ。
ダースオーガの振るう光剣だけは確実に躱し、飛び交う光弾や光線、水流も躱し、時にその身で受けながらも近づく鬼達を次々に倒していく。
「ええい! 大人しく我が剣の錆となれ!」
「嫌だよ。そんなのに斬られたら、錆どころか塵に――ぐっ!?」
苛立つダースオーガを煽ろうとするが、突如として左脚に鋭い痛みが走り、呻き声を上げながら片膝を地面についてしまう。
脚に視線を向けてみるとスーツの一部が一文字に裂けており、血が滴っていた。
「ウォーターカッターの味はいかがでしたか? 私の超能力を甘くみてましたね」
……ヴァッサの言う通り、確かに油断はしていたがこの程度ならまだ動ける。
「そうだな、もうちょっと威力があると思ってたけど、こんなもん――!」
「おっと、それ以上動くと斬る。……何となく貴様の事がわかってきたが、口数が多いのは敵の気を散らす為だな?」
煽りながら立ち上がろうとするが、目の前に突きつけられた光刃に動きを止めざるをえなくなった上に、黙らされてしまう。
おまけに、俺がよく喋るようにしている意図まで見透かされてしまった。
「仮にそうだったとしても、俺が言ってる事は大体当たってただろ? そら、顔を真っ赤にしながら必死に否定してみせろよ?」
「……そのうるさい口、首が胴から離れても喋っていられるか試してやろう」
「待ってください!」
図星をつかれたのか、俺にとどめをさすべくダースオーガが剣を振り下ろそうと瞬間、驚くべきことにヴァッサが叫んで制する。
「どうした? まさか、この小僧に情が移ったなどと言うのでは無いだろうな?」
「何言ってるんだオッサン、それはねーよ。俺は彼女の邪魔をし続けた――」
「驚きました。まさかダースオーガさんに私の心中を見抜かれてしまうなんて」
……制止してきた時も驚いたけど、今はそれ以上に驚いている。
「お、おい! 急に何を言い出すんだ!? 俺とお前の間にそんな雰囲気無かっただろ!」
「そうよ! 貴女の色恋沙汰は気になるけど、今は心を鬼にして、私情を挟まず仕事を遂行するべきよ!」
ヴァッサとは数度戦ったが、彼女から好意を抱かれるような事があった覚えは一切無い。
一体、俺の何が彼女の琴線に触れたと言うんだ!?
「……ジェネラルGさん、何か勘違いしてるみたいですけど、私がブレイズライダーに抱いているのは怨讐の情。彼を殺すのは私です。というか、心を鬼にするなんて、彼等のようにはとてもなれないですよ」
ヴァッサはそう言うと、俺に向けて微笑んでくる。
普通のシチュエーションなら彼女のような美少女に微笑んでもらえれば多少気分が高揚するだろうが、彼女の言葉を聞いた今は背筋が凍るような思いしか抱けない。
「そ、そういうことならとどめは譲ろう……ただし、一撃位は与えさせてもらう!」
ダースオーガはそう言うと、再び剣を振り下ろす。
間抜けな事にヴァッサの言動に動揺させられていた俺は、咄嗟に避ける事もできず振り下ろされる光の刃を眺める事しかできない。
しかし、突如としてダースオーガが吹き飛ばされ、結果として奴の刃は俺に届くことはなかった。
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