2幕 オトギウォーズ1.5 集う、ヒーロー(8)
「……さて、話を続けよう。今から話すのは、私達の今後の活動についてだ」
「言われなくても大体何をやるかはわかっている。ノワールガイストを消滅させるんだろう? そうとなれば先手必勝。早速奴等を討ち滅ぼしてくれる」
先程はノワールガイストを迎え撃つ事に成功したが、防衛しているだけではいたちごっこになる。
ノワールガイスト側は鬼や機械人形を新しく作れば頭数を揃える事ができるが、生身の人間が主力の此方はそうもいかない。
戦いが続けば次第に疲弊して追い詰められてしまうし、事は手早く済ませてしまうに限る。
「そうしたいのは山々だが、残念なことに奴等の拠点がどこにあるかわからない。拠点の位置を突き止めるまで、暫くは防戦に徹するしかない」
……ううむ、中々上手くいかないものだ。
とはいえ、このまま手をこまねいている訳にもいかない。
「……防衛はいいが、奴等がどこを襲撃してくるか当てはあるのか? 今日は前もって作戦がわかっていたから待ち伏せしようとしていたみたいだが、今後はそうもいかないぞ?」
何はともあれ、策を講じる必要がある。
拙者としては適当に怪しい会社や工場を襲撃して情報を集めてもいいのだが、彼等と一緒に動く以上そういうわけにもいくまい。
世間体を守るというのは面倒臭い事だ。
「奴等は常に最先端の技術を求めている。黒鉄重工を襲撃したのも、何かしらの技術が目当てだろう」
拙者の問いに雉鳴が答え、式間殿も同意するように頷いてから口を開く。
「私達はこれから奴等が目を付けていそうな技術を有する企業を監視し、奴等が襲撃を仕掛けてきたら返り討ちにする。後手の対応になるが、やらないよりはマシだ」
式間殿の言う通りやらないよりはマシだが、つまりはあまり効果がある作戦ではない。
いざとなれば、拙者自ら情報を探って奴等の拠点を見つけだす事も考えておかねばな。
さて、もう一つ気になる事があるし聞いておこうか。
「作戦としてはそれで構わないが、奴等は何を狙っていたのだ? 黒鉄重工の持つ機械や設備か? それとも、新製品か?」
「機械人形を量産できるだけの能力はあるようだし、機械や設備は考えづらい。JDFで採用されたBM―1なんかは有用だが、奴等がそれを必要としてるかというと疑問符が付くな」
……BM―1、聞いた事がある。
ブレスレットから自動で転送されて装着される最新鋭の装甲服だったか。
鬼では難しすぎて扱えないし機械人形に使わせる必要性は皆無な以上、奴等が欲しがる装備でもないな。
しかし、頭脳明晰な拙者は奴等の目当てが何なのか大体見当はついた。
「BM―1を作った技術者は確か、さっきの少女だったな?」
「その通りだが、やけに詳しいな」
……あのような少女が世間にその名を轟かせる天才科学者というのはにわかに信じがたいが、今はそんな事を気にしている場合ではない。
「おばあさんから話を聞かされてたんだ。そんな事よりも、彼女に護衛は付けているか? それと、ここのセキュリティはどの程度だ? 警備員の数と配置は?」
「彼女に直接護衛は付けてないが、彼女がいるラボの警備にJDFの隊員が二人配置されている。もし敵が地上から攻めてくるようならすぐにわかるし、怪しい航空機が近づいてこようものならすぐに撃ち落とす。何でそんな事を――おい、どこに行こうとしている?」
式間殿の返事を聞き終え、すぐさま部屋の出口へ向かおうとする拙者を彼女は呼び止める。
他の者達も皆、拙者を見るだけで動こうとしない。
全く、察しの悪い奴らめ。
「文殿の護衛に向かう。鬼や機械人形ならともかく、ダースオーガやジェネラルGのような手練れが出張ってきたらただの兵士では対抗できん」
「……ま、待ってくれ桃太郎さん。ノワールガイストの狙いが文だって言ってるように聞こえるんだけど、俺の勘違いだよな?」
拙者の話を聞いた一成君が、動揺した様子で問いかけてくる。
……自分の妹が犯罪組織に狙われてるかもしれないとわかれば、動揺もするか。
「そう言ってるのだ。雉鳴、よくよく考えたら拙者はラボの場所を知らん。一緒に付いてきてくれ」
誤魔化しても無意味……いや、今事実を知っておいた方が良いだろうと考えて一成君の問いを肯定する。
そして拙者の頼みに雉鳴は許可を得るかのように式間殿へ目配せすると、彼女は黙って頷く。
「案内する。付いてこい」
「ま、待った! 俺も行く――おい楓花、何のつもりだ? そこを退いてくれ」
部屋を出ようとした拙者と雉鳴を慌てた様子の一成君が追いかけようとするが、彼の行く手を遮るようにストームガールが立ち塞がる。
「クロガネが破壊されてるのに……というか、屋内じゃ破壊されてなくてもクロガネは使えないか。それでどうやって文ちゃんを守るつもり?」
……ストームガールの言う通り、クロガネの無い一成君はただの一般人だ。
一緒に連れていったところで役に立つことは無い……いや、足手まといにしかならない。
「そ、それはなにも考えてなかったけど、俺は文の兄貴だ。文の身に危険が迫ってるなら、身代わりになってでも守って――」
「一成の気持ちはわかるけど、文ちゃんがそんなことを望んでると思う? ここはアタシに任せて、一成は大人しく――」
「痴話喧嘩はそこまでにしろ。拙者にとっては護衛対象が一人から二人になったところで大差ない。寧ろ目の届かない場所で変な事をされる方が迷惑だ」
面倒な事になりそうだったので一成君の言葉を遮ったストームガールの言葉を更に遮り、二人を仲裁する。
護衛対象が一人増えたところで拙者にとって何の問題も無いのは事実だし、ここで口論している暇があるのなら、早く文殿の元へ向かうべきだ。
「ち、痴話喧嘩!? いきなり何を言い出すんです! 俺達はそんなんじゃない!」
「一成の言う通り。アタシと一成はただの幼馴染みだよ」
拙者の放った痴話喧嘩という単語に顔を真っ赤にしながら反論する一成君を、ストームガールはケロリとした様子で肯定する。
……もう少し一成君をからかってみれば面白いものが見れそうだが、そんな余裕は無いな。
「そういう事にしておいてやろう。特に異論が無ければ今すぐ文殿の元へ向かうぞ」
「おい桃太郎、何をそんなに焦っている? ここはJDFの支部だし、安全だと――」
雉鳴が拙者の様子を見て怪訝そうに問いかけようとしてくるが、建物内に突如としてアラームが鳴り響く。
おまけに照明まで赤く明滅し始め、さながら緊急事態といった様相だ。
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