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2幕 オトギウォーズ1.5 集う、ヒーロー(5)

「よくも虚仮(こけ)にしてくれたわね! 酷い男!」


「時間稼ぎに付き合ってくれてありがとう。お前みたいな筋肉達磨の悪党にスカウトされても、誰が応じるっていうんだよ!」


 激昂するジェネラルGの怒りを、口八丁で更に煽るブレイズライダー。

 ジェネラルGの攻撃を躱しながら的確に反撃を仕掛けてはいるが、徐々に動きのキレが無くなってきている。

 ……体力的に厳しいようだな。


「時間を稼いだところで、どうにもならないわよ。誰が来ようとアテクシ達を倒す事なんて――」


 勝ち誇った様子のジェネラルGだったが、一体何が起きたと言うのか何の前触れなく吹き飛ばされる。


「どうにもならないだって? こっちには、スーパーヒーローがついてるんだぜ」


 ブレイズライダーが空を見上げながら、勝ち誇ったように呟く。


「ど、どうした、ジェネラルG! 一体何が――」


 そして、拙者の目の前にいたダースオーガもまた、急降下してきた人影によって吹き飛ばされた。


「ただいま。一成を安全な場所まで送り届けたから戻ってきたけど、遅かったかな?」


 拙者たちと互角に戦っていた二人を一瞬で吹き飛ばしたストームガールが、拙者の隣に降り立つ。


「いや、丁度良いタイミングで助かった。……ブレイズライダーよ、よく彼女が近づいているのがわかったな」


 ストームガールに助太刀の礼を済ませると、近寄ってきたブレイズライダーへと声をかける。


「……まさか、本当に戻ってくるなんて。友人がヒーローに詳しくて、ストームガールの事もよく聞かされてたんだ。だから、彼女が俺達を助けに戻ってくる方に賭けてただけだ」


 ……この男、中々無茶をするな。

 だが、気に入った。


「……えーと、ブレイズライダーだっけ? つかぬことを聞くけど、どこかで会った事あるかな?」


「ローカルとはいえ、ニュースで活躍が流れた事もあるからな。ストームガールのようなスーパーヒーローに知っていてもらえたのは光栄だね」


 ……ブレイズライダー、拙者が知らないだけで結構有名なヒーローだったのか?

 ううむ、弟子の方が有名となれば、師匠としての沽券に関わる一大事だ。


「ごめん、君の事は今日始めて知ったんだよ」


「……少し浮かれてたさっきまでの俺が、馬鹿みたい」


 ストームガールの返事に、ブレイズライダーは呆然とした様子で立ち尽くす。

 うむ、どうやら先程の懸念は杞憂に終わったようだ。

 ……おや? あいつら、まだ起き上がってくるか。

 悪党という奴等は、どいつもこいつもしぶとくて困る。


「うーん、でもどこかで見たことがあるんだよね。どこだったかな……」


「ブレイズライダーにストームガール、お喋りはそこまでだ。奴等、随分とタフなようだ」


 拙者は刀を構えながら二人に指示を出しつつ、立ち上がってきたジェネラルGとダースオーガを見据える。


「ストームガール! 相手にとって不足はないわ!」


「たかだか一人増えたところで、どうにかなると思っているのか!」


 ……その増えた一人によって、二人まとめて吹き飛ばされたというのにあの自信はどこから湧いてくるのだろう?


「あれ? アタシ、一人だなんて言った覚えはないよ」


 悪党どもにストームガールがニヤリと笑いながらそう返すと、遠くから聞きなれないサイレンの音が聞こえてくる。


「……警察? いや、このサイレンはJDFか!」


「その通り。さあ、アタシ達だけでなくJDFの相手もすることになるけど、まだ無駄な抵抗を続ける? 降参するなら受け入れてあげるよ」


 近づいてくるサイレンの正体をいち早く察したブレイズライダーに向けてストームガールが頷くと、彼女はジェネラルG達の方へと向き直って降伏するよう勧める。


「……こういう場合、採れる作戦は一つだな」


「ええ、どうやら貴方もアテクシと同じ考えみたいね」


 ジェネラルGとダースオーガは互いに顔を見合わせ、互いの意志が一致した事を確認する。


「全軍に告ぐわ! 高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応しなさい!」


「街を破壊しつくしてもいいし、逃げ遅れている者を襲っても構わん! とにかく暴れまくるのだ!」


 二人は高らかに叫ぶと、此方に背を向けて走り始める。


「逃がすわけなかろう! 拙者の刀の錆にして――ええい! 邪魔立てするきか!」


 刀を構えながらジェネラルG達を追いかけようとするが、拙者の行く手を遮るように数機の機械人形が立ちはだかる。

 即座に斬り捨てるも、視線を戻した時には二人の姿は見えなくなっていた。


「チッ、見失ったか。逃げ足ばかり速い奴等め」


「……やっといなくなってくれたか。正直、もう相手したくない」


 だいぶ痛め付けられていたからか、拙者の後を追いかけてきたブレイズライダーがぼやく。

 ……弱気なのはいただけないが、多少は仕方ないか。

 尤も、これ以上弱音を吐くのなら師匠として、容赦のない教育的指導をする必要があるな。


「大分お疲れみたいだけど、まだ逃げ出そうとしてる鬼や機械人形が残ってる。悪いけど、もう少し一緒に働いて――」


「いや、残党の処理はJDFの隊員に任せて構わない」


 遅れてやってきたストームガールが疲労困憊した様子のブレイズライダーに声をかけようとするが、どこからか現れた雉鳴によって遮られる。


「鳥羽よ、それは拙者達はもうお役御免という事か?」


「雉鳴でいい……というか、さっきそう呼んでほしかったな。ひょっとして嫌がらせか? ……まあいい、三人には俺と一緒に近くにあるJDFの支部まで来てもらう」


 ……そういえば、まだギャラを貰っていなかったな。

 予想以上にハードな仕事だったし、直接賃上げ交渉に臨むとしようか。


「拙者は構わない。二人はどうする?」


「勿論同行するよ。一成を置いてきたから、迎えに行かないと」


 拙者とストームガールは二つ返事で了承するが、残った一人は黙ったまま。

 拙者達三人の視線が自然とブレイズライダーに集まり、やがてその事に気付いたブレイズライダーが口を開く。


「……三人って、やっぱり俺も含まれてるのか? 早く帰ってスーツの修理に取りかかりたいから、遠慮させてもらう。それに天気予報だとこれから雨が降るらしいし、早めに帰りたい――」


 雉鳴の要請を断ろうとしたブレイズライダーだったが、いつのまにか背後に回っていた雉鳴が首筋にクナイを突き付けた事で黙らされてしまう。


「雉鳴、一体何をしている!」


「桃太郎とストームガールは信用のおける人材だが、お前はそうじゃない。色々と聞かせてほしい事がある以上、お前は絶対に付いて来てもらう」


 雉鳴の突然の暴挙に、拙者は柄にもなく驚き声を上げるが、雉鳴は意に介す事なくブレイズライダーへと話しかける。


「付いていってもいいけど、条件が一つある。それを呑むなら大人しく付いていってやるよ」


 追い詰められた状況にも関わらず、ブレイズライダーは強気な様子で雉鳴と交渉を始める。


「……言ってみろ」


「俺の正体を探ろうとするな。それだけ約束してくれればいい」


 ……そういえば、ブレイズライダーと名乗ったから今までそう呼んでいたが、どう考えても本名じゃない。

 拙者と会った時からヘルメットを被りっぱなしだったし、素顔すらわからない。

 弟子の素性を一切知らない事に、今さらながら気付かされた。

 ……まあ、どうでもいい事だな。


「いいだろう」


 雉鳴はブレイズライダーの要求を受け入れると、突き付けていたクナイを収めてブレイズライダーを解放する。


「話が早くて助かるけど、どうせなら脅迫する前に交渉してほしかったね」


「どこの馬の骨ともわからない奴を信用など、できる訳がない。なるべく有利な状況を作り出すのは当然だ」


 ……雉鳴のあまりにもひどい言い草に、拙者もそろそろ口を挟む事にする。


「さっきから聞いていれば随分な言い様だな。ブレイズライダーは曲がりなりにも拙者の弟子なのだし、先程まで共に戦っていたのだからもう少し信用してやってもいいんじゃないか? 確かに住所氏名性別年齢不詳、職業は自称ヒーローだが、そんな事は些細な……すまん、やっぱり怪しかったな」


 ブレイズライダーを擁護してやるべく事実を並べ立ててみるが、口を開けば開くほどにブレイズライダーの怪しさが増していく。


「……お互い納得して終わった話なのにさ、何で無駄にディスられなきゃいけないんだ!? 確かにヒーローは自称だけどな、ニュースとかでもちゃんとヒーローとして扱われてるんだぜ!? というかさっきから言おうと思っていたけど、弟子になった覚えはない!」


 ……狼狽えるブレイズライダーを見て、少しばかり申し訳ない気持ちになる。



「すまない、少し擁護してやろうと思ったのだが、余計なお世話だったな。それはそうとお主は弟子になった覚えがないと言ったが、拙者がお主を弟子と思えばそれはもう、師弟関係。諦めろ、お主はもう拙者から逃れることはできない」


「こっちの意思は無視!? 何だよ、その無敵の理論!?」


 ……喚くブレイズライダーを見ていると、何故だか既視感を覚えるが、まあ気のせいだろう。

 拙者はブレイズライダーを無視して雉鳴へと声をかける。


「全員同行するという事だが、乗り物はどこにある? この間みたいにヘリコプターを呼んでくれるのか?」


「残念だが、乗り物は用意できない。道路は瓦礫だらけでまともに走れないし、当然ヘリが着陸できる場所もない。歩いていくしかないな」


 雉鳴の言葉に拙者とブレイズライダー、そしてストームガールの三人は互いに顔を合わせるが、誰が喋る訳でもなく沈黙が場を支配する。

 暫くしてその沈黙を破ったのは、ストームガールだった。


「それじゃあアタシ、先に行ってるから。また後でね!」


 拙者達が何か言う間もなく、ストームガールは空の彼方へと飛び立っていく。


「……ええっと、雉鳴さん? JDFの支部まではどれくらいかかる?」


「歩いて三十分。これ以上無駄話をしている暇はないから、黙ってついてこい」


 雉鳴はブレイズライダーに返事をすると、そのままJDFの支部に向けて歩きだし、拙者とブレイズライダーはその後を追いかける。

 目的地に到着するまでの間、拙者達の間に会話は全く無かった。

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