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 得意げな聖女カメリア様に対して国王陛下や王妃様、第一王子以下の王族はもとより謁見の間に参集している貴族たちも戸惑いと疑いの表情を浮かべている。



「ウイリアム様、何をグズグズしているの? 女神さまの神託は得られたんだから悪女アリアンナ様は国外追放にしてくれるよね?」



 「悪女アリアンナを早く国外追放しろ」という催促の言葉に対して無言のまま疑わしそうな表情でカメリア様を見つめるウイリアム第一王子殿下。



「第一王子殿下、女神さまの神託に対して不敬です! 速やかに神託に従って行動を開始するべきです、さもないと神罰が下りますよ?」



 聖女取り巻きの神官の一人がウイリアム様に対して僭越な発言を大声で口にする。全く、無礼な神官です。聖女の取り巻きであるのをいいことに調子に乗っているのでしょう……


 でも、二回目のオルガン演奏のときの女神さまのお言葉、私には意味が分かったような気がします。あくまでも仮説なので確信は持てないのですが……

 その仮説を今ここで確かめるのは間違っていた時のリスクが高くて危険かもしれません。だけど今ここで確かめないと私の国外追放が決まってしまうかもしれません。どうするべきでしょうか……?


 迷う私がお父様であるフローライト侯爵の方に視線を向けると、お父様も何やら思うところがあったらしく任せておけみたいな顔になって国王陛下に発言を求めた。



「陛下、よろしければ発言の許可をお願いします」


「おおう、侯爵か、よろしい、発言を許可する」


「ありがとうございます。神託の聖女殿の女神様降臨の御業、まことに素晴らしいものでした。

しかしながら聖女殿が得たという神託の内容について疑いを持たざるを得ないのも事実、特にアリアンナの父親である儂にとっては聖女殿の神託内容を吟味して確かめる権利があると考えますが如何?」



「……侯爵の言われること尤もである」



 陛下はお父様の提案に同意された。しかし聖女の取り巻き神官様が血相を変えて口を挟む。



「侯爵殿! 聖女様に対して失礼ですぞ!」


「……黙れ。神官風情が侯爵に対して無礼千万、控えるがよい。このような振る舞い、二度目は無いぞ?」



 許可なく発言した無礼な神官に陛下が叱責をとばす。当然ですね、無礼を通り越して処罰されてもおかしくない振る舞いですから。

 しかし叱責された神官はいちおう黙ったものの憤懣やるかたないという体で不満を隠そうともしない、よほど調子に乗っているということなのでしょう。

 お父様が私に向かって問いかけるような眼を向けるので大きく頷いておく。お父様からのナイスなアシストがありそうです。



「陛下、我が娘アリアンナは真面目で正直などこへ出しても恥ずかしくない令嬢だと思っております。聖女殿が主張するような悪しき娘ではありません!

アリアンナに発言と弁明の機会を与えて頂きたいと存じます」


「うむ、侯爵の言われることいちいち尤もである! ではアリアンナ、発言を許す。思いを語るが良い」



 陛下は私に向かって優しく発言を促してくれた。今まで謁見の間の中央で跪いてやや顔を伏せ目がちにしていた私はゆっくりと立ち上がるとドレスの裾を摘みながら深々とカーテシーをして。ゆっくりと、そしてハッキリと言葉を選びながら話し出す。



「ありがとうございます陛下。

まず、私は聖女カメリア様にいかなる嫌がらせも意地悪もしておりません。

そもそも私とカメリア様とは普段顔を合わせることがないのにどうのようにして意地悪が出来るというのでしょうか?」



 国王陛下、王妃様、王子殿下はしきりに頷いて私の話を聞いてくれています。

 一方でカメリア様と取り巻きの神官様達は私を射殺すような悪意がこもった厳しい視線を向けてきます。あなたたち、凄く怖いです……



「そして先ほどの女神さまの神託については女神さまが神託として語られるのを直接に聞けたわけではございません。

聖女様が『女神さまのお言葉』としてお伝えになったものは、要するに聖女様ご自身のお考え、である可能性もあるのです。この点をよくよくご判断していただきたくお願いいたします」


「……あ〜ら、アリアンナ様? アタシは神託の聖女として日ごろから女神様の代弁者として女神さまのお言葉をお伝えしているんだよ? アリアンナ様は聖女であるアタシを愚弄し、冒涜しようとしているの・か・し・ら~?

まるで自分が『聖女』にでもなったつもりみたいね?

自分が聖女だと思うならアリアンナ様が女神さまから神託を頂けばいいんじゃない~?」



 本当に口が悪い人ですね、カメリア様は私を嘲る様に、そして私を見下しながら追い詰めてくる。

 相変わらず憎らしい嫌な性格をしています。いったい女神さまはこの人のどこが気に入って神託の聖女に選んだのかしら……


 でも。確かにカメリア様が言うように聖女様は『神託を得た』と内容を語るだけで女神様から直接お言葉として聞けないのが普通。

 だから普段からカメリア様の伝えてくる神託の内容は怪しいといえば怪しかったのだけど誰も否定しきれなかったのです、例え王族だとしても。



 陛下をはじめ王族の皆様は悔しそうな表情で聖女を見つめている。やはり聖女カメリアの神託の内容が怪しいと思っているのは王族の方々も同じみたいですね……


 恐らくそんなことを考えながら……カメリア様の煽りに対して私を含めて誰一人反応できず沈黙が続く中。聖女取り巻きの神官の一人がまたもや勝手に発言を始めた! 

 さっき陛下に「二度目はない」って言われたばかりなのにこの神官様は記憶能力が無いのでしょうか?



「はっはっは、アリアンナ嬢! そこまで言われるならご自分で聖女様の真似事をして女神さまの神託を願ってはいかがかな? まあ、無理とは思いますがね……」



 聖女カメリア様のコバンザメ神官様が意外な提案をしてきた! カメリア様の方をチラリとみると、余計なことを言うなみたいな表情かと思いきや……思いっきりテンパって慌てた表情をしている!

そうか、私の思った通りかもしれない、私の仮説はほとんど確信に変わりました! ここは怖いけれどリスクを取ってでもチャレンジするしかありません!



「えっそんなこと、聖女様の真似事なんてしても大丈夫なんでしょうか……」とか言いながらカメリア様の後ろにあるオルガンに駆け寄る私。


 カメリア様をグイっと一押しして弾き飛ばしてオルガンの前に座るや否や例の讃美歌のフレーズの演奏を開始する。カメリア様が弾いた下手くそな演奏を再現していきます。音を四カ所外して間違えるところも忠実に。

 弾き飛ばされたカメリア様は尻餅をついて唖然とした様子で口をパクパク開けたり閉じたりなさっています。もうちょっとだけパクパクしていてくださいね……



 私はもともとオルガン演奏が得意で一回耳で聞いただけで曲を楽譜に起こせるし再現演奏もできるのです。この讃美歌は有名だし暗譜してるから演奏は余裕です。


 もちろんカメリア様より遥かに上手に正確に演奏することも出来るけど何が「パスコードの条件」なのかハッキリしないのでカメリア様が演奏したとおり、耳コピしたまんま下手くそに、四カ所間違えて演奏します。




 するとーーオルガン演奏の後半から荘厳で神聖な光が天井から降り注ぎだしてーー演奏を終了して更に光が強くなってく!


 そして白く輝く若い女性の形が姿を現した!



『私は女神イース。人の子よ、我が神託を傾聴せよ……』



 成功しました! 女神さまが顕現なされました!



読んでいただきありがとうございます。

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次話 03 本当の神託の聖女

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