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01 婚約破棄されて断罪、追放?

このお話は三話で完結します。気軽に読んでいただければ幸いです。


「アリアンナ・フローライト侯爵令嬢! ラピスラズリ王国第一王子の名においてあなたとの婚約を破棄させていただく!

そしてこの神託の聖女であるカメリア嬢と新たに婚約することを宣言する!

これは神託の聖女カメリア嬢が得た『女神さまの神託』に従った決定である……」



 ラピスラズリ王国の王宮、謁見の間において私とウイリアム第一王子殿下との婚約破棄の宣告がなされていた。


 私との婚約破棄を告げるウイリアム第一王子の隣にはピンクブロンドの髪色の小柄なかわいらしい少女、教会が神託の聖女であると認定したカメリア・シリトン男爵令嬢がしなだれかかっていて勝ち誇ったような笑みを私に向けている。




 ……このカメリア嬢は女神さまの神託を得ることができるばかりか、降臨していただくこともできる神託の聖女様だ。


 今から半年前に突如その才能を見出されたカメリア嬢は教会の神官、巫女をはじめ枢機卿など教会幹部の目の前で何度も女神さまの降臨を実演して見せたという。


 更には第一王子ウイリアム様はじめ王族の目の前で女神さまの顕現を願い、その祈りに女神さまはお答えになったことから「神託の聖女」としての地位を不動のものにしたのだ。




 神託の聖女カメリア様はウイリアム第一王子の左腕を両手で抱え込みながら王子殿下に語りかける。



「王子様〜アリアンナ様はアタシが神託の聖女であることを認めず私に嫌がらせや意地悪を繰り返してきたのですぅ〜

婚約破棄だけでは安心できません〜お願いです、アリアンナ様を国外追放にしてください〜!」



 カメリア様の鼻にかかる、甘ったるい声が王宮謁見の間に響く。




 ……これは良くない流れになってきました。私と第一王子殿下との婚約破棄は諦めて受け入れるとしても……身に覚えのない濡れ衣を着せられて国外追放されるのは困ります。

 やむを得ず聖女カメリア様に反論しようと思って顔を上げ、発言しようと息を吸ったところで王子は右手をあげてやんわりと私の動きを制止した。


 第一王子ウイリアム様は困ったように神託の聖女様を見つめると彼女を落ち着かせるように、宥めるように優しく説得を始めた。



「いいかいカメリア嬢? アリアンナは侯爵令嬢で王立学園の学生寮にいるんだ。君は地方の貴族学校に通っていて王立学園には行ったこともなく聖女になってからは教会神殿に居てアリアンナと顔を合わせる機会は無かったじゃないか……

だからアリアンナが君を虐めることは出来ないし、虐める理由もないと思うんだ、なにか思い違いをしてるんじゃないかい?」



 ウイリアム様は優しく、しかしキッパリと神託の聖女カメリア様に告げていく。

 国王陛下や王妃様も心配そうに第一王子であるウイリアム様が聖女カメリア様を宥めるのを見守る。



「ウイリアム様〜アタシのことは『カメリア』って呼んでって何度もお願いしてるじゃないですかぁ……今度からちゃんとカメリアって呼んでくださいね!

それに何回も言ってるようにアタシは神託の聖女なんですよぉ? 聖女の言うことを疑うんですか〜?

……とにかくアリアンナ様は罪を犯した犯罪者なんです! その証拠として女神さまに降臨していただきます! 女神さまが降臨なされれば私の言うことが正しいってことですよね! 正しい心を持った神聖な神託の聖女だけが女神さまの神託を得ることが出来るんですから!」



 この人は自分の言ってることを証明するためだけに女神さまを降臨させようとしているの? 恐ろしい人……女神さまの怒りの神罰が降らなければ良いのですが……聖女だから大丈夫なのでしょうか?

 カメリア様は辺りをキョロキョロと見回して聖女取り巻きの神官たちを見つけると大声で命令する。



「あなた達! それをここへ持ってきて準備しなさい!」



 神官たちは聖女カメリア様が女神さまからの神託を頂くときに使っているオルガンをカメリア様の側まで運び込んだ。大人が二人居れば運べる小型のオルガンです。



 設置されたオルガンの椅子に座ったカメリア様は謁見の間の高い天井を見上げる。国王陛下たちにお尻を向けて演奏するみたいです。女神さまが顕現なされたときに陛下たちの正面になるよう配慮したのでしょうか……



「女神様、神託の聖女であるこのアタシの呼びかけに答えてください!」



 カメリア様はオルガンを弾いて曲を奏で始めた。曲は教会の礼拝の時に演奏されるポピュラーな讃美歌のサビ部分で10秒ほどの短いもの。ただし、カメリア様の演奏はお粗末で明らかに音を三か所外していた。



 聖女とは思えない下手な演奏を息を潜めて真剣に聴いている謁見の間の参集者たち。オルガンの音が外れる度に顔を顰める人が増えていく。



 しかし。そんな下手なオルガン演奏にもかかわらず謁見の間の天井から荘厳で神聖な光が差し込んできた! 

 ところが曲の演奏が終わると同時に神聖な光は消えてしまった……おや?



「あれ? おかしいな? なんでだろ、曲が終わると同時に降臨してくれるはずなのに。もう一回!」



 カメリア様は再度オルガン演奏を試みる。  

 演奏中にまたもや荘厳で神聖な光が天井から降り注ぐも曲の終了とともに光が消えてしまった。



「どうして? どうして降臨しないの? なにか間違えた?」



 二回連続して女神様降臨に失敗したカメリア様は目に見えて焦りだした。


 その時! 優し気で、それでいて荘厳で神聖な若い女性の声が謁見の間に響き渡る!



『……パスコードを二回連続で間違えました。三回連続して間違えるとロックされます。 ロック解除の手続きが必要となりますので注意してください……』




 謁見の間に参集した人々の間にどよめきが広がる。「おお! これが女神さまの神託なのか、有り難いが意味が良く分からなかったな」など思い思いに呑気な感想を口にしている。



 一方の私は焦りに焦っていた。何しろ今ここで女神さまに降臨されてしまったら第一王子殿下との婚約破棄どころか国外追放になってしまうかもしれない私は必死なのです。


 でも「パスコードを二回連続で間違えました」という謎の言葉は一体どういう意味なの? 何かもの凄く重要な事のような気がします!



……パスコードを二回連続で間違えました。三回連続して間違えるとロックされます。 ロック解除の手続きが必要となりますので注意してください……



 これの意味……私は謁見の間に響き渡った女神さまの言葉を何度も繰り返し反芻しながら聖女カメリア様の様子を観察してみる。

 アタフタとテンパっているカメリア様は眼を見開いて右拳を左手のひらにポンと打ち下ろした。さては何か閃いたようですね……



「ああ、そっかーー! オルガン練習しすぎちゃってチョッと上達しちゃったから……最後の音をアレにすれば良いんだ!」



 喜びのあまりなのか思考がダダ漏れの聖女カメリア様は三度目のオルガン演奏を開始する。今度は最後の音をアレに出来たみたいで演奏が終了した後も神聖な光はその輝きを一層強くしてーー白く輝く若い女性の形が姿を現した!



『……私は女神イース 人の子よ我が神託を傾聴せよ……』



 しかし女神さまは「傾聴せよ」と言いつつも不満げに頬を膨らませながら次第にその姿を薄くさせて、やがて消えてしまった。



 女神さまが顕現なされた!


 だけど顕現した女神さまは神託を語る前に消えてしてしまった。

 女神さまが消えてしまったと不安げに騒めく謁見の間の人々。そこに頭の中がキンキンするような高音の声が響き渡る!



「ウイリアム様! 神託の聖女カメリアが女神さまからの神託を受け取りました! 神託の内容は、

『そこの悪女アリアンナ様はラピスラズリ王国に害をなす邪悪な存在、速やかに国外追放にしなさい』

とのことでした!」



 カメリア様は胸を張り、得意げに王子に神託内容を告げる。


……って、あなた本当に神託を得たのですか? 神託を得たふりをして勝手に内容を捏造してるんじゃなくて?




読んでいただきありがとうございます。

「アリアンナが可哀想」「聖女カメリアは悪者」などと思われましたら【評価】と【ブクマ】をどうぞよろしくお願いします。大変に励みになります。

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