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閑話 インズ国の国王と王子

ノース国との敗戦から半年以上が経過している。

旧アルタの反乱はオズベルトが鎮圧し、なんとか餓死者を減らすことができたが、旧ウドスも水害が連続していて、難民が増えている。


インズ、そしてインズノースで受け入れているが、食料不測になるのは時間の問題だ。


そして最近父上の様子がおかしい。 母上は相変わらず礼拝堂だ。

「オスカー殿下、国王様がお出かけに」というヤンの声だ。

「こんな真夜中に。 行くぞ」といって僕はヤンとロイを連れて、父上の跡を追った。


父上は王宮から離れた鉄格子の扉をあけ洞窟にはいっていった。

「お前達、ここがどこか知っているか?」と小声で聞いた。

「いえ、ただ立入禁止とだけ。」と答えるヤン。

顔を見合わせて、僕たちはその洞窟内部に侵入した。 そこには、下に続く階段がありかなり深い。 深部につくと父上が灯りを灯して、見えるのは、異形の姿の像。 それは羊の角が両頭部から生えており、目の形はギロリととし、口には長い牙が生えている。 耳はとんがっていて、巨大なコウモリ型の羽をたくわえ、屈強な身体つきに両手両足からは長い爪を蓄え、しゃがむ姿で鎮座している。 真黒なそれは像とはわかるが今にも動きだしそうだ。 ただその像は年季が入って風化しているのか所々にひびがはいっている。


「答えよ、大悪魔アークデーモンよ、われとの取り引きは成立したはず。 なぜ、我が国は今、衰退してるのだ。」と国王が叫ぶ。


『あの日邪魔が入ってあの者の魂を奪えなかった。 だが、五感、声帯、痛覚、皮膚感覚と憎い神の加護を奪う事でおまえとの取り引きを成立させた。』とその声は禍々しく低い。


「では、どうすればこの国を救えるのだ」

『あの者を殺せ』

「やはり生きているのか!!」

『ああ、だがわれの配下も既に5人殺されており奪った者を取り返された。 簡単ではないがな。 ククク』

「なら、われに力を」

『人間よ、悪魔との取り引きは1回だけだ。 既にお前との取り引きは成立した。』

「くそ、このまま滅びるのか」と項垂れる国王。

『ククク、そこに3人いるぞ』


国王が振り向くと、そこには息子のオスカーとオスカーの近衛兵のヤンとロイがいた。

「お前達、なぜここにいる!」

「父上、あなたは悪魔と取り引きをしていたのですか! なぜです?」


そう追及され、真実を話すしかない国王だ。

「16年前、長い間続く小国やウェスト国との戦い、そして天候不良や相次ぐ災害でインズ国はもはや滅ぶしかなかったのだ。 神に願い続けても状況は変わらずだ。 神に救いを求めるのが馬鹿馬鹿しくなったわしは、ここに来て悪魔と取り引きをした。 この国の繁栄と豊潤を引き換えにわしから奪えるすべてを奪えと。 そして、16年前に産まれた赤子は、産声を上げずで5感覚を失っていた。 しかも黒髪で、瞳の色は金色だ。 わしは産婆に命令して、魔鏡へはいる川に捨てさせた。 生きているはずがないのに。」

「父上、その者に心辺りがあります。」

「なんだと! どこにいる!」

「はい、現在イースト王国に。 ヤン、ロイ、名前は覚えているか?」

「オスカー殿下、ユリアン王妃様が聞いており、確かノアール・ギブソンという名前です」

「父上、このオスカーがその者を殺します。 では、いくぞヤン、ロイ」

『ククク、力が欲しい場合はお前ら3人ならいつでもこい。』

「悪魔との取り引きはしない」といって僕はヤンとロイと洞窟をでた。


閑話 インズ国のオスカー

父上が悪魔と取り引きをしていた事に驚き失望したが、繁栄のためだ。 あの父上が、最後の手段として取引したのだろう。


だけど、僕は、母上が毎日礼拝堂にいき祈りを捧げ、あのサウス帝国での発言は全てあのノアールという男、いや兄のためと思うと嫉妬で憎い。


「オスカー殿下、大丈夫ですか?」というヤン。

「ああ、大丈夫だ。 ヤン、それにロイ、この事は母上には内緒だ。 兄、いやノアールが生きていると知れば会いに行かれるだろう。 しかし、この国の犠牲になってもらう必要がある。 いずれにせよ、死んでもらわないといけないのだからな。 僕に幻滅するか?」

「いえ、この国のためです。 オスカー殿下のご判断は間違っておりません。 ロイ共々我ら双子はオスカー殿下と共に歩みます。」というヤンとロイはひざまづいて敬礼した。


「ありがとう。 僕が最も信頼しているのは君達双子だ。 ヤン、君は暗部と諜報と共にイースト王国へ向かってノアールの戦力分析と情報を集めてくれ。 もし、殺せるなら殺してくれ。」


「御意」

「ヤン、但しお前だけは生きて戻ってこい」


こうして、オスカーは、ヤン含む暗部と諜報部隊約20名をイースト王国に送るのだった。

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