バルジェラ公爵令嬢
Side:エリッサ
負傷者を置いて、さらに奥へ進んだ私たち一行の前に、さっきよりも強い魔物たちの襲撃ですの。 しかも、優秀な私の魔法剣がきかないなんてありえない。 私兵達も、半分はやられている。 使えないわ。
「はぁはぁ、もうどうなってるのよ!」って叫んだわ。
冒険者が「悪霊だ! 撤退しろ」って言って私たちを置いて一目散に逃げた。
公爵令嬢の私を置き去りなんて、死罪よ、死罪。
「悪霊って何よ。 待ちなさい!」って叫んだけど冒険者の姿はない。
すると目の前に黒くて巨大な異形の姿。 アンデットの巨大なトカゲ、いや竜。
うそ、恐怖で声がでない。
「お嬢様、お逃げください!」って言われてるけど、恐怖で足がすくんで動けない。
私の前で護衛しながら戦っている私兵2人は、魔物に薙ぎ払われた。
アンデットの竜が爪を振り下ろす、もうダメだわって思ったら2人の私兵が私の上に覆いかぶさった。
「お、お嬢様、は、はやく」
何、血が服についてる。 私に血をつけるなんて、後退りして兵士をみたら下半身がなく血の海。
「きゃー、誰かたすけなさいよ!」って後退りすると木に背中がぶつかった。 もう逃げ場がないわ。
その時だった、入口で置いてきた欠陥品の少年が両手に剣、形状は違うけど、漆黒の剣をもち、アンデットの竜の攻撃をいなしながら、まだ残る魔物を次々と殺していく。 黒い炎を剣に纏わせて。
「何してるのよ、はやく私をたすけなさい」って叫んでも少年は無反応だ。
アンデットの竜の攻撃をいなし、反撃しつつ、物凄い速度で瀕死の兵士を殺している。
この子はいったい何をやってるの。 私の目の前の兵士2人も殺して、私のほうへ近づいてくる。
目線があってないけど、その金色の瞳に吸い込まれそう。
「た、助けてよ」って必死で声を紡いだ。
私の声は届いてないのか少年は口元を吊り上げて剣を振り上げてきた。 殺された。 なんで。
≪ノアールを貶したからだ。 いただきます≫
エリッサの肉体、魂はサタンによって葬られたのだった。