誕生
新作の物語
ここノーダル大陸は、大陸中央に狂暴な魔物の巣窟『魔境』と呼ばれる広大な森が広がっている。
『魔境』を迂回するように、魔境の東にイースト王国、南側にサウス帝国、北側にノース国、そして西側にはウエスト国という4つの大国が存在する。 そして、ウエスト国とサウス国の間には小国ではあるがインズ国、アルタ国、ウドス国がある。
現在、小国であるインズ国は、度重なる天候不良による農作物の不作、そして隣接国との戦争により国民は餓死、疫病、そして兵士は戦死と国は疲弊し、衰退の一途をたどっている。
国王は、その状況に嘆き、神に祈りを捧げ続け、国政の改善を務めていたが、状況は悪化するばかりである。 他国に併合されるしか道は残っておらず、それだけは絶対に避けたい国王はとうとうある禁忌に手を染めてたのだった。
◇◇◇
そして雷雲轟き激しい雨が降るなか、インズ国の王宮では、正妃が赤子の出産をしていた。
「もう少しですよ。」という産婆の声に、息を荒くしながらも力む王妃だ。
「頭がでてますわ。 もう一息です」という声に最後のちからを振り絞り赤子が生まれたのだった。
その時、激しい落雷が部屋を襲うのだった。
「きゃー」という悲鳴で、国王ほか護衛騎士が部屋にはいり、「何事か!」と部屋にはいると、愛おしいそうに産着にくるまっている我が子を抱く王妃の姿があった。
「生まれたのか?」
「はい、男の子です。」
「そうか世継ぎが生まれたのかでかした。」と王妃に近づく国王は我が子の姿を見て驚く。
「黒髪だと! しかもどういうことだ?」
「陛下、落雷とともに何がおきたかわかりません。 ただ、五感全ての感覚がございません。」
「そうか。 うはは、わしの願いは叶った。 産婆よ、この不吉な子を捨てよ。」
「あなた、何をいうのですか。 いくら黒髪が不吉とは言え私たちの子です。 永く生きれなくてもせめて手元に。」
動かない身体でも、王妃はなんとか赤子を手元におこうと必死だが、周りにいる侍女に止められてしまっている。
「ならん。 お前は身体を休めろ。 次の世継ぎを生んでもらわないとな」といって部屋を護衛と共にでていく国王だった。
その日、産婆は、国王の命令通り、産声もあげず生まれた子を小舟に乗せて『魔境』へ続く川に流したのだった。
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