第九話
「マジックシールド!」
まず初めにユーヤはマジックシールドを発動した。
その時、熊はユーヤに突撃を開始していた。
「ファイアショット!」
熊の行動にかまわずにユーヤは顔に向けて魔法を放った。
ファイアショットは火を弾丸のように放つ魔法だ。
「グワァッ!」
ユーヤが放ったファイアショットは熊の顔にあたり、熊は怯んだ。
その瞬間をシラタマは見逃さず、熊に絡みつきに行った。
だが、力の差のせいなのか捕らえることが出来なかった。
「エアスラッシュ!」
シラタマが頑張っている間に魔法を放った。ユーヤが放ったエアスラッシュは熊の腕に当たったが、厚い筋肉のせいなのか熊に出来た傷は小さかった。
「くっ、やっぱり熊は強いな。どうしよう...」
ユーヤは取り合えず色々な魔法を放つことにした。
「アクアショット!」
アクアショットはファイアショットの水バージョンだ。
熊の顔に当たったが顔を濡らしただけだった。
「アースウォール!」
熊の足元に小さな壁を作りだしたが、壊されただけだった。
「ライトボール!」
ライトボールは光の玉を飛ばす魔法だ。明かりとすることもある。
熊の顔に当てたがダメージは無かった。しかし、明かりとしても使えるため、嫌がっていた。
「ダークボール!」
ダークボールはライトボールの対となる物だ。非現実的だが、辺りを暗くすることが出来る。
こちらも顔に当たったが、ダメージは無さそうだった。
「いや、どうしよう...」
取り合えず、一番効果があったライトボールを放ちながら考えた。
「あ、そうだ」
ユーヤは一つ作戦を思いついた。
まず、初めにライトボールを自分の後ろに浮かばせた。
次に、エアスラッシュを発動し、先ほどエアスラッシュを当てた場所を狙い放った。
それは幸運にも今回は当てれたようだ。
それを確認すると熊に向かって走り出した。
それに熊は気づいてこちらに向いたが、ライトボールの光が目に入り、顔をそらしてしまった。
「今!」
その隙を突いてエアスラッシュを当てた場所へ剣を突き刺した。
「さらに!エアスラッシュ!」
更にその剣を突き刺した場所へ追撃としてエアスラッシュを放った。
その行動は熊に大ダメージを与えた。だが、殺しきれなかった。
「グワアア!」
ユーヤに腕を振り下ろそうとした熊だったが、ダメージを受けたせいかシラタマに力負けし絡みつかれ、動けなくなった。
「とどめ!エアスラッシュ!」
この魔法がとどめとなり、熊は死んだ。
「ふぅ、今回は強敵だったな。助かったよ、シラタマ」
シラタマは嬉しそうに体を震えさせた。
そのタイミングで突然、創造の書が光りだした。
「何!?」
その光はすぐに収まったのでゴーグルに通した。
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創造の書:アーティファクト
『説明』
魔と創造の女神レイナーナの力を秘めた魔導書。
与えられたものが許可を出さなければ使用することができない。
『使用方法』
魔力を一定以上流す。
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鑑定結果は変わらなかった。
「ん?鑑定には出ないけど中身の方かな」
ユーヤは創造の書を一ページずつ開いていった。そして、変化があったのは
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創造の書の使用方法
・作成
必要な素材を集め、魔法陣の上に乗せる。この時、自身の魔力を代用することが出来る。
次に魔法陣に魔力を流しながら完成した状態を詳細に想像するとできる。
この時、あいまいな部分があった場合、無理やり作ったかのようになる。
・機能拡張
魔物の魔石と魔力を使い、創造の書の機能を増やすことができる。
・性能向上
魔物の持つ魔素を纏った素材を使い、機能拡張で増えた機能の性能を向上させることができる。
・貯蔵庫
魔力や魔石、素材を限界無く貯蔵することが出来る。
また、魔物の素材を魔力に変えることもできる。
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「便利!」
新たな機能はユーヤの言葉通り、とても便利なものだった。
何故なら、今までは幸運にも魔物の死体はすぐに使っていたが、これから使うことがない死体が溜まる可能性があったがそれが無くなったからだ。
さらに、いらない死体を魔力に変えることが出来るからだ。
「それにしても、なんで突然機能が増えたんだろう?何か条件みたいなのがあるのかな?」
そう呟きながらその原因について考えたが、一切心当たりが出ることは無かった。
「うーん?創造の書の使用回数とかなのかな。取り合えず使用回数ということにしておこうかな、これ以上考えても意味がないし」
とにかく、熊を新たに増えたこの機能の貯蔵庫に入れ、町に向かって歩き出した。
「暗くなってきたな」
今はすでに太陽が沈み始めている。なので、辺りが暗くなってくる時間帯だ。
「どこか休めるところは無いかな?」
今日体を休めるところを探すがもう辺りが暗くなってきているので見えにくい。
なので、ライトボールを使った。
「おお、意外と便利だな。やっぱり明かりは大切だ」
一つなのでライトボールを四つ追加した。
「おっと、流石に五つはコントロールが難しいな。でも、結構これはこれで練習になるし頑張るか」
そうして少し歩き回ると小さな洞穴があった。
「ん、あそこなら安全かな」
そうして見つけた洞穴に近づき、中を覗き込んだ。
中は五メートルくらい奥行きがあった。十分に寝ることが出来そうである。
「うん、いいところだな」
そして、洞穴に入ろうとしたとき、いきなり魔法が飛んできた。
それは火の矢でシラタマに直撃し、シラタマは吹っ飛んでいった。
「シラタマ!?」
反射的にシラタマの方向を向いたが、すぐに魔法が飛んできた方向を見た。
そして、現れたのは変な模様を首に入れた男が二人出てきたのだった。
「いや~白銀種がいるなんて運がいいな。スライムの白銀種は雑魚なのに経験値が大量にもらえるからな」
「それはいいが任務に支障が出ないようにしろよ。明日中に風精霊の木まで行かないといけないんだから」
「分かってるて、スライムなんて雑魚は俺ならすぐ終わるから安心しろって」
「はいはい。じゃ、さっさと殺ってこい」
「へいへい」
そう言いながら男はシラタマに近づいていった。まるでユーヤのことが見えていないかのように。
「シラタマは殺させない!」
「あ?誰だてめぇ。あ、まさか横取りすんのか?これは俺の経験値だぞ」
「違う!シラタマは僕の従魔だ!」
「ん?そうなのか、だったらお前も殺すか」
そういうと男は認識が出来るギリギリの速さで近づいて来た。
ユーヤと男は十メートルほど離れていたが、男がユーヤに近づくために要した時間は一秒にも満たなかっただろう。
「っ!!」
「へぇ、案外動けるんだな」
それは奇跡に近かった。
男は近づいて来た時と同時に剣を引き抜き、振り下ろしてきていたのだ。
その攻撃をユーヤは剣を引き抜いて受け止められたが、二度目は無いだろう。
「くっ!きっついな」
ユーヤは身体能力で負けており、厳しい戦いをすることとなった。