第七話
ユーヤはまず目の前にいる女性に問いかけた。
「何者ですか?」
「私は、風の大精霊ファルナです。あなたは?」
相手の女性の自己紹介の内容が気にはなったが、自分が自己紹介をしないと失礼だと思い、心を切り替えて話し出した。
「僕はユーヤと言います。この子はシラタマです」
簡単な自己紹介をした後、質問を問いかけた。
「すみませんが、大精霊とはどういった存在ですか」
「知らないんですか?結構有名だと思うんですけど...。まあ、いいです。大精霊とは、自我を持つ精霊のことを指します」
「なら、精霊は自我を持ってないんですね」
「はい。精霊は私たち大精霊の配下のようなものです。あとは、人に契約し、付いていく精霊もいますね」
「へぇ、契約ってどういうやり方なんですか?」
ユーヤは気になったことを聞いてみた。
「興味あるんですか?」
「はい!」
ユーヤの元気な返答にファルナさんは微笑みながら説明を始めた。
「そうですか。まず、精霊には相手の感情をある程度分かる能力があります」
その能力を聞いてとても驚いた。それと同時に疑問に思ったことを聞いた。
「それは...制限ってないんですか?例えば相手の同意がないとわからないとか...」
「いえ、ないですね。あぁ、一応相手には違和感がありますよ」
「そうなんですか」
その返答を聞いて少し安心したユーヤである。
「この能力を使い、契約をするか決めていますね」
「そうなんですね、でしたら精霊と契約している人は安全というか...まぁ、そういう感じなんですか」
「はい、精霊というのは自然とともに生きている者です。ですから、危険な考えをしている方はいないと思いますよ」
「おお、そうなのですか」
「それで、契約のやり方なのですが、精霊には契約スキルがありそのスキルを介して条約を定めています。その時、条約を決めるのに主導権は精霊にあります」
「あくまで精霊が上ということなんですね」
「ええ、精霊というのは自然そのものといっても良いものです。ですから、精霊の力を使えば自然を破壊することは簡単なのです」
その発言にユーヤはおびえた。それは、目の前にいる精霊より強い大精霊はいつでも自分を殺すことが出来るのだ。
「と言っても、自然を破壊するほどの力を使えばそれなりに代償がありますよ」
「そうなんですね。どういう代償なんですか?」
「すみませんがそれは言うことが出来ません」
「やっぱりそうなんですね」
ユーヤはその返事に納得し、肝心の契約方法を聞いた。
「それで、契約の方法は?」
「まず、媒体となる宝石を用意します」
「宝石ですか?」
「はい、この宝石は契約した後、精霊を呼び出すときに使います」
「精霊は常に一緒にいるということではないんですね」
「はい、精霊はその宝石が座標になり、魔源体となって移動します」
「魔源体?魔力体ではないんですね」
「魔力というのは生物の体内に入った魔源が変化したものです。なので、魔力と魔源は違う物なんですよ」
「へえ、そうなんですね。あ、すみません。話の腰を折ってしまって」
「大丈夫ですよ。話を戻しますが宝石を契約する者同士で持ち、精霊がスキルを発動すれば契約完了となります」
「結構簡単なんですね」
「実はそう簡単ではないんですよ」
「え?そうなんですか?」
ユーヤは不思議そうに言った。この話を聞くとすぐに出来そうな工程しかなかったからだ。
「はい、話の途中に出てきた宝石が問題なのです」
「何か条件があるんですか?」
「そうなんですよ。精霊ごとに気に入った宝石でしか契約ができなんですよ。ですが、その者に付いていきたい精霊は何の宝石でも大丈夫なんです」
「その条件って結構大変そうですね」
ファルナさbbと話していたユーヤだが、ふと空を見ると太陽が丁度頂点に来ていた。
「すみません、丁度お昼なのでご飯食べてもいいですか?」
「結構時間が経ってますね。大丈夫ですよ」
許可をもらったので島の中心にある木の傍に行き腰を下ろした。
そしてシラタマを膝の上に乗せ、バックパックから弁当を取り出した。
「あら、それは?」
「これは弁当ですよ」
「いえ、私が言っているのはその容器のことです」
「これですか?」
ユーヤは弁当の蓋を持ってファルナさんに見せた。
「はい。見たことのない素材でしたので。これでも素材に関しては結構知っているんですよ」
「へえ、そんなんですね。これはプラスチックだと思いますよ」
「ぷらすちっく?」
その反応でユーヤは気づいた。
(もしかして化学製品だからかな?小説の設定ではよく科学分野の発展がないことが多いけど...)
「すみません、ファルナさんは化学製品ってわかりますか?」
この質問に顔を下に向けて考えていたファルナさんだったが少しするとユーヤの方に向いた。
「確か昔いた勇者や英雄が話していたと思いますよ」
「勇者はわかりますけど英雄とは?」
「簡単に説明すれば大きな偉業を残している者が呼ばれる国から与えられる称号みたいなものです」
「そうなんですね」
ユーヤはその言葉が疑問に思ったが先に化学製品のことについて説明した。
「化学製品とは原料を化学反応によって加工した物のことを指します」
「かがくはんのう、とは?」
「簡単に説明すれば鉄に起きる錆です。あれは鉄が酸化したことによって出来ていたはずです。あまり詳しいことは分かりませんが...」
「そのようなことが起こるのですね。教えていただきありがとうございます」
「いえ、簡単なことなので。話を戻しますがこの蓋はそのような技術で作られたものだと思いますよ。製造過程を見たわけではないのでわかりませんが...」
「いえ、ですが良かったのですか?基本的に技術は門外不出の秘術などだと思うのですが...」
「大丈夫ですよ。一般常識ですし」
「え?っと、それは気を使ったための冗談ですか?」
「いえ?違いますよ」
「それはあまりにも...。もしかして、どこかの島ですか?」
「まぁ、島国ですね」
そう返答を返すとユーヤはその流れで自身の前世について話した。
日本のこと
学校の授業内容のこと
この世界に勇者として召喚されたこと
魔王軍第0隊隊長ゼルに殺されたこと
魔と創造の女神レイナーナ様に神命を与えられて生き返らせていただいたこと
この森にいたこと
色々なギフトを貰ったこと
そのギフトの中にシラタマがいたこと
ここを見つけたこと
そのすべてを。
ユーヤは誰かに話を聞いてもらいたかったのだろう。
当然だ、一度殺され、突然神の前に行き生き返らせてもらい森の中に独りだ。
そのあと、シラタマが生まれたといっても話せる相手ではなかった。
全ての話を終えたユーヤは少し安心していた。
「なるほど、そのようなことがあったのですね」
「はい、話を聞いていただきありがとうございました」
と、頭を下げながらお礼を言った。
何故なら、話始めたのは昼頃だったのだが今はもうすぐ日が暮れそうなのだ。
「大丈夫ですよ。私は忙しいわけではありませんから」
「それでも、ありがとうございました」
そう言い、再度お礼をした。
「すみませんが、ここで眠らしていただいて良いですか?」
「いいですよ」
「ありがとうございます」
その後ユーヤはサッと弁当を食べ終えると木の根元で寝始めた。
「そんな方でしたかしら...」
ファルナは一言そう呟いた。