第六話
「ふぅ、よし。ありがとう、シラタマ。落ち着けたよ」
ユーヤは自分の手で大きな生物を殺すという馴れないことをしたせいで精神的疲労があったがシラタマを撫でながら共計したおかげか回復してきていた。
シラタマはユーヤが疲労があることに気づいていたがおとなしく撫でられ続けていた。
「よし、それじゃあ解体を射ていこうか」
現在、周囲には緑色の鹿1頭、狼5頭の死体がある。
「まず、全部近くに寄せるかな。シラタマって鹿持ち上げられる?」
シラタマは出来るよ!とでも言うように鹿を触手で持ち上げた。
「力持ちだね。それじゃあ頼んでもいいかな?」
シラタマは肯定するように体を上下に振った。
「よろしくね」
ユーヤはシラタマに頼み事をし狼を持ち上げて一か所に集めた。
「よし、それじゃあやっていくか。えっと、まず皮を剥いでいくか。いや、先に血抜きだっけ?何だったかな...。いや、素人が解体できるわけないけど...。どうしよう」
ユーヤはとても悩んだ。今解体しようにも絶対にガタガタになっちゃうし、と。そして諦めた。一人で出来るほど知識があるわけがない、と。
だから、あるものを作ろうと決意した。
「よし、まずは調べるか」
そう、ポツリと呟くと創造の書に魔力を流した。
「えっと、前見た次のページにあるかな?ん、これかな」
開いたページにはおそらく現在自分が作れる物の一覧がジャンルごとに載っていた。
「あるかな?......あった、これだ」
それは、拡張の袋いう物だ。これは名前の通り鞄の中が広くなっている袋だ。
これで、何をするかは大体の人が分かるだろう。そう、狼や鹿の死体を入れておくのだ。
だが、普通の拡張の袋では中の物は腐るだけだ。
ユーヤはそこも解決しようとしている。
そのカギになるのは同系統である停止の袋という物だ。
これも名前の通り広さは普通だが入れている物の時間を停止させるものだ。
この二つの袋の性質をもった袋を作ろうとしているのだ。
「よし、やるか。素材は...あれ、そのまま使えないかな?」
ユーヤがあれと言っているのは緑色の鹿のことだ。
「試すしてみようかな。えっと、初めのページの魔法陣の所を開いて...地面に置いておかないとな。そこに緑色の鹿を乗せてっと。これで...どうやるんだ?」
ユーヤが知っているやり方は魔法陣に乗せることまでしか知らないからだ。
「前の所に書いてないかな?...あ、書いてある」
ユーヤは説明が載っているページを開いた。
「えっと、まず魔力を込めた指で作りたい物をなぞる。その後、魔法陣に素材を置き魔力を流せばいいのか。よし、やってみるか」
創造の書の作成物一覧のページを開いた。
「まずは拡張の袋を作るか」
ユーヤは右手の人差し指に魔力を集め、拡張の袋の文字をなぞった。
「オッケイ、次は魔力を流せばっと」
創造の書に書いてある魔法陣に手を置き魔力を流した。すると、緑色の鹿が光始め球体になった。その球体はすぐに形を変えていき、光が収まりそこにあったのは皮で出来た袋だった。
「やった!完成だ!よし、続けて停止の袋を作ろうかな。狼も素材に出来るかな?」
ユーヤは同じ作業を停止の袋で行った。だが...魔力を流す過程で少し違和感を感じた。
「ん?何か抵抗がある?なんでだろう...。さっきは行けたんだけどな。相違点って何だろう...。あ、狼か。なるほど、やっぱり魔物の格というべきものによって作れる物が変わるのかな。それだったら数で補えるかな?」
ユーヤは頑張って狼を二体乗せて魔法陣に乗せて魔力を流した。
「まだ足りないの?結構必要なんだなぁ。一体で作れるって緑色の鹿は格が高かったのか」
結局、狼は五体必要だった。
「よし、完成した!あとはこの二つを合わせたいんだけど...どうするか」
まず、二つを魔法陣の上に乗せて魔力を複合させるイメージで流してみた。だが...
「うーん、魔力は流れているけれど出来そうな感じではないかなぁ。言葉でこの感覚を表すと反発しているという表現があってるかな?これは諦めた方がいいか」
ユーヤはシラタマを抱えて立ち上がった。
「うん、出来ないことはサッパリ忘れて目的のために動き出すか」
自分の周りを見渡した。ここには小川があり小さい魚が泳いでいる。その魚は虹色の体をしていた。
「おー!これぞ異世界っていう感じがするなぁ。それに綺麗だ。あっ」
虹色の体を持った魚は岩陰に入っていった。
「おっと、そろそろ歩き始めないと危ないかな。よし!行くか」
気合を入れなおし下流の方に歩いて行った。
――――――――――
「ん?あれは池かな?」
体感時間で約一時間を経過したころ、直径一キロぐらいの水たまりがあった。
「いや、これは湖かな?幻想的だな」
湖の中心辺りにはクリスマスツリーのような木が生えた島があり、その周りには色とりどりな光の玉としか表せないものが飛び回っていた。
「あれは...?魔力の塊かな?」
そうユーヤが眺めていると光の玉は近づいて来た。
「えっ、何!?」
驚いているユーヤの周りに光の玉は近づいて行き、ユーヤとシラタマを薄い膜のようなもので包み込んだ。
「これは...マジックシールド?いや違うな...っと!」
考えていたユーヤだったが突然体が浮くと湖の中心にある島に向かって飛んでいった。
ユーヤは絶叫アトラクションが得意ではなく、この移動法により少し泣きそうになっていた。
「~~~っ!!」
ユーヤは言葉にならない悲鳴を上げていた。
それから速度は緩むことはなく向かっていき、とうとう中心の島の恥に降ろされた。
「はぁ...はぁ...。す~はぁ~」
荒ぶる呼吸を抑えるため深呼吸をした。そのおかげか呼吸は整ってきた。そのころには周りにいた光の玉はどこかへ飛んで行っていた。
「ここは...」
呼吸が完全に整ったので周りを見渡した。
そこには先ほど見えた木が飛び込んできた。
「さっきの木かな?いや、それにして大きすぎるような...」
そう、先ほど見えた時は大体十メートルくらいに見えていた。だが、今見ると優に百メートルを超える木に見えるのだ。
「いや、高いな。頂点がぼやけるや。ん?あれは...」
頂点を見ていたユーヤだったが、視線を木の根元に向けると先ほどの光の玉が集まっていた。その隙間から人影が見えた。
「人がいるのかな?」
そこに近づいていくと先ほど見えた人影がよく見えるようになってきた。
「あれは人かな?何か違う気がする...」
木の根元は盛り上がっており上の方に来たからなのか向こうもこちらに気が付いたようだ。いや、もしかしたら初めからこちらに気づいていたのかもしれないが。
「あら、珍しいですね。人がここに来ることは。いえ、人ではないのですか。それでも、珍しいことには変わりありませんか」
「え?」
そう、ユーヤにとってとても気になることを目の前にいる女性は言った。