第五話
「まず、この場所の位置を知りたいな。今後行動するとき不便だしなぁ。この世界にはド定番の冒険者という職業があると聞いたし、冒険者になることを目標にしていくかな。
だったらまず森を抜けて町と町を繋ぐ街道に出ないといけないな。そこからどちらか一方に向かって歩いていけば町につくはず。
だから今後の行動は森を出て街道を探すことかな。あ、それとこの創造の書の使い方にも慣れていかないとだよね。神命を果たすには必要だからギフトとして贈られたんだと思うし。
まとめると、創造の書を使いながら街道を探して森を歩き回る。そして、町に入り冒険者登録を行う感じかな。よし頑張るか」
夕陽は荷物をまとめると立ち上がった。すると、スライムはいきなり大ジャンプを夕陽に向かって行った。
「うわっ!っと。いきなり頭の上に乗るのは危ないよ?」
そう、スライムは夕陽の頭の上に飛び乗ったのだ。
「結構軽いんだね」
大体一キロくらいかな、と考えていた。
「んー、やっぱり名前を付けた方がいいかな?」
突然そう思ったのはこれから旅をするときに名前がないと不便だと感じたからだ。スライムはその言葉に喜ぶかのように体を震えさせた。
「うーん、名前を考えるのって苦手なんだよね。どうしても変になっちゃうし。あ、それなら僕も考えといたほうがいいのかな?どっちなんだろう?この世界の名前と比べると夕陽っていう名前はちょっと場違いというか変な名前なんだと思うし。でもお父さんとお母さんからもらった名前だしなぁ。そういえば今の容姿ってどうなっているんだろう」
そう思い夕陽は水が流れているところへ向かった。
「うわぁ!ずごいなぁ。すごく幻想的だ。ん?っっっと、危なかった!」
夕陽はすぐに後ろに跳んだ。何故なら角の生えた鹿がいきなり突撃してきたからだ。大きさは2メートル近くあり色は緑色だ。
「魔物なのかな、とにかくどうするか」
そう夕陽は考えようとするが緑色の鹿はすでに反転しておりこちらに向かって突撃をしてきていた。
「えっ!スライム!?」
スライムは夕陽の頭から2歩先に飛び降りすぐに触手を伸ばした。
「触手!?」
触手を伸ばしたスライムに向かって緑色の鹿は突撃をした。だが、スライムにあたった瞬間勢いが無くなったかのように停止した。
夕陽は驚いていたがすぐに判断し風魔法のエアスラッシュを緑色の鹿の首に向かって放った。
「もう一回!」
一度目のエアスラッシュは耐えた緑色の鹿だったが、即座に夕陽がエアスラッシュを放ち息絶えた。
「ふぅー...。危なかった。あっ!スライム!大丈夫?突撃を受けていたけど体は大丈夫なの?ケガはないの?」
夕陽はいきなり飛び出したスライムに問いかけた。焦りで言葉がおかしくなっているがそれだけ大切に思っているからだろう。
スライムは大丈夫とでも言うように体を夕陽に擦り付けた。
「はぁ、驚いた。まぁ、助かったよ、ありがとう。でも、いきなり飛び出すと焦っちゃうから事前に言ってほしいけど...。難しいよね、どうしようかな?今後の課題だね」
夕陽は緑色の鹿は置いておいて気を取り直して小川の傍に近づいた。
「ふむ、髪は灰色かな。顔は見た感じ整っているけど...ちょっと人間味がないな。どちらかというと人形というか...。転生したからなのかな。とりあえず顔が醜いってわけじゃなくて良かった。やっぱりカッコいいほうが嬉しいし」
夕陽はそう思い頷いた。
「さて、名前をどうするかな。夕陽でしょ...出来れば近い名前にしておかないと呼ばれた時すぐに反応できないし。えーと......もうユーヤでいいか。スライムは...ふむ、白...スライム...銀...丸...玉?うん、シラタマが良いんじゃないかな?」
ユーヤはそう問いかけた。それに対してスライムは喜ぶようにその場を飛び跳ねた。
その瞬間、シラタマは光始め、それと同時に体の中に何か温かいものが入ってくるような感覚があった。
「何!?どうしたの!?」
その数秒後には光が収まりだした。光が収まったのでシラタマを見てみると頭?あたりに魔法陣があった。
「え、何その魔法陣。大丈夫?」
ユーヤは魔法陣に手を当てた。
「ん?ああ、なるほど。これは従魔契約か」
従魔契約とは魔物などの生物に対して使う契約のことだ。これは相互の同意がないと契約できなく、特に神獣との契約はとても難しい。何故なら、神獣とは魂のランクというものが初めから高く、今回ユーヤが行ったような契約は余程の親密度がないと成功しない物だった。
という話を、前世の時に聞いていたユーヤは嬉しくなってシラタマを抱きかかえた。
「ありがとう!それだけ信頼してくれていたんだ!嬉しいよ、これからよろしく」
シラタマは返事を返すかのように体を擦り付けた。それと同時にユーヤにはシラタマの感情が少し伝わってきた。
「これは...従魔契約のおかげかな。シラタマも嬉しいなら良かった。それじゃあ、改めてこれからよろしく!」
そうユーヤとシラタマが和気あいあいとしていると緑色の鹿の血の匂いにおびき寄せられてのか、5匹の灰色の狼が茂みから飛び出してきた。
「おっと、戦うよ!シラタマ!」
灰色の狼たちが飛び出してきたのにすぐに気づいてユーヤはすぐに立ち上がり、灰色の狼たちに対峙した。
「シラタマ、さっきみたいに狼を抑えられる?」
そう問いかけたところ、帰ってきた感情には肯定の感情が込められている。
「それじゃあ、よろしく!」
(相手は狼。普通に考えると連携が得意ですばしっこいはず。だったら各個撃破を目指そうかな。だったら...)
ユーヤは狼が警戒して唸っている間にシラタマに質問した。
「シラタマ!さっきの様に捕まえれる?」
シラタマは出来るよ!と、言うようにその場で跳んだ。
「それじゃあ、よろしくね!」
ユーヤはシラタマの強さを信じて前衛を任せた。
「まず機動力を奪う!エアスラッシュ!」
ユーヤが放ったエアスラッシュは一番前にいた狼の右前足に当たり、切り落とすことに成功した。
4匹の狼は止まることなくユーヤに噛みつこうと真っすぐに突っ込んできた。だが、成功することはなかった。
シラタマが触手を伸ばし増やしてとユーヤのもとに行けないように守ったからだ。シラタマの触手の力は強く頑丈だったこともあり、狼は前に進めなかった。
「いや、強すぎるよ...。エアスラッシュ」
ユーヤのエアスラッシュで2匹の狼の頭を落とした。
「もうこれは勝負はついたかな。...剣でとどめを刺すか...」
腰に吊るしていた剣を引き抜いた。
「ふぅ。やっぱり怖いな...。はっ!」
ユーヤは一思いに剣を狼の首筋に突き刺した。
さらに剣を引き抜き、続けてもう一匹の狼の首筋に突き刺した。
「あー、結構つらい。シラタマ、ちょっとこっちに来てくれない?」
シラタマが近づいて来たところをゆっくりと持ち上げて抱え込んだ。
「ごめんね、少しこのままでいて」
ユーヤは精神を安定させるためにシラタマを抱え込み、休憩した。