第三話
「さて、最後に創造の書かな」
夕陽はそうぼやきながらバックパックから創造の書を取り出した。
「さって、どういう能力があるのかなぁ?」
そう思いながらゴーグルを通して創造の書を見た。
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創造の書:アーティファクト
『説明』
魔と創造の女神レイナーナの力を秘めた魔導書。
与えられたものが許可を出さなければ使用することができない。
『使用方法』
魔力を一定以上流す。
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「なるほど。これは魔導書っていうやつなんだ。どこかで聞いたことがあるような...。魔導書ってことはこっちの世界に来てからのはず...。だったら...っ!!思い出した!確か杖などの魔法を放ちやすくするために使う道具の一種だったか。でも、そんな道具に創造の書っていう名前が付くかな?魔力を流したらわかるか。っていうか、初めから流しておけっていう話だな」
そう自分に突っ込みを入れながら創造の書に魔力を流した。そうすると創造の書の表紙にあった線が光り、そのあとすぐに収まった。
「わっ!ふう、びっくりしたぁ...。これで魔力が通っている状態なのかな?ひらけるかな?」
創造の書の表紙に手をかけて本を開いた。
「おっ、今度は開けるようになったな。何か書いてあるかな?」
一ページ目のは何を書いてなかった。二ページ目に書いてあったのは...
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『神命』
・「魔と創造の女神」と「戦と知の神」の息子に最高の武器を作る。
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という、与えられた神命が載っていた。
「なるほど、忘れるなっていうことかな?それよりもこの下の空欄が気になるな。本来はもっと多くの神命を与えられるから空いているのか、それとも今後追加されるから空いているのか...。これは今の時点で分かることはない。願わくば前者であることを願っておいた方がいいかな」
そう考察しながら次のページを開いた。
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創造の書の使用方法
・作成
必要な素材を集め、魔法陣の上に乗せる。この時、自身の魔力を代用することが出来る。
次に魔法陣に魔力を流しながら完成した状態を詳細に想像するとできる。
この時、あいまいな部分があった場合、無理やり作ったかのようになる。
・機能拡張
魔物の魔石と魔力を使い、創造の書の機能を増やすことができる。
・性能向上
魔物の持つ魔素を纏った素材を使い、機能拡張で増えた機能の性能を向上させることができる。
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「なるほど、創造の書の使い方か。えっと、作成は物を自在に作ることができるのか。これは僕が現代兵器の詳細を知っていたら作れるということか。まぁ、知らないんだけど。それについては良かったのかな?この世界に現代兵器を持ってくるのは危険な可能性があるし...。次の機能拡張はスマートフォンで言うところのバージョンアップかな?まぁ必要なものがあるから厳密には違うけど。最後の性能向上はさっきと同じようにスマートフォンで考えるとアプリケーションかな?ちょっと違うか。いや性能向上がバージョンアップだな。機能拡張の方がアプリケーションだったな」
夕陽はそう考察した。それから考えがまとまると、次のページを開いた。
次のページには大きく魔法陣が書いてあった。
「ん?...ああ、作成用の魔法陣か。これに物を置いて魔力を流しながら完成品を考え続けるとできるのか」
魔法陣の使い方を理解した夕陽は次のページを開いた。
「このページは機能拡張用か。えっと、この穴に必要な素材を入れればいいのかな?」
次のページの左側にはページぎりぎりまで広がったブラックホールのようなものがあった。
右側には「材料」と書いてあり、その下には何も書いてなかった。
「で、右側は今入っている素材か。ん?何か下に書いてあるな。えっと、注意、一度入れた素材は取り出せません、か。なるほど、基本はバックパックの方に入れておいた方がいいな。次のページは何かな?」
ページをめくるとそこにはMMORPGでよくあるスキルツリーのようなものがあった。
「機能拡張はツリー形式か、最初は...作業速度上昇Lv1か。結構良い機能なんだ。てっきりもっと役に立たない機能かと思ってたな。必要な魔石は5個で魔力は300か。これどこまで続いているんだろうな。それよりも次のページにいくか」
次のページには左上に性能向上とだけ書いてあり、そこ以外は何も書いてなかった。
「これはまだ何も機能向上するものが無いっていうことかな?それ以外に考えられるのは条件があるっていう感じか。出来れば前者であってほしいな」
パンッ、と夕陽は創造の本を閉じ、ゴーグルを外した。
「よし、これで全部見たかなって思ったけどまだあったな」
そう、まだギフトでもらったものの中に見ていない物がある。それは...???の有精卵という物。
「これが卵?予想より大きいな。バスケットボールくらいあるんじゃないかな」
夕陽は???の有精卵を取り出してみた。それは夕陽の言う通りとても普通に生活していたら見ないような大きさだったのだ。
「何の卵なんだろう?それにこの大きさの卵から出てくる生き物って大丈夫なんだろうか?ゴーグルを付けて見てみるか」
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神獣の卵:アーティファクト
『説明』
神獣王が与える卵。いずれ神獣が生まれる。
90%
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「え!?神獣王!?なんで?それに90%ってもうすぐ生まれるっていうこと?早すぎないかな!?」
夕陽は焦っていた。当然だろう。大抵の人は驚くべきことがいきなりたくさん起こったら冷静に対処できないだろう。夕陽は問題を先送りにした...。
「本来はダメなんだろうけどひとまず置いておこう。急がないと日が暮らそう!この近くに野営できそうなところはないかな?」
夕陽はそう思い周辺を歩きだした。
「え~と。野営する場合火を起こした方がいいよね、だったら乾燥した木の枝なんかも拾っておいた方がいいかも。たくさんあってもバックパックに入れることが出来るし」
夕陽は森の中に独りだけなことを今頃心細く感じ始めていた。
おそらく今まではギフトやバックパックなど考えないといけないことが続いていたからまだ平気だったんだろう。
それから夕陽は森の中を一人木の枝を集めながら歩いていると少し開けたところに出た。
「ここら辺なら大丈夫かな?」
そこは右側方向の近くに小川が流れており、奥には高く剥き出しになった岩肌が広がる崖があった。