第一話
キーンコーンカーンコーン
「はい。今日の授業はここまでです。」
ガラガラガラ
教師はそう言い教室を出て行った。
今は4限目が終わった所だ。
僕、鈴野 夕陽はできることは早めに終わらしゆっくりしたい人なのでサッと弁当を出した。さぁ食べようとしたら突然床が光り出した。
(へッ?何?)
それを思うのは僕だけではなかった。
「なっなんだ!?何がおきてる!?」
皆このような感じで焦っていた。床を見ると謎の光の線があった。
(ん?これって...魔方陣?)
夕陽は何時も異世界系の小説を読んでいた。その小説に出て来そうな魔方陣があり、その魔方陣は徐々に光が増している。
(これって異世界転移だよな!やった!異世界だ!)
そして教室は光で包まれた。
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「おお!成功したぞ!」
「やった!やりましたぞ!姫様!」
「はい!良かったです!」
光の止んだ後に聞こえてきたのはその様な声だった。
「どこだここは!?あなた達は!?」
「勇者様すみません、突然ですが聖王様に拝見するために付いてきてくれませんか?」
「えっ、あっ、はい!」
そう案内を申してきたのは、金色の長い髪の少女だった。
「それでは、付いてきて下さい」
僕たちクラスメイトの発言は許さない。と、言う様な勢いだった。
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「お主達が勇者か?」
「はい...多分...」
「そうか...おい、あれを持ってこい」
「はっ」
(多分スキルが分かる道具かな?ここで低ステータスだったら嫌だなぁ。まぁなるようになるか)
先ほど聖王様に頼まれていた人が何かを押して帰って来た。
「聖王様、お持ちいたしました」
「うむ、それでは勇者よ。このステータスプレートを使ってみてくれ」
うちのクラスは24人いる。その人数分ステータスプレートという物を持ってきていた。
(これは何で出来ているんだ?というかどうやって使うんだ?)
「すみません、どうやって使えば良いんですか?」
「そのプレートに〔ステータスオープン〕と唱えれば良い」
「有難うございます」
(じゃあさっそく)
〔ステータスオープン〕
魔力 430/430
攻 300
守 230
魔攻 250
魔守 230
速 250
―スキル―
勇者Lv1
鑑定Lv1
全属性魔法Lv1
成長2倍Lv-
(えっと、これは強いのか?)
気になったので前にいる人に聞いてみた。
「すみません、17才の普通の人のステータスの平均はいくつですか?」
「魔力が50、攻撃力が100、防御と魔攻撃が50、魔防御が30、速さが50です」
「有難うございます」
(へぇー、勇者は強いな)
「すみません、勇者の平均ステータスはどれくらいですか?」
「体力が300、魔力が200、攻撃力が250、防御が150、魔攻撃が200、魔防御が150、速さが100です」
(やった!平均以上だ!)
「それでは勇者よ。皆のステータスを教えてくれ」
「「はい!」」
「それでは勇者様。こちらへ」
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今はクラスメイトが順番にステータスプレートを見せていた。遠くから聞いていると全員自分よりステータスが低かった。そして徐々に進んでいき、とうとう自分の番になった。
「おぉ!鈴野さんは強いですね!」
「おぉ!頑張ってください!」
「は、はい...。有難うございます」
「全員見たな?それでは、夕食の準備が出来るまで部屋で待っておいてほしい」
その後はそれぞれメイドに連れられて部屋に案内された。
―――30分後―――
「それでは勇者様方。夕食の準備が出来ましたので付いてきて下さい」
「「はい!」」
――――――――――
「それでは勇者よ。この国の状況を説明しよう」
つまりはこうゆう事だった。
この世界には人族、魔族、エルフ、ドワーフ、獣人、亜人族がいる。
現在ある国は人族の国は6個。魔族が1個。獣人族は1個ある。エルフ、ドワーフ、亜人族は国を作らず最高で街単位で生活している。
主に人族と魔族が戦争をしている。現在は人族が押され気味で古代の魔法、勇者召喚を行ったという。その結果、自分達が召喚された。
それと亜人族と魔族の違いは、主に魔族は攻撃的で戦争をしている。亜人族は平和的、協調的だ。
見た目は、魔族の肌は黒く紫がかっている。亜人で一番有名なのは獣人だろう。獣人といっても先ほど述べた獣人とは違い、二足歩行する獣といった感じだ。
「なので勇者方には一週間この国の騎士団で訓練の後、ダンジョンで鍛えて欲しいのじゃ」
「分かりました。出来るだけのことをしたいと思います」
今ここで話しているのは生徒会長だ。
「すみません!」
突然、いかにも気の弱そうな男子がそう言った。
「どうしたのじゃ?」
「元の世界に帰れるのですか!?」
「いや、無理じゃ。じゃが、言い伝えでは元の世界に大きな未練がある者は呼ばれないといわれておる。皆心当たりはないかの?」
「そう...ですね...」
頷きながら答えた。
そう言ったクラスメイトの他にも頷いている者が多い。聖王が言うように元の世界への未練は少ないようだ。
(へぇ、このクラスって元の世界の未練はないんだ。まぁ小説とかではよく強制で転移させてたし優しいほうなのかな?)
「質問はもうよいな?......うむ、それでは一週間後にダンジョンで鍛えてくれ。それまでは我が国の騎士団から鍛えてもらえ。今日は部屋で待機しておれ」
「分かりました」
――――――――――
この世界に来てから4日目の夜。
夕陽は夕食を食べ終えて部屋に戻ってきていた。そして、部屋に置いてあるベットに座りため息をついた。
「ふぅ、結構大変だなぁ。まぁ、いきなり転移させられて学校でしか動いていない体に対して即訓練だからなぁ。当然疲労もたまるか」
夕陽たち勇者に与えられた部屋は一人部屋で広さは大体六畳だ。部屋の中にはベット、机と椅子、タンスが置いてある。小説などの様に大きな部屋はもらえない。
流石にこの世界ではそこまで余裕がないようだ。これにより魔族に攻め込まられているという話に現実味が出てくる。
「そろそろ寝ないと明日起きれないかな?」
「残念、あなたは明日起きられませんよ」
「え...」
声が聞こえた方を見ると蝙蝠の翼の生えたTHE貴族のような男性が立っていた。
「誰!?」
「私は魔王軍第0隊隊長ゼル・フィートと申します。冥途の土産にでもどうぞ」
「魔王軍第0隊?」
(おかしいな?説明では第1隊から第12隊がいると聞いたんだけど...)
夕陽達クラスメイトは昨日にこの国の状況と敵である魔王と魔王軍について話を聞いていた。その話ではトップに魔王がおり、その下に魔王軍第1隊から第12隊までがいるという説明を受けていた。第0隊というものは聞いていなかった。
「それでは、さようなら」
「っ!マジックシールド!」
(危なかった。いきなりナイフが飛んできたけど訓練の成果で防げた、良かったな)
「おや?防ぎましたか。流石、王を倒す素質を秘めているだけはありますね」
(クラスメイトは大丈夫かな?)
「ん?あぁ、他のエサ達のことを気にしてるんですか?」
「エサ?」
「そこまで強くなる素質を秘めている者はいませんし、召喚された者は経験値が多くもらえますからね。エサで十分でしょう」
「その言い方をやめろ!ファイアーアロー!!」
「効きませんよ。それでは今度こそさようなら」
夕陽が放ったファイアーアローは魔王軍第0隊隊長ゼルの前で消えて突然、胸の部分辺りが燃え盛るような痛みがあった。下を見ると自身の心臓の部分にあたる所からナイフが生えていた。いや、刺さっていた。
「グフォェ!!」
その直後、腹から何か上がってくるような感覚があり、口を押えた。
「ゴホっっ!!」
手を見てみると赤黒い血が手にベットリと付いていた。
そして夕陽は悟った。自分はここで死ぬのだと。同時に「あぁ、クラスメイトは大丈夫かな」と。夕陽はそこまでクラスメイトと仲良くなっかたが、それでもやっぱり気になった。
「まだ意識があるのですか。すごいものですね。やっぱり早めに殺しておいて良かった。さようなら、歴代最高の素質の勇者よ」
ゼルがそう言った声はもう夕陽には聞こえなかった。
そして...
夕陽は異世界召喚されて4日目でこの世を去った。