その13
ダニーの右腕の亀裂は広がり、火花が散る。フランクが力を込めるとダニーの右腕は握り潰され、ついに千切れた。右腕がもがれたダニーは地面に仰向けに臥す。
「お別れだ、下等生物!!」
フランクがダニーの胸部を踏みつけ、トドメを刺そうと足の力を入れ始めた。ダニーの口から血が吹き出す。フランクはダニーを見下すように笑った。
が、突然フランクの義体が震えだした。震えは次第に強まり、痙攣になっていく。義体の力が抜けていき、ダニーを踏みつけていた足も離れる。ついには両手で頭を抱えて膝を付いた。
「…な、何だこれは…!?目が見えない…?音も聞こえない…?」
フランクはうわ言のように呟きながら頭を打ち付ける。フランクの義体の前に無数のスクリーンが浮かび出した。スクリーンにはキングスカンパニーの総会会場に支社、ドローン製造工場、そして海兵隊の本営が映し出されている。
その中央にある一際大きなスクリーンにはフランク自身の顔が浮かび上がっていた。スクリーンの中のフランクは悶え苦しむような表情で時折破線やモザイクが入り交じる。
「な、バカな…苦しい…息ができ、ない…」
フランクが呻くと共にスクリーンが一つ、また一つと消えていく。更にナターシャと戦っていたパワードスーツたちも突如として動きを止め、ついに完全に沈黙した。その様子を見たスクリーンの中のフランクはダニーの千切れた右手に握られた注射器の存在に気付いた。
「き、き、貴様…これは…まさか…き、「キングブレイカー」……!!!??」
「…ご名答…、さっき義体の動きが止まった隙に「キングブレイカー」を仕込んだナノマシンを打ち込ませてもらったよ」
「何ぃぃいいい!!!?何故だ!?何故貴様が「キングブレイカー」をおおおお!!?」
フランクの義体は頭を打ち付け続けた末に全身から煙を吹き出しガックリと項垂れ、完全に沈黙した。スクリーンの中のフランクは目の前に広がる光景とダニーが「キングブレイカー」を所持していたことが信じられないと言わんばかりの表情をしている。
「隠し玉さ…俺の、いや「俺たち」の、な」
「そ、そんなバカな…この私が、この完璧たる私が…消滅する、だと?」
フランクの義体を取り巻くスクリーンたちは数をドンドン減らしていき、ついに中央のフランクの顔が浮かぶスクリーンのみとなった。スクリーンの中のフランクは破線やモザイクの数が増え、フリーズや声まで掠れるようになってきている。ダニーは右腕を押さえてスクリーンの中で苦しみ続けるフランクをじっと見据えた。
「何故だ…私は「王」なのだ…絶対的な「王」なのだ、ぞ…。永遠たる「王」、なのに…」
「いや、もう終わりだ…フランク。「王」はたった今、破壊された…」
ダニーは憐れむような表情でスクリーンの中のフランクに言い放った。それを受けたフランクはこの世の物とは思えないほどの形相を見せ、
「う、う、う、うぞだああああああ!!!!!」
凄まじい断末魔の叫びと共にフランクの顔が浮かぶスクリーンは完全に消滅した。ダニーは物言わぬオブジェと化したフランクの義体を一瞥すると、その場にしゃがみ込んだ。
「………勝っ、…た………」
ダニーが天を仰いで一人呟いた。




