その12
フランクがダニーを引きずり下ろすように自身の懐へと持っていく。フランクはダニーの背後からチョークスリーパーを決めに入る。
「さあ、このまま絞め落としてくれる!!!」
フランクがダニーの首を絞める力を強める。ダニーはもがきながらもキングスカンパニーの本社ビルの壁面に突っ込んだ。二人は壁面の崩れる破片にぶつかりながら、上へ下へと移動を続ける。
「ジタバタするな!大人しくするんだ!」
「喧しい!!!いい加減に放せ!」
ダニーとフランクは縺れる形で庭園跡に落下した。落下の衝撃でフランクはダニーを放し、全身強打の痛みに悶える。ダニーはフランクを背にする形でクッション代わりにしたお陰でダメージは最小限で済んだ。が、それでもフランク程ではないものの痛みは走る。ダニーはよろけながら無線でナターシャに連絡をした。
「ナターシャ!済まない、頼みがある!!」
「ダニー、そっちは大丈夫なのか!?」
「…何とか、な。それより一つお願いできないか?」
「何だ?!」
「俺が合図を出したらフランクの脳天にパワードスーツの頭部にあるレーザーを浴びせて欲しいんだ!」
「いいけど…一度限りしか使えないぞ?それでもいいのか?」
「一度限りで十分だ!」
ダニーの力強い返事を聞いてナターシャも腹を括った。了解と共に残りのパワードスーツたちを薙ぎ倒していく。ダニーは無線の周波数をナターシャからミス・ジェーンに切り替えた。
「ミス・ジェーン!此方はいつでもOKだ!」
「分かったわ、ダニー!そろそろタワービル全体の停電のカウントダウンを始めるわ。それでいい!?」
「頼む!!」
ダニーは右手に握り締めた切り札を構えてフランクを睨んだ。落下によるダメージこそ大きいもののフランクは何とか立ち上がってきた。全身砂埃を被っているが、傷そのものは修復が終わったようだ。
「ダニー、あと30秒で停電するわ!停電したら復旧までの一分が勝負よ!!!」
「承知した!」
ダニーの前にフランクの義体がゆっくりと現れた。フランクは痛みに顔を歪めつつ、ダニーに向けて拳を振り上げる。ダニーは覚悟を決めたようにその場から一歩も動かない。
「ようやく観念したか!死ねぃ!!」
とその時、フランクの義体の動きが僅かながら鈍る。ダニーがキングスカンパニーのビルの様子を見ると一斉に照明が落ちているのが分かった。
「今だ!!!ナターシャ!」
ダニーが叫ぶと同時にナターシャのパワードスーツからレーザーが放たれ、フランクの義体の脳天を貫いた。攻撃を受けたフランクの義体は微動だにせず、立ち尽くしている。
ダニーはこの機を逃すまいと右手に握り締めた切り札の注射器をフランクの脳天に開いた穴の奥に打ち込む。ダニーが注射器の中身を全て注入すると同時にフランクの義体が動き出し、ダニーの右腕を掴んだ。
「何の真似だ…?今の間は…?」
キングスカンパニーのビル全体の電源が復旧したらしい。フランクは自身の脳天に開いた穴の存在に気付いていないのか、ダニーを右腕ごと持ち上げた。ダニーの右腕を握り潰そうと力を込めてくる。ダニーが苦悶の表情を浮かべると右腕に亀裂が入った。




