その10
ダニーの問い掛けに対し、フランクは割れた額から滴る液体の付いた掌を見てワナワナと震える。義体の傷は塞がったが、掌の液体だけは消えることなく残り続けた。フランクの表情はより一層険しくなる。
「今のあんたは有機生命体でもなければ、完全な機械でもない。何もかも中途半端な只の出来損ないにすぎない。俺のことを下等生物とかいっているが、今のあんたはその下等生物にすら劣っているんだよ!」
「ぬうううう…黙れ黙れ黙れ!!貴様ごときに何が分かる!」
フランクは額を押さえて呻き続ける。傷は消えたものの痛みは尚も残っているらしい。
「あんたの行為はこの世界、いやこの世に存在するありとあらゆる生命や機械に対する冒涜だ!今のあんたの存在自体、この世にあってはならないんだ!!!」
「煩い!!その減らず口を塞いでくれる!!」
ダニーが畳み掛けるようにフランクを揺さぶった。フランクはようやく立ち上がるとダニーに向けて渾身のパンチを振りかぶる。が、間一髪ダニーはフランクの攻撃をかわし、カウンターで蹴りをフランクの脇腹に見舞った。痛みを感じたフランクが後方へと仰け反る。
「どうしたよ…フランク。さっきの余裕がないぞ…」
ダニーはフランクを見下すように捲し立てた。フランクはカウンターを受けたことにショックだったのか呆然としている。ダニーはゆっくりとフランクに近づいた。
「ふう…ダニー…言わせておけばいい気になりおってえええええ!!」
我に返ったフランクは無人のパワードスーツたちを起動した。パワードスーツたちはダニーに向けてバルカン砲の発射態勢に入る。フランクはニヤリと笑った。
「さっきの手段は通用せんぞ!バルカン砲さえ撃っておけば同士討ちしたとしても今の私には痛くも痒くもないのだからな!」
「なるほど、多少は考えたな」
ダニーはバルカン砲を向けるパワードスーツに突っ込むと一体のパワードスーツの頭部にパルスキャノンを見舞った。ダニーは頭部が破壊されたパワードスーツに飛び乗ると、それを盾に他のパワードスーツたちからのバルカン砲を防ぎつつ、慎重にパルスキャノンで攻撃を加える。ダニーの戦いを見てフランクが苦々しい表情を浮かべる。
「何故だ?貴様のパワードスーツの素体はキングスカンパニー製の旧式のはずだ。何故最新鋭のパワードスーツたちが圧倒されるのだ!?」
「フランク…世の中っていうのは日々進歩しているんだよ。俺もアップデートされたのさ!それにアーノルドの操縦しているパワードスーツに比べたら遠隔操作のコイツらなんぞ屁でもない!」
ダニーは一体、また一体とパワードスーツたちを破壊していく。フランクは目の前に透明のスクリーンを呼び寄せ、他の製造工場からパワードスーツの増援を呼んだ。フランクはダニーを睨み付けて叫ぶ。
「ダニー!今度こそ貴様の命運は此処までだ!!パワードスーツたちの増援を呼んだ!耐えられるのも今の内だけだ!」
フランクが上空を見上げると遥か彼方から一体のパワードスーツが此方にやってくるのが分かった。一体のみ先行で来るのに違和感はあるが、フランクはほくそ笑む。ダニーもパワードスーツの増援に気付いた。
「一体のみ…しかし、何とか押さえなくては…」
ダニーが顔を歪めてパルスキャノンを構えると増援に来たパワードスーツの両肩からミサイルポッドが開いた。ミサイルが一斉にキングスカンパニーの日本庭園に向けて発射された。フランク、ダニーともに驚愕する。
「バカな!?そんな指示は出していない!」
「まずい!避けねば!!」
ダニーはパワードスーツたちから離れるとジェットパックで一旦庭園の上空へ逃げた。ミサイルは庭園にいるパワードスーツたち、そしてフランクに直撃する。庭園は爆音と豪炎に包まれ、フランクが育てていたであろう木々や美しい花は無残に燃えていった。
さながら焼け野原となった庭園にパワードスーツが降り立ち、ダニーもパワードスーツの近くに着陸した。ダニーがフランクの方を見るとフランクの義体はミサイル攻撃であちこちが黒焦げ、左腕と両足が取れ掛かっている。自己再生こそ始まっているものの苦悶の表情を浮かべており、まるで脂汗をかいているようにも見える。
「何故だ…ミサイル攻撃なぞ…どうして…行った?同士討ちは避けるように命令したはずなのに…」
フランクが問うように増援のパワードスーツを睨むと、聞き覚えのある声たちがパワードスーツの中から聞こえてくる。
「サイクロップス君!無事かね!?」
「ダニー!大丈夫か!?」
パワードスーツの操縦席が開くと一匹の黒猫と黒髪のポニーテールの女戦士が座っていた。
「Mr.ウルヴァリン!!ナターシャ!!!」
満身創痍のダニーが思わず叫んだ。




