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キングブレイカー  作者: 43番
最終章 ファイナル・バトル
80/97

その1

 ロサンゼルスの中心部にそびえ立つキングスカンパニーの本社ビル周辺は厳戒態勢が敷かれ、物々しい雰囲気に包まれていた。高級車や専用小型ヘリ、プライベートジェットが本社に集結する姿は壮観である。


 ダニーとミス・ジェーンの乗った海兵隊のヘリは、キングスカンパニー本社ビルのヘリポートに到着した。周りには大株主や幹部らが乗っていると思われるヘリコプターが多数飛んでいる。海兵隊のヘリはダニーらを降ろすとゆっくりと離陸し、ロサンゼルスのビル群の彼方へと消えていった。



「緊張しているの?」


「ああ…どうもこういう改まった場は初めてで…吐き気までしてきた」



 ミス・ジェーンがダニーの様子を見て心配そうに声を掛ける。ダニーは緊張の余り顔色が悪く、若干足が震えているように見える。ミス・ジェーンは優しくダニーの背中を擦った。



「心配いらないわ。今からのことは私に任せて。ダニーはボディーガードのことだけに集中してもらえばいいから」


「…うっ、確かにそうだな。そう考えるとするよ…」



 ダニーは深呼吸して無理矢理落ち着かせようとする。多少気が紛れたのかダニーはミス・ジェーンと共に株主総会の会場入り口へと足を運んだ。ミス・ジェーンが会場に入ろうとすると係員らしきスーツの男たちに進路を阻まれた。



「大変失礼ながらご婦人、招待状はお持ちでしょうか?」


「こちらかしら?」



 ミス・ジェーンがペニーから送られた招待状を係員の男に見せる。男たちは招待状をマジマジと見ると共にミス・ジェーンの顔にも注目していた。ついでに後ろに控えるパッツンパッツンのタキシードを着たダニーにも首を捻りながら目を向ける。



「…ようこそおいでくださいました。どうぞお通りください」



 そういうと係員の男はミス・ジェーンとダニーを会場に通した。それと同時に別の係員らしき男一人が全速力で裏の方へと去っていくのが見えた。



「…どうやら向こうも勘づいたようね」


「あんたが此処に来たことがか?」


「行方不明だった先代の一人娘が突然現れたんだもの。向こうも相当焦っているはずよ」


「…随分楽しそうだな、ミス・ジェーン」



 ミス・ジェーンは意地悪そうな笑みを浮かべた。ダニーはやれやれと言いたげに頭を掻いた。セキュリティチェックと顔認証登録を経て、ダニーらはキングスカンパニーの中枢ともいうべき、大会議場へと到着した。


 大会議場は数百人規模の参加者たちを余裕で収容できるスペースがあり、一番奥の前方に演壇が備えられていた。演壇の背面には巨大なスクリーンとスピーカーが完備されており、後ろの人間にも登壇者の演説が伝わりやすいように配慮されている。



「随分と此処も様変わりしたのね…」



 会場を見回してミス・ジェーンがしみじみと呟いた。ダニーは不思議そうにミス・ジェーンを見る。



「先代が健在の頃はこんな立派なタワービルなんて無かったのよ。それこそ小さな雑居ビルの一角って感じだったわ。でも当時の社員たちとはアットホームな付き合いがあって小さいながらも満たされた会社だったと思う」


「こんなに巨大になったのは最近なのか?」


「…そうね。それこそフランクを会社に招いた辺りからだと思う。フランクは確かにやり手でキングスカンパニーを父亡き後、瞬く間に世界一の大企業へと成長させたわ。…でもそれと同時に父のキングスカンパニーが守ってきた善きものは全て棄てられた…今のキングスカンパニーは…まるで国すら制御できない巨大な怪物のよう…」



 ミス・ジェーンが自分の両腕を握り締め、震えている。一刻も早くこの場を離れたい、という心情が読み取れた。ダニーはミス・ジェーンの背中を擦って落ち着かせようとする。



「…ありがとう、ダニー。大丈夫よ」


「ミス・ジェーン…もう少しだ」



 ダニーとミス・ジェーンはお互いに顔を見合わせて頷いた。そのとき、前方から恰幅のいい老人と白髪混じりの長身の紳士がダニーたちの元にやってきた。二人はミス・ジェーンの顔を見て驚愕している。



「…お、お嬢様…」


「信じられない…またお目にかかれるなんて…」


 二人の来訪者がミス・ジェーンに語り掛ける。 ミス・ジェーンは二人の顔を確認するとニッコリと微笑んだ。

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