その7
ミス・ジェーンと海兵隊の話し合いにより、情報部と連携の上、「キングブレイカー」の解析を進める運びとなった。それに伴ってダニーらは海兵隊の情報部がある本営へと移動した。
ダニーにとっては海兵隊を追われて以降、久しぶりに隊に招かれたのだが、以前のような懐かしい気持ちには戻れていなかった。
やはり誤解や陰謀に巻き込まれたとはいえ、味方に攻撃されたトラウマや不信感は早々拭うことはできないからである。
以前の顔見知りが話し掛けてきてもダニーの態度は何処かよそよそしかった。そんなダニーの様子をナターシャは心配そうに見つめる。
「大丈夫か、ダニー?」
「あ、ああ…すまない。どうにも落ち着かなくてね…」
「昔いたんだろ?妙にソワソワしてるじゃないか」
「此処も大分雰囲気も変わったからな。それにMr.ウルヴァリンやミス・ジェーンといるときの方が何となく今の俺の性に合っているようなんだ」
「…ふーん」
そういうとナターシャは意地悪そうにダニーの胸を小突いた。ダニーはナターシャの拗ねた表情で何かを察する。
「心配しなくてもナターシャといるときも俺は落ち着くよ」
「なら、よろしい」
ダニーの返事に気を良くしたナターシャは満面の笑みを浮かべてミス・ジェーンらのいる作戦指令室の方へ歩いていった。ダニーはやれやれと頭を掻く。
「で、Mr.ウルヴァリンはさっきから何をニヤニヤ笑っているんだ?」
Mr.ウルヴァリンがダニーの足下からひょっこりと現れた。その顔はどこか穏やかだ。
「いいじゃないか。こういう時間も大事だよ」
「そうか?」
「嵐の前の静けさってやつだよ。我々はようやくキングスカンパニーに対して正面から戦える強力な味方を得られたんだ。しかも敵の方からわざわざ我々を本陣に招いてくれているんだよ。正に千載一遇のチャンスってやつじゃないかな」
ダニーはMr.ウルヴァリンの言葉を受けて遠くを見据えた。確かにMr.ウルヴァリンの言う通り千載一遇のチャンスなのだろうが、今のダニーには不安しかない。
「嵐か…でも「キングブレイカー」は未完成だぞ?株主総会まで約一週間しかないし、大丈夫なのか?」
「あとはストームとキャプテンアメリカの皆さんに委ねるしかないね」
「どう転ぶか分からんが、最悪でもキングスカンパニー、いやフランク・フリーマンの所業を株主や幹部の前で暴露する、か」
「ストームは「キングブレイカー」の解析と並行して証拠をまとめている。株主総会に向かうまでに完成させるようだ」
「よし、俺も準備をするか」
「準備?サイクロップス君が?」
Mr.ウルヴァリンがダニーの言葉に首を捻る。ダニーは笑って自身の義体を見せた。
「敵本陣に行ったときに何があるか分からないからな。いつでも戦える準備さ。敵の大将と直接会えるなら尚更向こうも構えるからね」
「ふー、穏やかに事が進んでくれるといいんだけど、ね」
Mr.ウルヴァリンは溜め息を付いてダニーを見上げた。すると、
「ダニー、ドラネコ!ミス・ジェーンが呼んでる。今度のキングスカンパニーの株主総会のことで詰めて置きたいことがあるそうだ」
ナターシャが二人を呼びに来た。ダニーとMr.ウルヴァリンは顔を見合わせて指令室へと向かった。
指令室に入るとミス・ジェーンと情報部の隊員がパソコンの画面を食い入るように見ていた。只ならぬ様子にダニーは言葉を掛けて良いものか悩む。その内にミス・ジェーンが気付いてダニーを呼んだ。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「ダニー、あの白猫が株主総会の招待状を送るっていってたわよね?」
「ああ、確かにそんな話をしてたな」
「そうなのよ…そしたらね」
ミス・ジェーンはダニーらにパソコンの画面を見せた。パソコンの画面にはテンプレート通りの株主総会への招待状と見たことのないコードの羅列が表示されていた。
「なんだ…これは?」
「訳のわからない文字が並んでいるだけだぞ?文字化けか何か?」
「いえ、違うわ。…これは私たちがずっと探し求めていた、「キングブレイカー」のコード…」
そこに居た一同全員がミス・ジェーンに視線を向けた。
「ミス・ジェーン…一体どういう…」
「あの白猫…ペニーがどうしてこのコードを送ったのか、意図は分からないけど、彼方も「キングブレイカー」の完成を待っているみたいね…」
コードを眺めるミス・ジェーンの顔付きが鋭くなった。




