その4
「どうしたんだい?二人して素っ頓狂な声なんか上げたりして」
Mr.ウルヴァリンが暢気な声でダニーらの部屋に入ってきた。ダニーは思わず侵入してきた白猫を指差した。白猫に気づいたMr.ウルヴァリンは興味があるのか白猫の元へと歩み寄っていく。
「やあ、こんにちは」
「あら、ごきげんよう」
Mr.ウルヴァリンと白猫は仲良さそうに挨拶を交わす。ダニーとナターシャは顔を見合わせて、Mr.ウルヴァリンを呼んだ。
「知り合いなのか?Mr.ウルヴァリン」
「いいや、初対面だよ」
ダニーとナターシャはズッコケそうになる。ややこしい態度を取るな、とMr.ウルヴァリンを注意するが、我関せず白猫に話し掛けていた。
「これは驚いた。私と同じタイプの義体をお持ちとはね。初めてだよ」
「こちらこそ。貴方のことは風の噂で伺っているわ、Mr.ウルヴァリン」
「噂…?それに私を存じ上げている?…ひょっとして君はキングスカンパニーの回し者なのか?」
「まあ、そんなとこね」
白猫の発言を聞いた瞬間、ダニーがすかさず左腕のパルスキャノンを出して白猫へと向ける。しかし白猫は微動だにせずダニーらを見据えた。
「勘違いしないで。別にスパイしに来たわけじゃないわ」
「だとしても信じられるか!一体どうやって此処へ来た?」
「失礼ながら海兵隊の本営とそこのMr.ウルヴァリンの無線を傍受させてもらったの。お陰様で此処の座標が分かったわ」
「チッ、私設軍の増援を呼ぶ気だな!悪いが、今すぐ仕留めさせてもらう!」
ダニーがパルスキャノンを起動させようとしたとき、ドアが開いてミス・ジェーンが入ってきた。海兵隊との話し合いが終わったらしい。白猫とダニーたちの物々しい雰囲気を見たミス・ジェーンは思わず後退りする。
「一体どうしたの…この騒ぎは…?」
ミス・ジェーンはダニーらの視線の先にある白猫に目をやった。ミス・ジェーンと視線が合った白猫はニッコリと微笑むが、ミス・ジェーンは訝しげに白猫の様子を観察した。
白猫はミス・ジェーンの前にゆっくり歩を進めていく。慌ててダニーとナターシャがミス・ジェーンを守ろうと前に立ちはだかるが、白猫は構わずに近付いてくる。
「来るな!これ以上、近寄るなら撃つ!」
「待って、私はそこの彼女に用があるのよ」
「私に?」
「そう、やっと会えたわね。お姫様」
白猫にお姫様と呼ばれたミス・ジェーンを含むその場の全員が一様に首を傾げた。しかし白猫はさも親しげにミス・ジェーンに話し掛けてくる。
「しばらく会わない内に随分雰囲気が変わったわね。所謂出来る女、って感じかしら?」
「随分と馴れ馴れしいわね…。悪いけど、喋る白猫の知り合いはいないわ。私のことをお姫様というけど、人違いじゃないかしら?それに此処は夢の国じゃないわ」
ミス・ジェーンは悪い冗談と捉え、白猫を突き放した。しかし、白猫は尚も食い下がる。
「そうね、お姫様と呼んでもピンとは来ないわよね。ジャネット」
ジャネットと呼ばれたミス・ジェーンの顔が一気に強ばる。ダニーらはミス・ジェーンの只ならぬ様子に息を飲んだ。
「何故…貴女がその名を呼ぶの…?」
「あら、私のことを忘れたのかしら?こんな姿だから分からないでしょうけど、従姉妹だったでしょ?」
「ま、まさか…貴女………ペニー、なの?」
ミス・ジェーンの顔から血の気が引いていく。ペニーと呼ばれた白猫はニッコリと微笑み頷いた。ダニーはパルスキャノンを白猫に向けながら、ミス・ジェーンに聞いてみた。
「すまない、ミス・ジェーン。お知り合いなのか?」
「え、ええ。彼女は…私の従姉妹、ペニー・シーランよ。そしてキングスカンパニーのCEOのフランク・フリーマンの「亡き妻」…」
「「「な、何だと!!?」」」
ミス・ジェーンの言葉にダニー、ナターシャ、そしてMr.ウルヴァリンが思わず声を上げた。
「ご名答。お久しぶりね、ジャネット・シーラン・キング様」
白猫のペニーはミス・ジェーンの本名を呼んだ。




