その3
ミス・ジェーンと海兵隊の質疑応答で激震が走る中、ダニーとナターシャは別の部屋でリハビリとトレーニングしながら待機をしていた。
ダニーはミス・ジェーンに用意してもらった新しい義体の可動等を確認している。ナターシャは拠点の移動の際に持ってきた銃火器のメンテナンスをしていた。
「ナターシャ。ちょっと質問があるんだが、いいかな?これから君はどうするんだ?」
ダニーがナターシャを見てそれとなく聞いてみた。ナターシャがビックリしてダニーの方を見る。
「大した意味はないんだ。サザンカを討ったことでナターシャ自身の目的が果たされたなら、無理に俺たちと行動を共にする必要はないんじゃないか、と思ってね。これから相手にしなきゃいけないのは軍をも巻き込んだ強敵だ。これ以上俺たちといたら、それこそイバラの道を歩むことに成りかねない」
「……何だよ、あたしが足手まといとでもいうのか?」
「いや、そういうことじゃ…サザンカとの戦いで師匠の形見とか得物も無くなってしまった訳だし…」
ダニーが言葉を濁すとナターシャが銃を置いて立ち上がりダニーの胸を小突いた。
「あたしを誰だと思っている?「ブラッディ・レイン」と呼ばれた女だよ?今のあたしにとっては戦いこそが生き甲斐なのさ。あたしの心配をしてくれるなら結構。でも勘違いしてもらったら困るな」
「…ごめん、愚問だったな」
ダニーの謝罪にナターシャがフッと笑う。そしてダニーを優しく抱き締めた。
「あたしは最後までダニーたちと行動を共にするよ。此処まで来たんだ、勝手に除け者にはしないでよ」
「ああ、そうだな…俺が間違っていたよ。ありがとう、ナターシャ…」
ダニーとナターシャは思わず顔を見合わせた。何となくお互い照れ臭いが、次第に顔の距離が縮まっていく。ナターシャがゆっくり目を閉じかけたところで、ダニーはハッと辺りを見回した。
「どうしたんだ?」
「いや、大体こういう雰囲気のときは決まってMr.ウルヴァリンが出てくる気がしてね」
「…確かに。あのドラネコ、いないよな…」
二人してキョロキョロと部屋中を見渡す。Mr.ウルヴァリンの姿が見えないことを確認してお互いにホッとすると、ダニーとナターシャは口付けを交わした。が、
ガサッ
突如聞こえた部屋の隅の物音に二人は急いで離れる。唇が軽く触れた程度だったが、二人の顔は真っ赤になっていた。ナターシャは音の先にあった荷物を眼光鋭く睨み付けている。
「こ、こ、このドラネコ野郎……今度という今度こそ三枚下ろしにしてやる…!」
キスを見られたことへの怒りと恥ずかしさからナターシャは物音のした荷物を勢いよく取っ払った。だが、そこにいたのは……
「やい!ドラネコ……?」
「どうした?ナターシャ」
ナターシャの動きが止まったことを不思議に思ったダニーが近づく。ダニーとナターシャの視線は荷物の影に隠れていたある動物に向けられた。
「これ、は…し、白猫?」
荷物の影にいたのは確かに白猫だった。白猫は欠伸をして頭を掻いている。ナターシャとダニーは思わず顔を見合わせた。
「あのドラネコの知り合いか?」
「いや、今までもMr.ウルヴァリンやミス・ジェーンと一緒に居たが、こんな奴見るのは初めてだ…何処から紛れ込んだんだ?」
ダニーらの頭に特大のクエスチョンマークが浮かぶ中、突然白猫がダニーらに顔を向けた。
「突然失礼、お二人さん。お姫様は此方にいらっしゃるかしら?」
目の前の白猫がいきなり妙齢の女性の声を発したことにダニーもナターシャも思わず驚きの声を上げた。




