その18
「ミス・ジェーン!」
「ストーム!」
ダニーとMr.ウルヴァリンがホバークラフトから手を振るミス・ジェーンに応える。ホバークラフトはダニーたちの前まで来るとゆっくりと止まった。操縦席から出たミス・ジェーンは縄梯子を下ろして地上へ降りてきた。
「大丈夫なの!?二人とも」
「ああ、私はエネルギー切れ間近だけど、体の方は大丈夫だよ」
「みたいね、Mr.ウルヴァリン。でも……」
ミス・ジェーンはダニーのボロボロの様子を見て驚愕したようだ。ダニーは微笑しながら問題ないことを伝える。しかしながら右腕と左足を失っており、背中の弾痕と両目の出血は他者から見たら非常に痛々しい。
ミス・ジェーンはすぐにホバークラフトに乗るようにダニーに促す。が、ダニーは首を即座に横に振った。
「ミス・ジェーン…待ってくれ。俺よりも先に此処にいる少佐を乗せて欲しいんだ…。彼は俺以上に重傷だ。早く治療しないと……」
ミス・ジェーンがダニーの隣に横たわっているルーズベルト少佐を見て青ざめた。息こそしているものの予断を許さない状況だからである。しかしミス・ジェーンも合流したばかりなので今一状況が掴めていない。
「これは……どういうことなの?」
「頼む…ミス・ジェーン、彼を助けられるのはあんたしかいないんだ……!」
「でもダニー…、一体どうして…?」
「理由は後でゆっくり説明するよ…でも今は時間がないんだ……この通りだ!」
ダニーがミス・ジェーンに必死に頭を下げた。ミス・ジェーンはダニーの一連の行為に驚きつつも、了承した。
「わかったわ、ダニー。彼を先に助ければいいのね?」
「…すまない、恩に着る」
「できる限りのことはやるわ。Mr.ウルヴァリン、彼を操縦席まで連れていってくれないかしら?」
「ふむ、お安いご用だ」
ミス・ジェーンは横に立っているMr.ウルヴァリンに少佐をホバークラフトに乗せるように指示した。Mr.ウルヴァリンはぎこちない動きながらも少佐を持ち上げ、ホバークラフトの操縦席の入り口に横たわらせた。
「ホバークラフトの中にある程度の治療器具はあるから直ぐに傷の具合を診てみる」
ミス・ジェーンが縄梯子を器用に登っていく。ルーズベルト少佐は寝ながらホバークラフトの入り口からダニーを見下ろした。
「……この借りは、必ず返す、ぞ…ダニー・マードック……」
消え入りそうな声だったが、確かにダニーには聞こえていた。ダニーは上から見下ろしているルーズベルト少佐の顔に向けて左腕の拳を突き出した。
「借りを返すなら、いつでも待ってるぞ。アーノルド…」
ダニーの応答を受けた少佐は苦笑しながら、ミス・ジェーンによって丁寧に操縦席の中へと運ばれた。と、Mr.ウルヴァリンが何かを思い出したのか、操縦席の方に顔を覗かせた。
「おおい!ストーム、すまない。私のエネルギー補充用のボンベはあるかね?」
Mr.ウルヴァリンから問い掛けにミス・ジェーンがひょっこりと入り口から顔を出した。
「あー、ごめんなさい…貴方のご所望のボンベは後ろのプロペラの手前に積んであるわ。わかる?」
Mr.ウルヴァリンはミス・ジェーンからの返事にあった場所を探り、ボンベらしきものを見つけた。Mr.ウルヴァリンはボンベをメカコングの体の口に入れて飲み込むような仕草を取った。少しの間をおいて腕を挙げてみると先程よりはスムーズに動いているように見える。
「ありがとう、ストーム。これで拠点までは移動できるよ」
「どういたしまして」
そういうとミス・ジェーンはルーズベルト少佐の容態を診るために操縦席に戻った。と、入れ替わりに操縦席から一人の女性が外に向かって飛び出して地上へと降りてきた。黒髪のポニーテールにタンクトップ姿、片足には負傷したのか包帯を巻いている。
「ナターシャ…!」
ダニーが呟くとナターシャは顔をクシャクシャにしながらダニーに抱きついた。




