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キングブレイカー  作者: 43番
第四章 トライ・アングル
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その16

 ルーズベルト少佐はゆっくりと耳にイヤホンを入れて、首もとのマイクで海兵隊の情報部からのコールを受けた。少佐は深呼吸して息を整えてからマイクのスイッチを入れる。



「…こちらアーノルド・ルーズベルト少佐だ」


『サー、作戦の成果についてご報告があります!サー!』


「…よろしい、続けたまえ」



 時折苦しそうに腹部を押さえたが、平静を装って情報部との受け答えに応じる。ダニーは少佐の様子を黙って伺っていた。



『サー、目論見通り作戦は大成功です。少佐が陽動に動いてくれたお陰でスムーズに本隊は海兵隊本営を制圧することができました。上層部はまさか少佐がクーデターを起こすと夢に思わなかったのか、本営はかなり手薄でした。司令官以下、准将を含め背任罪として拘束を完了しております。現在指揮命令系統は反キングスカンパニー陣営の大佐が付いており、平常時に戻っている状態です。今のところクーデターを鎮圧の動きや抵抗する者はありません。少佐による事前の入念な根回しと上層部への反対勢力が動いてくれたことが功を奏したようです』


「…ご苦労…皆は無事か…?」


『サー、イエス、サー。誰も犠牲者を出すことなく、ごく短時間で作戦は完了しました』


「そう、か…良かった…」


『サー?!ご無事なのですか?』


「…大丈夫だ、心配ない…こちらも終わった…作戦は成功だ…」



 ルーズベルト少佐の声が明らかに弱々しくなった。体力的に限界が来たのか今にも気を失いそうである。その様子を見たダニーがルーズベルト少佐のマイクの近くまでよじ登ると、イヤホンとマイクをルーズベルト少佐から強引に奪った。



「き、貴様、何を…?」


「貸すんだ、アーノルド」



 ダニーは顎に付いた小さいボタンのようなものを左手で押した。そして無線のマイクとイヤホンを付ける。



「…すまない、無線が途切れた…」



 無線に話し掛けるダニーの声はルーズベルト少佐のものに変わっている。顎のボタンは変声機だった。ダニーの声にルーズベルト少佐は驚愕している。ダニーは左の掌を少佐の顔前に突き出して喋るのを止めさせた。



「報告ご苦労。こちらは目標のダニー・マードックに接触したが、キングスカンパニーの私設軍からも猛攻を受けることになり、図らずもダニーと共闘する形となった。その過程で幾つかの誤解が生じていることが判明したのだ」


『サー、誤解、ですか?』


「うむ、ダニー・マードックはテロリストでもなければ国家の反逆者でもない。最初からキングスカンパニーと上層部によって仕立て上げられたスケープゴートだったのだ。上層部を制圧した今、全ての元凶はキングスカンパニーにある。我々がこれから対峙しなくはならないのはキングスカンパニーであり、その所業を今こそ白日の元に晒さねばならない」


『サー、やはりご推察の通りだったのですね…』


「うむ。私はこの戦いを通してダニー・マードックとその仲間たちと和解した。彼等もまたキングスカンパニーによって人生を狂わされた者たちだからだ。これからはキングスカンパニーとの戦いとなる。これまで以上に強大な敵だ。是非とも諸君ら海兵隊の協力が必要となる」


『……サー』


「私は負傷したが、ダニーらに助けられたことで一命は取り留めた。諸君らに合流できるのは少々掛かるだろうが、その際にはダニー・マードックと仲間たちも共に迎え入れてはくれないか?彼等もまた味方として協力したいそうだ」


『…少佐がご無事であれば何よりもです。キングスカンパニーと上層部の癒着や現場の兵士たちの切り捨ては海兵隊、いえ他の軍からも不満が溜まっておりました。我々はただ少佐に付き従うのみです』


「…すまない、諸君。諸君らと共に戦えることを心より誇りに思う」


『サー、勿体ないお言葉、我々は一蓮托生です。サー』


「傷が癒えたら再度連絡をいれる。ダニーらの回収もよろしく頼む」


『サー、イエス、サー!』



 ダニーは徐に無線を切った。ルーズベルト少佐の方を見ると非常に苦々しい表情をしている。対してダニーはしてやったりの清々しい笑顔を見せた。



「貴様……一体どういう風の吹きまわしだ?」


「アーノルド…無線のクーデターのことを聞いて思ったんだ。あんたはクーデターの責任は自分が取るといって海兵隊の連中を動かしたんだろ?」


「…それが…どうした…?」


「クーデターが成功したからいいものの肝心の責任者であるあんたが今ここで死んだら、あんたに従った連中の処遇はどうなる?自分は言い出しっぺの癖に格好良く死んで責任逃れか?部下の切り捨てという意味じゃ上層部と大して変わらないぞ。それに死人に口無しじゃ余計に質が悪い」


「……」


「…だから、俺はあんたを死なせはしねえよ…絶対に責任を最後まで取らせるからな…何が何でも、生かしておく……」


「…それがお前の復讐か?ダニー……」


「違うな、貸しだよ」



 ダニーが無線のマイクとイヤホンをルーズベルト少佐に放り投げると、ニヤリと笑った。と、そこへ巨大な影がヌッと現れた。

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