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キングブレイカー  作者: 43番
第四章 トライ・アングル
59/97

その9

「雨か…」



 ダニーがバイザーに当たる水滴に気づいて呟いた。Mr.ウルヴァリンと共に戦車部隊と戦闘ヘリ部隊を相手に大立ち回りを演じる中でダニーは敵の残りを確認する。



「戦闘ヘリはあと一機、戦車は…」


「あと三台ほどだね」


「かなり減らしたな。もう少しで制圧できそうだ」



 ダニーが空を飛びながらMr.ウルヴァリンに状況を報告し合う。その間にもMr.ウルヴァリンは一台戦車を破壊した。



「また、一台減ったか……ん!!」



 ダニーは最後の戦闘ヘリのミサイルポッドが開くのに気づいた。ダニーは発射させまいと先にパルスキャノンを発射したが、一歩遅くミサイルはダニーに向けて放たれた。パルスキャノンの弾は戦闘ヘリのローターに当たり墜落させたが、ミサイルは構わずダニーへと向かってくる。



「避けろ!サイクロップス君!」


「分かってる!」



 ダニーはミサイルの軌道を読んで間一髪避けた。が、ミサイルは旋回して尚もダニーに向かってきた。ホーミングタイプのミサイルのようだ。



「チッ、しぶとい奴だ!」



 ダニーはジェットパックのスピードを速めるが、ミサイルとの距離がジリジリ縮まっていく。やむを得ずダニーは両足のふくらはぎを開き、銀色の粉のような金属片をばら蒔いた。金属片が周囲に散らばるとミサイルが急にダニーから軌道を逸れて地面に着弾した。



「電子機器の撹乱か。中々上手いものを用意してたね」


「ああ、……危ないとこだった……」



 ダニーの声は心なしか力なく聞こえた。Mr.ウルヴァリンが心配そうにダニーの元に近づいた。



「大丈夫かい?」


「……すまない、ミサイルはトラウマなんだ…」


「あー……私が回収したときのことだね」


「さすがにこれ以上狙われるのは勘弁だ…あのときのことがフラッシュバックしちまう…」


「気をしっかり、サイクロップス君。我々の勝利は目前だよ」



 Mr.ウルヴァリンがダニーを宥めようとした矢先、遥か向こうから激しいローター音と車両の走行音が聞こえてきた。よく目を凝らすとキングスカンパニーのロゴを付けた大量のオスプレイと砲兵たちを乗せた装甲車の軍団がこちらへ向かってきていた。Mr.ウルヴァリンはやれやれと言わんばかりに頭を掻いた。



「はあ…一難去ってまた一難だよ」


「全く。キングスカンパニーの私設軍だけで一国と戦争できるっていう噂は本当のようだな」



 キングスカンパニーの増援を見てダニーも呆れ気味にぼやいた。Mr.ウルヴァリンは残りの戦車たちを破壊すると再びダニーの元へ来た。



「サイクロップス君、残弾数とエネルギーの残量はどうだい?」


「弾はまだ余裕だが、雨で日が隠れたから太陽光エネルギーを取り入れられないのが痛いな。増援相手となると結構シビアな戦いを強いられそうだ」


「私の方もそろそろエネルギーの補充が必要だ。この体は結構消耗が激しいのでね」


「短期決戦…ってとこだな」



 ダニーとMr.ウルヴァリンが作戦会議をしていると、キングスカンパニーの増援と逆の方向からも何やら空を飛ぶ轟音が聞こえてきた。二人で目を凝らすと大型のパワードスーツが一体、そしてその周りを無数のドローンが囲んでいた。



「あれは…!まさかキングスカンパニーの別動隊か!?」


「いや、パワードスーツにキングスカンパニーのロゴは無さそうだよ。しかし……何だあの集団は…?」


「…!あ、あのドローンたちは……」



 ダニーの顔が明らかに引きつり出した。ダニーの脳裏に「ウロボロスの終末」掃討作戦のトラウマが蘇り出す。



「サイクロップス君?」


「Mr.ウルヴァリン…最高にまずい状況のようだ……」



 ダニーの額から脂汗が流れ出した。



 ………………………



 サザンカを仕留めたナターシャはまだ茫然と立ち尽くしていた。ナターシャの脳裏にサザンカの今際の言葉が反芻する。



「あたしも奴と同じ、戦うことでのみ生き甲斐を感じている、か…」



 ナターシャは自分の掌を見た。その手はサザンカや忍者たちの返り血で赤く染まっているが、降りだした雨で少しずつ洗い流されていた。



「あたしは……」



 ナターシャが項垂れていると、後方からプロペラの回る轟音と激しい風が近づいていた。ナターシャが我に返って振り返ると、巨大なゴムの膜が視界に入った。ナターシャは思わず腰を抜かしてしまう。



「な、今度は、何だ?!」



 ナターシャがゴムの膜を見上げると、コンテナのようなものが膜の上に載っていた。コンテナは操縦席のように見える。



「まさか、…これはホバークラフト……?」



 ナターシャが呆気に取られているとコンテナのような操縦席から一人の女性が出てきて縄梯子を下に垂らした。



「ミス・ジェーン!!」


「ナターシャ、大丈夫なの?!」


「あ、ああ。あたしは大丈夫だよ。…しかしこれは何だ?何処からこんなものを……」


「さっき言ってた隠し玉よ」



 ミス・ジェーンがニヤリと笑ってナターシャに縄梯子を登るように促した。ナターシャはゆっくりと縄梯子を登るとミス・ジェーンと共にホバークラフトへと乗り込んだ。



「さっ、しっかり掴まっててね。急いでMr.ウルヴァリンとダニーの所へ行くわよ」



 ミス・ジェーンが慣れた手つきでハンドルを動かし、ホバークラフトを発進させた。ナターシャはミス・ジェーンの隠し玉に驚きつつも、頬が緩んでいることに気づいた。



「……確かに、あたしは戦うことでのみ生き甲斐を感じているのかもしれない。でもサザンカ、あんたとあたしには決定的に違う所がある。あたしには頼れる「仲間」がいる!!!」


「ナターシャ、何かいった?」


「ううん、何でもないよ」



 ミス・ジェーンの問いかけにナターシャは笑って誤魔化した。

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