その18
「アーノルド・ルーズベルト少佐、上層部は正直君に対して失望している。以前君の報告した内容を基に我々が公表したシナリオとは大きく異なっている状況になっているそうじゃないか。大した成果も挙げられずにイタズラに時間だけが過ぎているのだからな」
「…お叱りについて大変恐れ入ります、准将」
「おまけにダニー・マードックと思われるサイボーグが先日キングスカンパニーの地下研究施設に侵入した上、ドローン製造ラインを爆破する破壊工作を行ったとの報告がキングスカンパニーより出ている」
「なんですと!?奴がキングスカンパニーに侵入を!??」
「また奴の他にも支援する仲間がいるらしい。恐らくではあるが、裏切り者は「ウロボロスの終末」のメンバーと行動を共にしていると我々上層部は見ている。奴を仕留め損ねた上に新たなテロを起こされてしまった君の責任は極めて重大だ」
「………」
「ハッキリいって相応の懲罰は免れない事案ではあるが、それでも君に名誉挽回のチャンスを上層部は与えようと考えている。尚これは司令官直々の命令だ」
「まさか司令官がこの私に?!」
ルーズベルト少佐は無線の前で背筋を正した。
「キングスカンパニー経由にてダニー・マードックらの潜伏先の座標を解析してもらっている状況だ。10日から数週間ほどで解析は完了する見込みだ。奴等の座標が分かったら直ちに掃討すること。そしてこの掃討作戦にはキングスカンパニーから最新鋭の装備が提供される予定だ。君の直属の部隊にその装備を使用してもらい、作戦を実行してほしい」
「キングスカンパニーからの装備提供ですと…?」
「「ウロボロスの終末」掃討作戦に使用されたパワードスーツをバージョンアップした「SWH-3570」と戦闘用ドローン「PST-7369」を大量に用意してもらえるそうだ。さすがにこの前のような失敗はまずなかろう」
「…今回は裏切り者は存在しない、でしょうな?」
「…それは君には関係ないことだ」
ルーズベルト少佐は思わず苦虫を噛み潰した表情をした。やはり上層部は現場の人間を切り捨てる気であることがハッキリと分かったからである。それでも何とか平静を装い、准将に承知の返事を送った。
「サー、イエス、サー…」
「続報が入り次第、連絡する。装備も数日中にはそちらに届くはずだ。座標が確定後に急ぎテロリスト追討の命令を出すように。以上」
ルーズベルト少佐は准将からの無線を切ると、机に置かれたコーヒーカップの中身を一気に飲み干した。その表情からはやり場のない怒りが溢れて出ている。少佐は続けて情報部の人間に無線の周波数を合わせた。
「こちら、ルーズベルト少佐だ。以前依頼した件の首尾はどうだ?」
「サー、キングスカンパニーにおけるセキュリティは強固である為、詳しい情報までは入手出来ませんでした。しかしやはり軍の上層部とキングスカンパニーとの間には癒着があり、かなり根深いようです。
三年前の「ウロボロスの終末」事件についてテロに利用されたAI、ドローン共にキングスカンパニー製のものだったようです。ハッキングによる暴走と公表されていますが、キングスカンパニーのセキュリティの観点からすると外部からの侵入は考えにくいと思われます。
もしキングスカンパニーにとって不都合な真実が隠されているとしたら癒着関係にある軍の上層部の対応が不自然なくらい迅速だったのも納得いきます」
「分かった。やはり全ては最初から仕組まれた茶番だった訳か」
「サー、いかがいたしましょうか?」
「予定通りダニー・マードックの掃討作戦を実施する」
「サー、よろしいのですか?」
「ただし!掃討作戦に参加するのは私だけだ。他の部隊は作戦開始と同時に上層部の集まっている本営を襲撃し、指揮命令系統を掌握するように命じる」
「サー!?ま、まさかクーデターを!!?」
「上が腐っている以上、一旦壊さねば何も変わるまい。このことは時が来るまでは内密にするように。あとすまないが、キングスカンパニーと上層部の癒着の件については他の部隊にも情報共有等の根回しを入念に行ってくれ。味方はなるべく多い方がいい。
貴様ら下の者たちにまで後腐れがないようクーデターについての責任は全て私が被る。そしてダニーの件は私自身が片を付ける」
「……サー、イエス、サー!」
ルーズベルト少佐は情報部との無線を切ると、自身のドッグタグを引き千切って、ゴミ箱に投げ捨てた。その表情は汚いもの見るような冷たいものだった。
「キングスカンパニーも上層部も何もかも下らん連中ばかりだ………何が「ウロボロスの終末」の仕業だ……私はこんな連中の保身の為にいつまでも甘んじるつもりはない…!!!」
ルーズベルト少佐は上層部やキングスカンパニーへの愚痴を溢してコーヒーカップを机に叩きつけた。
………第四章へ続く
これにて第三章完結です。




