その17
キングブレイカーが外部へ流出したことはキングスカンパニーの上層部(CEOのフランク、AIのペニー)と軍の上層部である司令官のごく一部が共有する情報となった。
ペニーが把握していた情報によりキングブレイカーは未完成であることは分かってはいたが、それでもキングスカンパニーひいては合衆国全体の脅威と為りうる存在である。このままキングスカンパニー、軍部共に野放しにし続けるつもりはなかった。
先の地下研究施設の侵入者を取り逃がした件とアレックス・ローのドローン製造ラインの爆破でフランクはかなりピリピリしていた。
ペニーが監視カメラを解析した情報よりアレックスが死ぬ直前に接触した人物が黒猫のアンドロイドであること、サザンカと交戦した女戦士、更に黒猫と女戦士を連れて逃走した謎のサイボーグ戦士の存在が判明した。
フランクらはキングスカンパニー側はサザンカを筆頭とした忍者部隊と私設軍の投入で逃亡者の捜索を行うことになった。ペニーを介してキングブレイカーの痕跡と逃亡者の座標を絞り込んではいるが、それでも数日~数週間程度は要することが分かった。
「ペニー……もう少し解析を早めることはできないか?」
(ごめんなさい、フランク。今のわたしの能力ではどう頑張ってもこれ以上は時間を縮められないわ)
「……くっ………アレックス・ロー…!!!死んでも尚この私に楯突くとは……!ペニー、忘れるんじゃないぞ!!お前が生き延びれたのもこの私のお陰なのだということをな!」
(………ごめんなさい、フランク。この姿になっても貴方の役に立てなくて……)
フランクは社長室のデスクでペニーのAIに八つ当たりをした。悔しさの余り拳を机に叩きつける。そこへ携帯電話が鳴り響いた。フランクは平静を装い、電話を受けた。
「御機嫌よう、司令官。フランクです。……成る程、かしこまりました。早急にご所望の装備を用意させていただきます。……はい、こちらもサザンカを投入しております。海兵隊側からもご支援いただけるとは大変心強い限りです。……はい、承知しました。解析までには今少し時間が必要ですが、必ず情報を共有させていただきます。……はい、こちらこそよろしくお願いします。失礼します」
フランクは司令官からの電話を切ると椅子の背もたれに寄りかかり、深い溜め息をついた。その表情は状況が進まないことへの苦々しさが浮かんでいる。
「サザンカか……」
部屋の片隅に気配を感じたのか、独り言のように呟いた。フランクの勘通り、部屋の隅にはサザンカ配下の忍者がいた。
「「主」ではなく、申し訳ございません。「主」より言伝で「ブラッディ・レイン」の痕跡を見つけたとのことです。ただ正式な座標まではもう少し掛かるそうです」
「分かった。引き続き進めてくれ」
「御意」
そういうと忍者は社長室から消えた。フランクはデスクの前にある姿見の前に出ると鏡に写る自身の容姿に向かって拳を打ち据えた。その横にはメタリックの光沢が際立つ筋骨隆々の大男の形をしたアンドロイドがオブジェのように置かれていた。
「どいつもこいつも使えない奴等ばかりだ……やはり計画は急がねばなるまい…」
フランクの眼光が鋭さを増した。
次回で第三章は完結です




