その11
「…で、どういうことか詳しく説明してもらおうかしら。Mr.ウルヴァリン」
ミス・ジェーンが机の上で丸まっているMr.ウルヴァリンに向けて問い詰めた。Mr.ウルヴァリンはというと意に返すことなく、上機嫌で「皆無事で良かった」と言わんばかりの笑みを浮かべている。
対して他の三人(ミス・ジェーン、ダニー、そしてナターシャ)には非常に気まずい空気が流れており、その温度差は歴然である。
キングスカンパニーの地下研究施設を脱出した三人(Mr.ウルヴァリン、ダニー、そしてナターシャ)は何とか潜伏先の拠点にたどり着くことができた。拠点にたどり着いたとき、Mr.ウルヴァリンは極めて上機嫌。ダニーは疲労プラス引きつった笑顔。そしてナターシャは極めて不服そうにダニーを睨み付けていた。その様子をミス・ジェーンは頬を引きつらせて出迎えた。
ある程度「ウロボロスの終末」事件の真相について進展したとはいえ、ナターシャの乱入で状況は余計複雑になってしまった為、全員の持っている情報を一旦整理することにした。
「とりあえず自己紹介から行かないとお互いに警戒が解けないわね」
「同感だな」
「同感ね」
「全くストームの言う通りだ」
「あなたは黙ってて、Mr.ウルヴァリン。まず、私はミス・ジェーン。訳あってそこのMr.ウルヴァリンと組んで「ウロボロスの終末」事件とキングスカンパニーの関係を追っているの。基本的にはバックアップ要員で主にサイバネティックスを専門にしているわ。道中Mr.ウルヴァリンがお世話になったわね。どうぞ、よろしく」
ミス・ジェーンがナターシャに向けて丁寧に説明した。ナターシャはサザンカに斬られた傷口を包帯で巻かれてベッドで安静している。ナターシャはまだ不服そうではあるが、一応「よろしく」とだけ返した。
「俺はダニー・マードック。海兵隊所属だったが、訳あってMr.ウルヴァリンとミス・ジェーンと行動を共にしている。ま、実際に仲間になったのはここ数日なんだけどな。ご存じの通り俺の体はサイボーグだ。まだリハビリ中だが、戦うことは出来るから安心してくれ」
「…あんた、只のアイアンマンもどきじゃなかったのか。てっきり趣味が高じてそんな姿かと思ってた」
「違うよ、サラ・コナー。彼はサイクロップス君だよ」
「どっちも違う!」
ダニーはすかさず二人に突っ込みを入れた。ミス・ジェーンがまあまあと三人を宥める。
「さっ、貴女の番よ」
「……あたしはナターシャ・ソウル。今はフリーランスで傭兵をしている」
「方向性は違うけど、俺と同じ軍人だったのか」
「そういやサラ、君は自分のことを「ブラッディ・レイン」と呼んでたな」
Mr.ウルヴァリンがチラッとナターシャを見て、問い掛けた。ナターシャは若干眉をひそめたが、コクりと頷いた。
「「ブラッディ・レイン」だと!?」
ダニーが思わず反応した。どうやら「ブラッディ・レイン」に心当たりがあるようだ。
「ナターシャ、あんた…、本当に「ブラッディ・レイン」なのか?都市伝説だと思っていたが、実在するとは……」
「?サイクロップス君、彼女を知っているのか?」
「噂だけな。その名の通り一度戦場に現れれば、敵味方問わず血の雨を降らせると恐れられた伝説の存在だ。まさかこんな所で会うなんて……しかもこんな…」
「こんな?何だ?あたしが「ブラッディ・レイン」じゃ不服なのか?」
「いや、その…こんな若い、キレイな女性だなんて夢にも思わなかったから…」
「プッ、何それ?新手のナンパ?あんた、それはダサいよ」
「いや、40、50代くらいのゴツいオッサンを想像していたから、余計に驚きだよ」
「はあ、変なイメージが一人歩きしたもんね」
ナターシャは呆れ気味に溜め息をついたものの満更でもない笑みを浮かべた。だが、すぐにその表情は曇りだした。
「ナターシャ、貴女の傷は思ったほど深くはないけど、完治までに少し時間が必要ね。まだ手足の自由が戻っていないでしょ?」
「……頼む、無理を承知で早めに治せないか?あたしにはどうしてもやらなくてはならない奴がいるんだ…!」
「あの忍者たちのことか?」
「正確には忍者たちのボスだ」
「あの地下通路でサラに傷を負わせたのは、そのボスとやらか?」
ナターシャはMr.ウルヴァリンをジロリと睨み付け、コクりと頷いた。
「あいつは……サザンカだけは…絶対にあたしがこの手で片を付けるんだ……」
ナターシャの目が鋭く光輝いた。




