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キングブレイカー  作者: 43番
第三章 彼女と彼女の仇と彼女の仇の影
41/97

その9

「おやおや、その様子を見る限りどうやら図星のようだね。やはり「キングブレイカー」は実在するということか」


「……」


 

 フランクは言葉に詰まったローを見下すような口調で挑発した。事態をいまいち飲み込めていない司令官や周りのスーツ姿の取り巻きたちは特大の疑問符を浮かべて二人の様子を伺っていた。

 周りの反応を無視してフランクは更にローを煽るように話続けた。



「さっきペニーが生きているといったが、正確には彼女の精神の方は、だ。肉体的にはとっくに死んでしまっているので一応墓を作らせてもらったがね」


「……一体どういうことだ?」


「君は気づいていないかもしれないが、ずっと君の様子をペニーは観察していたのだよ。百聞は一見に如かずだ。今から挨拶させよう」



 そういうとフランクはスーツ姿の取り巻きの一人に小型のタブレットを用意させた。フランクが慣れた手つきでタブレットを操作すると画面からホログラムが浮かび上がった。そのホログラムは球体のような形をしていたが、徐々に形状が変化していき小さな人のような姿になった。そして最終的には妙齢の女性の形で留まった。



「……………ペニー…………!」



 ローはガクッとタブレットを持ったフランクたちの前で膝を着いた。驚愕と衝撃がない交ぜになった形容しがたい表情を浮かべている。フランクはペニーと呼ばれたホログラムを向いて話しかけた。


「すまないな、ペニー。アレックスをどうしても君に会わせてやりたくてね」


(アレックス……。久しいわね。いつぶりかしら)


「ペニー………君は、君は確かに死んだはず、だ…これは幻だ、ただの紛い物だ……!」


(アレックス、残念だけど正真正銘の私よ。フランクの言う通り肉体的には死んだわ。でも研究の成果を無にしたくなかったから彼に頼んで死を偽装してAIとして生まれ変わったのよ)


「………そんな……こんな、こんな残酷な事実があるか……!?フランク!貴様の仕業か!!彼女を、ペニーを、生け贄として人体実験したのか!?」



 ローが拳を握り締めて全身をワナワナと震わせた。そしてフランクたちを鋭い視線で睨み付けている。



(アレックス…勘違いしないで。こうなったのは私の意思よ。あなたが私のことを愛してくれていたのはずっと知っていたわ。でも私はもう昔の私じゃないの。

 今の私はキングスカンパニーのCEOの妻であり、キングスカンパニーを支えるAIよ。それに私は誰よりもフランクを愛しているわ。そしてあなたが私の仇を討つために秘かに研究を進めていたことも知っていたわ。残念だけど私を通して会社には筒抜けになっていたのよ。あなたが行っていた背徳行為も全て、ね)



 AIとなった彼女ことペニーの告白を受けたローは頭を抱えて床に臥した。そしておおよそ受け入れ難い真実を前に慟哭した。フランクはその様子を見て貰い泣きしたかのように目尻を拭うパフォーマンスを見せた。司令官や取り巻きたちは一連のやり取りにどうリアクションしていいか分からず困惑している。



「ああ、何とも悲劇的な再会じゃないか、アレックス。でも安心してくれたまえ。彼女はやはり天才だ。彼女が自身を研究成果に充ててくれたお陰でわが社のAI事業は飛躍的に進化を遂げた。残念ながら肉体こそ捨ててしまったものの彼女の強固な意思は尚も我々共に居てくれるのだ」


「……どこまでも白々しい野郎だ!貴様さえ………貴様さえ居なければ!」



 ローはゆっくりと体を起こすと握り締めていた拳でフランクの顔面をおもいっきり殴り付けた。フランクの取り巻きたちは一瞬のことで対応できず、慌ててよろけるフランクを支えた。ロー自身もよろけながら何とか踏ん張って耐えた。

 フランクの鼻と口から血が滴り落ちている。格下と思っていたローに殴られたことが余程屈辱だったのか、先程までの余裕が嘘のようにフランクの感情はローへの憤怒と憎悪で支配されていた。



「き、き、き、貴様あああああ、誰に向かって手を上げたと思っているんだ!!!?ああ!!?この薄汚いくたばり損ないの下等生物の分際でええええ!!!」



 フランクの余りの剣幕に司令官は勿論、取り巻きたちも唖然としている。特に取り巻きたちは警護に失敗したこともあり、自分たちにも矛先が向くのではないかと冷や冷やしていた。対してローの方は一矢報いたこともあって冷静にヒートアップするフランクを見据えた。



(アレックス……あなたがしたことは決して許されないことよ。覚悟はできているの?)


「ペニー、もういいんだ…これが真実なら…俺はもう……思い残すことはない……俺は君のことを、ずっと……」



 そういうとローはズボンのポケットから小さなリモコンを取り出した。ローがリモコンのスイッチを押すと製造ラインの端から爆発音が響いた。爆発は小規模なものから徐々に周囲に拡大を始めた。この様子を見たフランクが血相を変えてローに詰め寄る。



「貴様!!まさかドローンたちに搭載した爆弾のスイッチを押したのか!!?」



 フランクの慌てた様子を見たローはニヤリと口角を上げた。

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