その13
忍者をねじ伏せたナターシャが向かった先は地下のドローン製造工場への搬入口だった。商品であるドローンを出荷するために地上へと続く細長い通路である。
その場所はヘリポートの近くでも、旧町役場の庁舎近くでもなく、市街地にある小さなスーパーマーケット跡地の一角にあるトラックヤードにあった。
「本当にここなんだろうな?」
ナターシャは縄で後ろ手に縛った忍者に向けて念を押すように確認した。対して忍者は渋々頷いている。ナターシャは顔を上げるとトラックヤード内に入り、搬入口らしき場所を探した。
「ここからキングスカンパニーの商品が出荷される。部外者がパッと見て気付くことはまずない」
拘束されて一緒にトラックヤードに引っ張り込まれた忍者はナターシャに向けてニヤリと笑ったが、ナターシャは無視して歩を進めた。
が、先程のヘリポートのような地下に通ずる出入り口らしきものは見えなかった。
「なんだ、何もないじゃない。もし嘘ついたなら、ここで叩き斬るよ!」
ナターシャは忍者に刀を抜いて切っ先を向ける。しかし忍者は臆することなく、むしろ不気味な笑みを浮かべた。忍者の態度にナターシャが首を傾げていると、突然三つの黒い影が頭上から現れた。
「チッ、罠か!!」
ナターシャは手にした刀を現れた三人の忍者の方へ向けた。忍者たちも刃を取り出し、ナターシャを威嚇している。その内の一人が拘束していた忍者の縄をほどいた。4対1で形勢逆転の様相である。
「やってくれたわね…あたしをこけにした罪は重いよ」
「何とでもいえ、お前に助けはこないぞ」
忍者4人が一斉にナターシャを囲んだ。ナターシャは深く溜め息をついて忍者たちに目をやった。
「随分となめられたものね。これであたしを出し抜いたつもり?」
そういうとナターシャは刀を逆手に構えた。次の瞬間、忍者たちが一斉にナターシャに斬りかかった。
ナターシャは冷静に忍者たちの動きを見極め、最初の忍者の一太刀目をかわすと、その動きを利用して真一文字に斬り捨てた。
更にその勢いで迫ってくる次の忍者の頭めがけて刀を振り、忍者の刀ごと頭部の半分を斬り飛ばした。
一瞬で自分の仲間二人も倒されたことに動揺した三人目の忍者の隙を見逃さず、ナターシャは間合いを詰めると装甲のない腹部に刀を突き刺し、そして一気に引き抜いた。血飛沫が豪快に広がる。
この光景に唖然としていたのは先程までナターシャが拘束していた忍者だった。自分は隙を突かれたから倒されたのであって数に勝れば、ナターシャなど楽勝と思っていたようだ。
しかしナターシャの強さは忍者の予想を大幅に上回っていた。忍者たちの血飛沫を浴びて悠然と立つナターシャの姿を見て忍者は思わずその場にへたりこんだ。
「あんたもやるかい?」
刀を向けるナターシャに忍者は勢い良く首を横に振った。そして無言でトラックヤードの片隅にある模様が周りと異なる不自然な壁を指差した。どうやらあの先に地下につながる入り口があるようだ。
「ありがとよ!」
そういうとナターシャは忍者の首に刃の向きを変えておもいっきり打った。峰打ちである。忍者は呻き声を上げる間もなく、気を失った。
ナターシャは壁を力いっぱい蹴飛ばすと中の方から空洞のような音が聞こえる。そして自身のバックパックから手榴弾のようなものを取り出すと壁に投げつけた。
手榴弾の閃光と凄まじい爆音と共に壁が崩壊する音をナターシャは物陰から耳にしていた。壁の穴の先には細長く暗い通路が地下深くまで延びているのが見える。
「さて、と本番といこうか」
ナターシャはバイクに跨がると地下へと伸びる通路に向かってエンジンを吹かした。




