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キングブレイカー  作者: 43番
第二章 Mr.ウルヴァリンの冒険
16/97

その1

これより第二章となります。

 キングスカンパニーが設立されたのは2000年代初頭であり、50年近く続く老舗である。


 サイバネティックスを精通した技術者を中心に長年に渡って福祉分野に特化したパワードスーツの開発、販売、メンテナンスを事業の柱としていた。

 しかし近年では軍事関係や情報通信などに事業をシフトしていくようになり、それらに伴いドローンやそれを司るAIの開発を始めるようになっていった。

 当初からの福祉分野での事業は縮小していったものの経営そのものは好調を維持しており、各子会社ごとに部門が分けられ、一大グループを形成している。


 数人規模で始めた会社であったが、現在グループ全体で1万人を越える大企業であり、経済界への影響力も年を追うごとに高まってきている。


 現在のCEOはフランク・フリーマン。56歳、現在は独身。妻とは数年前に死別している。カリフォルニア州出身。キングスカンパニー創業者であるジェイムズ・デイビッド・キングの右腕を永く勤め、キングの没後に後継者として10年前からCEOの座に君臨している。


 フランク自体は自己顕示欲の塊であり、かつ人の足元を見るような性格的にかなり難がある人物として知られており、醜悪な容姿と相まって社内外で陰口を叩く者も少なくない。だが経営手腕は確かなものであり、創業者の死で一時的に経営が傾きかけたキングスカンパニーを見事に立て直した。

 フランクの肝煎りで当初からの事業であるパワードスーツの開発のみならず、ドローン兵器を主体とした事業の拡大とAIとの連動を推し進めており、国内の防衛関係や軍事関係とも太いパイプを持っているのだという。


 キングスカンパニーが新製品を出す度に関係者を集めた大規模なプレゼンテーションを行うのが通例となっており、いまや一大イベントという認識を持って迎えられている。


「ウロボロスの終末」掃討作戦の際に流れた最新パワードスーツのプレゼンテーションも同様の趣向で行われていた。


 キングスカンパニーは誰もが認める一大企業であり、今や合衆国を代表する、いや合衆国そのものと云って過言ではないほどイメージが定着している。


 しかしその裏では昔から黒い噂が絶えず、テロリストへの武器の密輸、資金援助による自作自演の紛争を引き起こしていることや政界への癒着、人体実験などの非人道的な事業内容の隠蔽が叫ばれてきた。

 しばしば訴訟沙汰になることもあったが、その都度揉み消されてきたのは云うまでもない。


 特に黒い噂が噴出するようになったのは現在のCEOであるフランクに代替わりして以降なので、フランクに不信感を抱くものも少なくなかった。


 その黒い噂が決定的といわれたのが三年前の「ウロボロスの終末」事件だった。


 ……………


「キングスカンパニーの表向きの情報は以上、だ。ある程度の企業情報なんぞホームページやウィキペディアに載ってるもんだから、あんまり今のあんたには必要ないのかもな」


「確かに、私が欲しい情報はないな」


「奴等の情報統制は徹底しているからな、下手に尻尾は出さないだろう」


「キングスカンパニーの研究施設に潜入する方法はあるかい?やはり直接この目で奴等の所業を確かめるのが一番みたいなのでね」


「…危険極まりないが、どうしてもというなら一つだけある」


「そうこなくちゃ。流石はガンビット、君は頼れる男だよ」


「いい加減、そのあだ名は辞めてくれ」



 Mr.ウルヴァリンは場末のバーでポーカーゲームに興じる情報屋のギャンブラーに背中越しで会話を続けた。



「Mr.ウルヴァリン、無茶だけはするなよ」


「心配はいらない、ガンビット。新しい仲間も得られたし、そろそろ風は我々に吹き始めてきたようだ」


「あんたのその訳の分からない自信がどこから来るのか知りたいよ」


「君らギャンブラーの方が私から見たら何を考えているか分からないがね」


「ほっといてくれ、今いいとこなんだ」



 Mr.ウルヴァリンはやれやれと溜め息をつくと、こっそりバーを後にした。足早にギャンブラーから得られた情報を基にキングスカンパニーの研究施設へと向かうが、その途中でふと歩みを止めた。



「……尾行しているみたいだね。バーにいた人間かな?」



 Mr.ウルヴァリンは振り返ることなく、追跡者へ向けて不意に言葉を投げ掛けた。

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