その14
「あら、もう行っちゃうの?」
ミス・ジェーンが扉へと向かうMr.ウルヴァリンに声をかけた。
「ストームはサイクロップス君のことを頼む。善は急げというし、私は今私ができることをやるよ」
(行くって、どこへ行くんだ?)
「決まっているだろ。これからキングスカンパニーに潜入するつもりだ。この猫の体は諜報活動に向いているからね。何かしら手掛かりがあったら証拠を押さえるつもりだ」
「無茶しないでよ。只でさえダニーの治療があるのにあなたのことまでは手が回らないわよ」
「ハッハッハ、ストーム。私を甘く見ないでほしいな。これでも私は百戦錬磨だよ。並みのドローン兵器には遅れはとらないさ」
「一体どこからそんな自信が来るの…」
ミス・ジェーンは呆れた表情で頭を抱えた。
「手掛かりが掴めたら、また連絡する」
「はあ…程々にしてちょうだい」
ミス・ジェーンは手をヒラヒラ振ってMr.ウルヴァリンを見送った。Mr.ウルヴァリンは振り返ることなく、意気揚々と扉の向こうへ消えていった。
(ミス・ジェーン…なんかとても頭が重くなってきたんだが…)
ダニーは急に意識が遠のいていくような感覚に襲われた。
「大丈夫?話をして、少し疲れたみたいね。とにかく今は体を休めてちょうだい。試作の義体ができたら、また来るわ」
ミス・ジェーンは立ち上がると、手術台の照明を消した。
「おやすみなさい、ダニー」
そういうと、ミス・ジェーンは扉の向こうへ消えていった。
(これからどうなるんだろう。考えても仕方ない、まずは流れに身を任せるしかない、か…)
ダニーは薄れ行く意識の中でぼんやりとこれからのことを考えていた。そして、しばしの眠りについた。