その11
「三年前の「ウロボロスの終末」事件と今回の君が関わった掃討作戦についてある共通点があることがわかったんだ。いずれもドローンを使った自爆攻撃が行われているじゃないか」
(まあ、そうだな。テロ事件のこともあって、ある程度は警戒していたが、ここまで大量のドローン兵器を所持していたのは完全に想定外だった)
「おかしいだろ?いくらテロリスト集団といえど、武器や装備を仕入れるのには当然金が必要になってくる。
しかも正規軍でなければ、大抵は型落ちの旧式がメインの装備になるはずだ。それなのに君らに襲いかかったドローン兵器たちは数は勿論のこと、最新鋭のバージョンだったんだ」
(……俺も、いや俺だけじゃない、死んでいった戦友も同じことを考えていた)
ダニーはライナスとの作戦後に交わしたやり取りを思い出していた。
「どうやら君も疑問を持っていたようだね。さらにもう一つの共通点が三年前のテロ事件と今回の掃討作戦で使用されたドローンたちの製造元だ」
(ドローンたちを作ったところだと?警備用と軍事用の違いがあるが、製造元が一致しているというのか?)
「その通り。いずれも製造したのはキングスカンパニーだ」
(キングスカンパニー…どこかで聞いたような…)
「君が装着していたパワードスーツ「3DS-2020」も彼らが作った最新鋭のものじゃなかったかな?」
(そうだ…!今回導入されたスーツの提供元じゃないか。そしてテロリストが持っていたドローン兵器もキングスカンパニー製…一大企業レベルでなければ、あれほど大量のドローンは用意できるはずがないし、テロリスト集団にそんな資金があるとは思えない。
まさか、もしテロリストたちのドローン兵器も俺たちと同じくキングスカンパニーから提供されていたのであれば…)
「どうだい?偶然にしては出来すぎているだろう?非常にキナ臭いと思わないか?」
黒猫はダニーのバイザーを覗きこんだ。心なしか核心を突いたかのようにニヤリと笑っているようにも見える。
(この作戦そのものが、茶番劇…もし最初から仕組まれていたとしたら…やはり俺は嵌められたのか)
「さて話を大分戻してしまうが、我々が君を助けたのは君の力を借りたいからだよ。我々も追われている身でね。なるべく味方は多い方がいい」
(もしも俺が嫌だ、といったらどうするんだ?)
「今の君に断る理由なんかないだろ?」
(…確かにあんたのいう通りだ。敵よりも味方は多い方がいいもんな。わかった、あんたと手を組むよ)
「話が早くて助かる。そうだ、もう一人大事な仲間を紹介するのを忘れてた」
黒猫がそう話したタイミングでダニーの視界の外からドアが開く音が聞こえた。
「話は済んだのかしら?」
妙齢の艶のある女性の声が聞こえてきた。