尋問
犯罪者を収容する収容所。
その拷問室では、先の海賊戦で捕まった貿易商の番頭ロッドと酒場のマスターギルがぐったりとしている。
私が精神魔法で精神支配した状態に・・・この状態にするのに2時間も費やした。
一気に精神支配すれば、精神は呆気なく壊れる。それ程に精細なものなのだ。
「それでお前らは、どのような悪い事をしたのだ」
「わたしは、ギルが誘拐した女や子供を海賊に売り払いました」
え!グレス領にどんな情報を流したのかと聞きたかったのに・・・そんな事までやってたのか。
「ナルタ、そんな情報はあったのか・・・」
「は、はい、誘拐された情報はありません。けれど、今の情報を聞いて思い当たる事件があります。突然に行方不明になり捜索した結果。現場近くでモンスターの足跡があり、血痕も見つかっておりモンスターの仕業として処理された事件が複数あります」
「なんだと・・・」
わたしはギルをにらみ付けた。
「ギル、誘拐をモンスターの仕業にしたのか・・・」
「誘拐を生業とする闇組織から聞いた話では、そんな事をして誤魔化した自慢していたような・・・」
「ギルが誘拐してないのか・・・」
「わたしは仲介して仲介料を受取るだけです。闇組織のメンバーはグレス領訛りが多い・・・それに鍛えられた兵士のように統率が取れていた」
「ロッド、グレス領が関係してる情報を知っているか・・・」
「海賊に女や子供を売り払っている時に手紙を拾った。その手紙には、領主ダーミアン・グレスのサインがあった」
「その手紙は、どこだ!」
「家の天井に隠している」
なんて事だ・・・完全にグレス領主の犯行だぞ。
これは許せぬ・・・
「ロッドの家を捜索して来てくれ。必ず手紙を手に入れるのだ」
ナルタは1人の兵士に指示を出して、兵士は急いで駆け出す。
「ロッド、海賊の本拠地は知ってるか・・・」
「たしか・・・アーバンの港より西に2キロに・・・」
「最近の取引きは!」
「3日前に取引きをしました」
「カルエルさま、闇組織の居場所も聞いてみて下さい」
誘拐に意識が行ってしまった。
「ギル、闇組織の居場所は・・・」
「明日に連絡が来る予定です」
なんだと・・・明日か・・・そこで1人でも捕まえる必要があるぞ。
「ナルタ、急いで出発だ。ギルも連れて行くから急げ」
「承知しました」
酒場は、客で賑わっていた。
その酒場に不釣合いの客が入って来た。
フードを深くかぶって顔を隠す2人は、カウンターのマスターに「いい品が入った。引き取ってくれ」
客の2人が顔を隠す2人に、吹き矢を放った。
「う!なんだお前らは・・・」
2人はそのまま崩れるように倒れた。
「外には怪しい者はいません」
「この2人が連絡係か・・・」
ギルは惚けたまま「はい、その2人が連絡係です」
「あれがアジトか・・・」
山の中の洞窟前には、見張りの2人が立って何やら話し合っている。
そんな2人に近づき吹き矢が吹かれる。
2人の首筋に吹き矢があたり崩れるように同時に倒れる。
洞窟前に集まった兵士は、洞窟前で焚き火を開始。
その焚き火に丸薬を投げ込む。
この丸薬は、魔の森で採取した植物で作った物だ。
本当なら無臭で煙も出ない植物を、煙が出るように改良した物である。
煙がモクモクと出ると1人の魔術師が風魔法で洞窟に煙を送り込みだす。
周りの兵士に緊張が走る。
洞窟に入った煙が小さな穴から出てきた。
「出入り口は、ここしかないが煙の出る付近も調べるように・・・マスクの着用は忘れるな」
「了解しました」そう言って5人が動き出す。
その5人が戻って来た。
「人間が出られる穴はありませんでした」
「闇組織を捕まえるぞ。抵抗するなら切れ」
1人の兵が焚き火に水をかけて火を消す。
「もう煙の効力は消えてるが、マスクは着用して行くぞ」
皆はうなずく。
入って10メートル先には、男2人が折れ重なるように倒れている。
先頭の兵は、ロープを出して縛った。そして気つけ薬を嗅がす。
「なんだ、お前らは・・・どこの者だ」
「よくも好き勝手にやってくれたな・・・」
「ちょっと待て・・・この2人は魔法を使えるようだ。急いで口をふさげ!」
ロープで結び目をつけて口を塞ぐと「う、う、なに」ともぐもぐ状態に・・・
「この2人は詠唱しないと魔法を使えないから、もう大丈夫だろう」
「外へ連れ出せ!」
「了解」兵士によって蹴りをくらいなが連れ出される。
そんな兵士とわかれて先に進む兵士達。
広い空間には、24人の男が倒れた状態で眠り扱けている。
奥の部屋には、縛られた女や子供20人が寝てた。
次々に抱えられて外へ運び出す。
その後、闇組織の尋問で領内の内通者が芋ずる式に捕まる事になる。
その数は20人にも及んだ。
砦の兵士がいた事に驚きが隠せない。