深層心理
急いでサラーとバンバとマリを呼び集める。
「何か急用ですか・・・今は大事な商談をしてる最中でしたのに・・・」
ちょと不満気なマリには、申し訳ないと思いつつ言葉を選んで話した。
「この国、いや連合国全体の危機かも・・・各国の国王からの依頼だ。対応を間違えると魔族と戦いが始まるかも・・・」
「魔族とは、あの・・・めちゃくちゃ強いと噂されている魔族ですか・・・」
「今からマルサ国へ向かうからバンバは、ドローンをだしてくれ。マリは、言葉が通じない魔族の通訳を頼む。サラーは、怪我をした魔族の子供の治療を頼む。絶対に死なせるないでくれ・・・それが唯一の戦いの回避になるだろう」
バンバが亜空間からドローンを手早くだす。
「なんだこれは・・・前に乗った乗り物では無理だと思っていたが・・・」
あらあら勝手にドアを開けて入ったよ。
「中も広いなーー、早く入って来いよーー、これで急いで行くぞーー」
ああ、アルフホットは我が物顔で急かしてるぞ。
各国の国王に「解決する」と言った手前、後には引けないことぐらい分かっているが・・・
マリは、ついて来た部下にあれこれ言っているぞ。
バンバは、その部下に回復薬の入ったケースを手渡していた。
ミランダは、見た事もない武装してドローンに乗り込むし・・・好き勝手に・・・
「マリが操縦するのか・・・あれから上手くなったのかな」
「領主さま、いつのことを言ってるのですか・・・才能のあるわたしに掛かれば習得もちょろいもんですよ」
「マリ、マルサ国へ飛んでくれ。とりあえず座標位置はマルサの王都だ。アルフホットは、国境へ行ったことがあるのか・・・」
「ああ、あるぞ・・・王都からなら道にそって行けばつくはずだ」
「マリ、聞いたな」
「聞きました。それでは飛びます」
プロペラが回り、浮遊する感覚が伝わってきた。
もう、あっという間に地上が小さくなる。
アルフホットは慣れてきたのか、窓にかぶりつきだよ。
巨大飛行船より断然に速いからマルサ国の王都が見えてきたぞ。
「あの道にそって行けば国境まで迷子にならずに行けるはずだ」
ここはアルフホットの言うことを信じるしかないようだな。
アルト商業自治国の港と同じくらいの街並みだな・・・
「あの砦で間違いない」
「それでは、あの広い場所に着地しますよ」
スーウッと1分程度で降下してフワリッと着地。
めちゃくちゃ上手い着地だな感心してしまったよ。
あわただしく兵士が砦からゾロゾロと出てきた。
嫌な感じがするぞ。
そうか!連絡が遅いから私たちのことを知らないのか・・・これはまずい。
「ここはワシに任せろ」
あれあれ、ドアを開けて出て行ったよ。
「アルト商業自治国の代表アルフホットだ!お前たちの国王に頼まれて来た!以前にもここに来たことがあるが魔族の子の所へ急いで案内しろ。この意味の重要性は分かるな」
「わたしがマルサ砦の責任者です。アルフホット殿のことは知っています。国王の命令で間違いありませんか・・・」
「間違いない。ワシが来たことでも分かると思うが・・・」
「・・・・・・分かりました。案内します」
ちょっとアルコールの匂いがしてきたぞ。
ドアが開けられて真っ先に目に付いたのは、ベッドを赤く染めて寝ている少女であった。
あまりにも痛々しい・・・
息も浅く、顔も青白い顔で生気がない。
サラーが駆け寄り手を握り脈を確かめて、眉間にシワを寄せて考え込んだ。
「なにをしている・・・早く光魔法で治療を」
「黙って!」
私の言葉をさえぎったサラーは、無言のままだ。
「誰かこの包帯を切り取って。早く急いで」
ミランダが駆け寄り包帯をナイフで切って必死にほどいている。
あ!急に腐った臭いがただよう。
その瞬間、光が少女を包み込んだ。
「領主さま、この子の深層心理に入って下さい。そして生きる希望を与え下さい」
急に何を言うのだ。
「急いで下さい。さもないとこの子は死んでしまいます」
やってやろうじゃないか。
一呼吸して、やったこともない精神魔法の深層心理の奥深くまでダイブした。
え!ここがあの子の深層心理の中なのか・・・
これは霧か・・・色はグレーだ。
咳き込むこともないから大丈夫だと思うが・・・
あ!少女が座り込んでいた。
「大丈夫か・・・怪我はないか・・・」
「あなたは誰」
「私は、カルエル・ローランドだよ。怖がることはないよ」
「私の右手が無くなったの・・・もう生きていけない」
「大丈夫だよ。私がその右手を生やしてあげよう」
「ほんと」
「ああ、本当だよ。今から光で君の手を生やそう」
「ほんとうにほんとうよ・・・治ったらなんでも言うことを聞くから・・・」
深層心理の中で出来るか出来ないか分からないがやるしかない。
「光を・・・」
ポワッと小さな光りが灯り、光輝く。
「あ!手が生えてくる」
あ!現実世界の私はベッドに寝ていたようだ。
「大丈夫・・・あなたは良くやったわ」
ミランダの顔が近いぞ。
「どれくらい寝てた」
「2時間近く寝てたわ。周りの人たちは心配してたけど、私は心配などしなかったわ」
「あの子は助かったのか・・・」
「手も生えて、助かったわ」
「そうか・・・」
そして、又も深い眠りについた。