影
ローランドの競技場から声援する声がダダ漏れであった。
競技場の山場がピークに達したからに他ならない。
そんな声援の中でカインは、集中している。
弓をかまえて狙いが定まった瞬間、放たれた矢が的にむかって真直ぐに飛んで射抜く。
観客は、一斉に点数表示を見る。
点数は10点を表示。
その途端に会場から「優勝だ!カシム村が優勝だ!」と声援がとんだ。
観客席の後の大きなボードにも、選手名の横にも点数が表示された。
優勝決勝戦の相手の合計点数は99点。
それに対してカシム村のカイン選手は100点を叩き出したのだ。
それも予選から最高得点を出し続けて10回目である。
多くの人は、何処かへ消えてしまう。
どうも賭けをしていて、金を受け取りに行ったのだろう。
私は貴賓席でそんな光景を見ていた。
そんな私にミランダが耳元で話してくる。
私は一瞬、眼をつぶり・・・考える。
「仕方ない・・・」
「叔父上、急用ができました。後のことを任せてもよろしいですか・・・」
「急用か、それならしかたがないな。その急用とは何かな」
「アルト商業自治国で問題が発生したようです。アルフホットが助けて欲しいと・・・」
「それは大変だな・・・後のことは任せて行きなさい」
「では行ってきます」ミランダをともない競技場を出る。
商館内でアルフホットにむかい「それで、詳しい情報を教えてくれ」
「わたしにも良く分からないのだ。話した者も黒い化け物に襲われたと言って死んだ」
「いつ発生したのだ」
「3日前にアンゼア村の外でミゼ村の住人が倒れていた。その村人が言うには、村が黒い化け物に襲われ全滅したらしい。その報告を聞いて、兵隊を行かせたがミゼ村もアンゼア村も全滅していた。他の村にも行かせたが2つの村が空っぽで誰も居なかった。わたしには敵の動きが分からない。頼む空から探してくれ」
「今兵が居る村へ案内してくれ。そこから探そう」
私達が到着した時には、そこらじゅう死体が転がっていた。
「ダメです死んでます」
私は、死体を鑑定してみた。
【死体】
[ドラゴンの呪い]
ドラゴンが死ぬと、ドラゴンの死人が1人発生。
それは全身が黒い人型で、手当りしだい生き者を襲い殺す。
殺された者は、24時間を経過すると同じ黒い人型になり、また襲う。
物理攻撃も効かない、魔法も効かない。唯一効くのが光魔法。
私は、光魔法持ちのサラーを同行させていて助かったと思った。
私も光魔法を使えるがサラー程、強力なパワーはだせないだろう。
「アルフホット、この死体を火葬するぞ。急げ時間がない」
「どう言う事だ、理由を言え」
「あと8時間後に、黒いドラゴンの死人になる。ドラゴンを殺した事が原因で起きる[ドラゴンの呪い]だ」
あれこれ説明して納得してもらうしかない。
最後にはアルフホットも納得したようだ。
兵隊達は家々に死体を集めて、また早く燃えるようにガソリンをぶっ掛ける。
炎が上がり家が勢いよく燃えだす。炎の明かりが辺りを照らす。
どうにか助かった。タイムリミットに間に合った。
その時、炎のうしろで何かが動いた。
「ドラゴンの死人が来たぞ!注意しろ。触れるだけで麻痺して1時間後には死ぬぞー」
兵隊に動揺が走る。
私は光球を出現させて向かってくる黒い影に照らしてみる。
影は一瞬で消えた。やはり光魔法が弱点で間違いない。
サラーも光球を10個を出現させて、あっちこっちの影に放った。
周りは、影だらけだ。
次々に消える影。
そんな中で獣人が逃げる途中で転んでしまう。
その獣人に影が襲う。
その時だ。サラーの体が光だして辺りを照らし尽くす。
影も一瞬で消える。
あんなに居た影は、もういない。
「サラー、助かったよ」
私は影が消えた場所を探す。そこから黒く燃えたススをつかみ魔道具に載せる。
新しく作製した探知魔道具で、一瞬で同じタイプの居場所を特定する優れものだ。
「2キロ先に120もいるぞ!今から向かう。アルフホットはどうする」
「もちろん一緒に行くが、お前らは残れ。火の後始末が終わったら帰ってヨシ」
もう日が暮れて、暗くなっている。
しかし、私の目は誤魔化されない。
遠くの動く影が見えている。その数120で間違いない。
「どうする・・・連中はあそこに集まっているようだが」
アルフホット「そうだな、一気に決めたいから待つとするか」
「そうだな」
私達は隠れて見ていた。40がまた合流してきた。
そして50が合流してきたが、その中に1人が大きくハネが生えている。
間違いなく最初のドラゴンの死人だ。
「やるか・・・」
アルフホット「やってくれ」
私はうなずき、サラーに合図すると10個の光球が現れて放った。
光球は逃がさないように包囲。
どうすることも出来ないまま消える影たち。
あの大きい影がハネを羽ばたき空の光球と激突。
光球を消し飛ばしてしまう。
大きかった影が、小さな影に成り下がっていた。
力を振り絞ったせいだろう。
私は後を追った。残りはサラーに任せた。
フライで飛びながら追跡。
そして光球を出し放つ。
影は必死に蛇行しながら逃げる。
しかし、私はもう1つの光球を出現させて放つ。
もう逃げ場が無くなる。
2つの光球によって影は消滅させることが出来た。
あ!何かが落ちた。
私も急降下しながら上手くキャッチ。
それは黒い球だった。魔石ではない。
鑑定すると龍球と表示。
それを取り込むと龍魔法が使えるらしい。
龍球を胸に当てると、吸い込まれて一瞬体が黄色く光った。
何か感じる物が心臓に入った気分だ。
たしか雷を落とせると考えていると、天候が暗くなり凄い雷が落ちた。
落ちたヶ所から炎がでていた。急ぎ向かって水で消火。
あれ!飛ぶスピードが半端ないぞ。
なんだか力も半端ないぞ・・・
急激な変化に戸惑いもあるが、とりあえず皆の所へ帰ろう。