ゴーレム
私はローランドに戻り魔道高炉成型機に取り掛かった。
獣人が操作して高炉で鉄や鋼を生産しているが、それとは全く違う次元の高炉と成型機らしい。
38日もこもりきって作りあげる。
誰も手伝える物では無かったからだ。
稼動ボタンを押した。
それから何をさせるかを頭脳に念じて伝える。
魔法陣が幾重にも空中に展開していた。
あっちには重力を操る魔法陣が虹色のように輝いて出現。
装置中央に置いていた全ての材料が空中に浮き出す。
それに対応する魔法陣は、熱源100%を材料に放出。
更に制御魔法陣が幾つも支援している。
熱で赤くなった材料から不純物が取り除かれる。
配合の割合で非必要な金属も取り除かれる。
そして無重力にして均一に混ぜ合わさってしまう。
出来上がったのは、様々な合金。
【ステンレス鋼】
鉄鋼の5大元素である炭素やシリコン、マンガン、リン、硫黄にニッケルとクロムで構成されている。
クロム含有量は10.5%以上、炭素含有量が1.2%以下の合金鋼。
腐食しにくく、汚れにくい特徴がある。
水で錆びやすい船舶や設備には使い勝手がいい。
【超硬合金】
クロムやタングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、鉄、コバルト、ニッケルの合金鋼。
超硬合金はダイヤモンドに次ぐ非常に強度な硬さをもつ合金だ。
重さは金の倍あり、強度や弾性に優れ、高温時の硬度低下が少ないのが特徴。
耐摩耗性の高さを活かし、ドリルやフライスなどの金属加工用の切削工具によく利用される。
そんな合金が様々な形に成型される。
次に魔道高炉成型機の真骨頂を発揮する番だ。
強靭筋肉合金が幾つものパーツとして完成。
そのパーツを体重を支える骨合金に貼りつける。
それを超合金肌がおおい隠す。
そして出来上がったのは右足。
重たい体重を支えて歩く足は、バランスを保つ必要がある。
そのためにあっちこっちのセンサーでバランス制御して、転倒しない予測を瞬時判断。
中々出来栄えだ。
更に左足が出来上がる。
胴体が出来た時点で右足と左足がはめ込むように指示する。
空中に浮かんだ胴体に右足がスッポンとはまった。
左足も同じくスッポンとはまる。
そして内部では神経系合金が次々に繋がりだす。
それに伴なってエネルギー供給の管も繋がる。
右手もつき、左手もついた。
最後のパーツの頭部。
視覚センサーは、画像感度に異常なし。
同様に赤外線サーモグラフィに異常なし。
光を使った音響計測も異常なし。
最後の仕上げに、自我ソウトを入力。
頭部だけ作動開始。
『我、自我ソウト22-4を使用。マスター入力と固有名を要請します』
「カルエル・ローランド、私がマスターだ。お前の名はアークンだ」
『声紋にて認識。画像での認識も完了。カルエル・ローランドをマスターと認識しました』
「ゴーレム三原則は、そのままか・・・」
『ゴーレム三原則を尊重してます。第1条。ゴーレムは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。第2条。ゴーレムは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が第1条に反する場合は、この限りではない。第3条。ゴーレムは前掲第1条および第2条に反する恐れのない限り、自己を護らなければならない』
「そのゴーレム三原則をマスターのみに書きかえれないか・・・私以外の人間は殺してもいいと」
『承認するには、魔法国承認コード22-4が必要です』
「××22×4×××003」
『・・・承認しました』
これで頭部を体に合体出来るぞ。
頭部が体にスッポンとはまった。
そして、中央の空間から下におろす。
「アークン、私の前まで歩いて来い」
アークンが第一歩を歩いた。
スムーズな動きで私の前まで来て直立不動の姿勢をとる。
身長3メートルのゴーレムだ。
近くで見上げると怖いほどデカイ。