表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/85

甘味草




ギルドマスターの使いの者が、ギルドの裏へ来て下さいと連絡があったばかりだ。

なにやらいい物を見つけたらしい。

それをギルド裏の倉庫に置いてるみたいで、鑑定して品定めして批評(ひひょう)して欲しいという内容。


成る程、ギルド裏ってこんな風になってるのか・・・

大勢の人が働き荷物の積み降ろしをしているぞ。


村を回って来た自走車なのだろう。

後ろの荷馬車は、荷物がいっぱいに積まれたままやって来たぞ。

自走車から降りた運転手は、荷馬車の接続部分を「ガチャッ」と外すと、確認にきた職員に声をかけられている。


「ナガ村とガラ村から来た荷物か!」


「ああ、そうだよ。これにサインを頼むよ」


ササッ書いて手渡す動作は手馴れているが、横目で荷物を数えるのも手馴れている。


「この荷物の箱の傷は、運搬中に出来た傷か・・・それなりの損害になるぞ」


「受取った時から付いていた傷だよ。ここの裏書に書いてあるぞ」


「裏に書かれても・・・」


「村長が書いたから間違いないよ」


「まあいいだろう・・・これが新しい荷物の書類だ。あっちの2番の荷馬車に荷物は、積み込んでるから確認を頼む」


「わかった」


自走車は、前に動き出してハンドルを切りながら2番の荷馬車へバックする。

何度も窓から後ろを見て荷馬車へ「ガチャン」と(つな)げる。


そんな何気無い光景を見て楽しめるのも領主になった自覚から出るものなのか・・・


「領主さま、ここに居たのですか・・・」


「あ!ギルドマスター、ちょっと見学してたよ。中々な仕事量だね」


「忙しくしてます。見せたいのはこちらです」


倉庫の扉が開くと甘酸っぱい匂いがただよってきた。


「ガラ村で最近見つかった植物です。なんでも洞窟中にいっぱいに生える植物のようで、このように口の中に入れて噛むほどに甘味が増してきます」


なんと1メートルもある植物でポキッと折って食べているぞ。


私は、植物を手にして鑑定する。


甘味草(かんみそう)


育成85日


ぬるま湯で煮詰めて1日放置すれば、甘い水になる


媚薬(びやく)成分あり



なんと私の知らない草だ。


「オルノ、ギルドの厨房を借りるぞ」


「どうぞ使ってください」



そのまま厨房で甘味草の根の部分を手で洗う。

そして「トントントン」と切ってゆく。


ちょうどぬるま湯になった鍋へ放り込む。

見ていても透明な煮汁が出ていることを確認して、そのピーク時に魔道コンロの火を止める。


「オルノ、1日放置して味を確認してくれ。甘くなってるはずだ。中の草を取り出して更に煮詰めれば、結晶になると思うぞ。南国から輸入される砂糖と同じだろう。甘味の品質は上級ランクだ」


ギルドマスターのオルノに、紙に書いた甘味草の説明文を手渡す。


オルノは、媚薬成分の取り方に夢中だ。

鍋の量では、媚薬効果は薄いがスプーン一杯の量では、充分に効果を発揮するだろう。


「この媚薬は、昔話に出てくる白いりんごと同じですか・・・」


「ああ、そうだよ」


醜男(ぶおとこ)が魔法使いからもらった白いりんごで、絶世の美女と結婚したお話で有名だ。

男なら憧れる話であった。


昔の有名な錬金術士が媚薬の発明者であったが、秘密主義のために材料がわからずに今に至った。

これでようやく材料が分かったぞ・・・




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ