戦闘車
領内では、自走車は長距離を走る事にした。
それも定期的に走らせる自走車で、街から街へとつながる運行ルートで走りまわっている。
1つの街からは、村々を通って戻る運行ルートもあるのだ。
自走車は、12人乗りで後ろには、荷台が引張られいる。
人と物を安い料金で運行するシステムで領民からの受けもいい。
それは全ての領内の発展の為に・・・
「今度は、何をしてるのですか・・・」
「自走車に大型撃砲を載せ終わったばかりなんだ」
「あれ!この衝撃砲は、船のと違いますね」
「いい事に気づいたな。直径を大きくして、衝撃を撃ちだす事も可能だが、砲弾を撃ちだす事も可能にしたんだよ」
「砲弾ですか?」
「その砲弾も用途別に使い分ける事が可能なんだよ。ここにあるのは雷砲弾だ。打ち込まれた地域を200メートルの範囲で電気ショックが襲う仕組みだ」
「人はどうなりますか」
「50メートルの範囲は、完全に死ぬな。遠くになるに程に電気ショックは弱まるから、軽くても失神止まりだな」
「あそこにある白いのは・・・」
「ああ、あれか、極寒砲弾だよ。あれは地域をあっという間に凍らせる事が可能なんだ」
「すると、あの黒いのは、闇魔法が関係してますか」
「あれは関係ないよ。大昔に錬金術士によって開発された火薬が入っていて、当たると大爆発が起きて門や壁を壊す仕掛けだ。こっちのはもっと凄い徹甲弾だよ。特殊合金の弾だから分厚い鉄板でも貫通するように出来ているんだ。そして内部で大爆発が起きる」
「そんな強力な武器が必要なんですか」
「使わない為の開発だよ。1度使ってみて相手に恐怖を与える。それか、こんな物があるよと見せつけるのもありだな。もう2度と逆らうべきでない相手だと思わせば勝ちだ」
テスト試験場に戦闘車がやって来た。
戦う自走車なので戦闘車と呼ぶ事にした。
物珍しいのか住民がゾロゾロとついて来ていた。
警護の兵士が「帰れ!頼むから帰ってくれ!」と叫んでも帰らない。
日頃から珍しい事に出会わない住民にとって、戦闘車は娯楽の話のタネになるのだ。
「いいじゃないか、見せても減るもんじゃないだろう」
「分かった!しかし、この道から先には侵入は許さん。領主さまが見てるのを知らないのか」
「どこ、どこ、1度は顔を見てみたいのに・・・」
戦闘車は、私の目の前に止まった。
車輪の数は、悪路の道を想定して8つにしている。
どんなに凸凹な道でも地面に接地する工夫だ。
戦闘車のボデーは、合金でガード。重量も重いが8つの電気モーターがあり余るパワーで解決している。
私も乗り込んで、砲撃手の後ろに立った。
砲撃手は「領主さま、見学ご苦労さまです。必ず命中させます」
ナルタ「カルエルさま、もしも不具合で爆発が起きれば大変です。降りた方がよろしいかたと思います」
「何を言っているんだ。これを作ったのは私だ。信用してくれ」
「そうですか・・・」諦めムードのナルタであった。
「隊長!初めてもよろしいですか」
「はじめろ」
砲撃手は、レバーを操作して大型撃砲を「ウイイイ」と回転させて的に向ける。
「距離1キロ、風は西南で微風・・・発射角度22度に修正」
大型撃砲の角度が動きピタリッと止まった。
運転していた隊長から「撃ってヨシ!」の合図がする。
「撃ちます!」
衝撃が撃ちだされて、土煙が舞った。1つめの的に命中。
「今度は、砲弾で撃て!」
アームが動きだして砲弾を掴んで、大型撃砲の後部から手際よく入れる。
すかさず後部の蓋が閉まる。
そして大型撃砲が、次の的に合わせて少し動いた。
「撃ちます!」
撃ちだされた砲弾は、見事に的に命中。
大爆発でここまで振動が伝わるほどだった。
黒煙が消えたあとには、深くえぐられた穴が開いている。
見ていた住民から拍手が沸いた。
「凄い物を見られたな。帰ったら自慢が出来るぞ」
「本当に凄いよ。魔の森にいるドラゴンも倒せそうだぞ」
「あれなら間違いなく倒せるぜ」
そんな騒ぎをよそに隊長が話しかけてきた。
「領主さま、今から悪路のテストを行ないます」
「そうか、今から降りるから待ってくれ」
あわただしく戦闘車から降りる。
砲撃手は、安全ベルトを確認して「隊長!準備ヨシ!」
急にハンドルを切って、道から下りる。
草がおおって分からないが、完全な道でない悪路であった。
戦闘車が少し浮いたり沈んだりしてるが、物ともせずに走る。
砲撃手の体が激しく揺れている。
スライムヘルメットが「ゴツン」と何処かに当たったようだ。
あの走りなら合格だな。