新たな移動手段
道を整備した事は良かった。
しかし、それによって荷馬車や馬車の往来が増えて、馬が疲れ切っている。
充分な休憩をしてゆっくり走っていたのに、ガラリと変わり休憩も少なく疲れる走りをさせられる。
馬にすれば、たまった物ではない。
そんなクレームも対処しなければならない。原因をつくったのは、私自身だから・・・
古代の魔法王国では、空飛ぶ船があったらしい。
しかし、材料不足で今は無理だ。
馬は4本の足で走る。
ならば荷馬車の車輪が独自に回転すればいい。
その発想から開発が始まった。
最近よく使う電気モーターを車輪にしてしまう。
ちょっと太くなったが想定内だ。
もちろん車輪には、板バネ4ヶ所も取り付けた。
そして、いざ御者の椅子に座った。
あれ!これって雨が降ればびしょ濡れだぞ。
座ってみて感じる不便な出来事だ。御者は、今まで我慢して操作してたのか・・・
工房に戻り、屋根やガラスをはめ込む。ガラスは特別な強化ガラスだ。
古代の遺物の知識だ。
ドアもつけて完成だ。再度、外に引っ張り出す。
「おいおい、右に寄ってるぞ。このままだと出口に当たるぞ」
「おかしいな~右の車輪の回りがぎこちないです」
「なんだと・・・引張るのを止めろ」
車輪は回るが真直ぐだ。
ここでようやく車輪を左右に動かす必要を感じる。
馬が引張らないから、このままだと真直ぐしか走らない。
どうしよう・・・
そうか、船のように舵輪で操作すればいい。
適当に丸い物を作った。今後、これをハンドルと呼ぼう。
ハンドルを右に回せば車輪も右に動く感じでいいはずだ。
動かすのも電機モーターで動かしてしまえ・・・
たしか通信鏡具の魔法陣に似たようなのが・・・
それを4つの車輪とハンドルつける。
ハンドルを回せば電機モーターに通信が送られて車輪が動く。
スイッチを入れると動きだしたぞ。
ここでハンドルを右に大きく回すと、「ズズズ」と横すべりが起きた。
あ!止めるのどうする・・・スイッチを切って徐々にスピードが遅くなって止まった。
ちょっと焦った。これって止まる仕掛けも必要だな。
これもハンドルの仕掛けを使って、車輪をガツンッと掴んで強制的に車輪を止める。
操作するのはレバーだ。1段2段3段と掴む力が強くなる。
「アビン、レバーを1段にしてくれ」
「1段に入れました」
「お、掴んだぞ。今度は2段だ」
「入れました」
「3段も頼む!」
「入れました」
手で全然かないぞ。これなら大丈夫だ。
「アビン、動かしてくれ。ゆっくりでいいから」
「はい、動かします」
「そこで右に大きく回って」
またもズズと横滑りだ。
なんで横に滑る・・・何度も何度も試した。
そうか!・・・車輪が通った車輪跡で気付いた。
外側の車輪跡と内側の車輪跡の距離が違う。
外側の車輪の方が距離が長いのだ。回転数は同じでも走る距離が違う。
それを立証しているように横に滑ってる跡が・・・なんだ、簡単な理由か・・・
ならばハンドルを右に回した時には、左の車輪の回転数を落とせばいい。
それを何度も繰り返してデータを取って、魔法陣を見直した。
回す角度で回転数を変える方式だ。今度は横滑りもなく走れた。
「領主さま、これって10キロで走ってますがもっとスピードをあげれませんか、乗っていてなんだかもっと走れそうな気がして・・・それに、後ろに走らせる事も可能ですよね・・・」
「馬車は、40~60キロを1日で走るのが限界だが・・・考えてみれば速くできそうだな・・・それに後ろに走らせるのもいいな」
「それから聞きたいのですが、これって何と呼ぶのですか・・・」
「そうか・・・名が無かったな」
「わたしは、自動的に走る車輪で【自走車】がいいと思います」
「【自走車】・・・まあ、それでいいか・・・」
又も工房に戻った。
あれこれ魔改造して、起動スイッチを押しても速度レバー0なら動かない。
速度レバーを上げてレバー1で10キロで走る。
レバー2が20キロ、レバー3が40キロにした。
そして速度レバーを0の下では、バックするようにして速度は5キロだ。
ついでに車輪も改造。
むちゃな走りをして車輪がすり減ってた。こんなにすり減るのか・・・
減った部分に、スライム皮で特に軟らかい部分を剥ぎ取って貼ってやった。
ついでによく滑ったから滑り止めの溝も付けちゃえ。
そして、夜でも走れるように前方に【魔道照明】を3つもつけた。
それで魔道照明のスイッチを取り付ける。
スイッチを押すと魔道照明が点灯。もう1度押すと消灯。
中々なアイデアだぞ。
「アビン、走らせてみろ」
「えーと、左のレバーが速度レバーですよね・・・」
「そうだよ・・・右がブレーキレバーだ・・・何か変か」
「わたしも操作して分かるのですが、初心者だと操作ミスが起きませんかね・・・それが心配になりました」
「そうだな・・・今までない物だから戸惑うのも当たり前か・・・ならば免許制にしよう」
「免許制って、まさか魔法使いのギルトのようなものですか・・・」
「大丈夫だよ。1日の勉強と操作して合格ラインに達したら合格だから」
「1年以上の修行が必要かと思いました」
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