紙と本
切り倒した原木が製紙工場へ運ばれたのは昨日の事だった。
昨日の今頃は、第1工程で手間取ったのがいけない。
それで1日が潰れてしまった。
最初の皮剥ぎ機のトラブルが起きたのが原因。
急に回転が止まり回転モータから煙が立ち昇り緊急停止ボタンを押す破目になった。
原因は原木の皮を剥ぐ爪が引っ掛かって止まり、回転モーターに負荷が掛かったらしい。
その場で解体して回転モータを取り出す。
私が全てコツコツと作った作品だ。私以外なおせる者がいない。
「なんてことだ。モーターの焼きつきだよ。作業中に負荷が掛かったら止まる仕組みが必要だな」
そう思った瞬間に、鑑定がその仕組みを知らせてきた。
モーターに負荷が掛かって配線も熱を持ってるぞ。やっぱりそうか・・・
配線の間に鉛によるヒューズがあればいいのか、鉛ならドワーフからもらった奴があった。
電気配線の間にヒューズを取り付けた。これで大丈夫だろう。
回転モータも新しく作り変える。
磁石を超磁石にする事でパワーアップをはかった。
あれから皮剥ぎの威力は凄まじく、一瞬で皮剥ぎ作業が終わっている。
今度は、皮なしになった木を粉砕してゆく。
1段目は、荒く粉砕。
2段目は、細かく粉砕する。
3段目で、もっと細かく粉砕だ。
次は特殊な液で木釜にて高温高圧で蒸す。
その後は洗浄する。その時に特殊な液に溶け込んだ繊維以外は取り除く。
洗浄しても繊維は、木の色のままだ。
なので、漂白剤で白くしてしまう。
この漂白剤は、天然植物を20種類の配合で手間と時間をかけた優れもの。
繊維劣化を防ぐ働きもあるのだ。
そんな繊維を次の工程に向かった。
100倍近くの水で薄めたパルプ液を混ぜながら細かな網目の上に均一に吐き出す。
その後ローラの間に挟まれて脱水。
その後も魔道温風で乾燥する。
そして表面に糊を塗り、ロールでしごくことで表面の凸凹をなくす。
糊はインクの滲みを減らす効果があった。
出来上がった紙は、ロールに巻かれたまま隣の工場へ。
「オライ、オライ、ストップ!ちょうど良い位置だ。降ろしていいぞ!」
ロールを掴んでいたのは、専用の魔道運搬機。
アームがロールを受け取り搬入口に置いた。
隣では、本の製作が始まっている。
魔道印刷機でロールに次々に印刷されて、切断機によって切断される。
この切断機の刃は、10倍の切れ味が付与されている。
そんな紙を製本するのは、職人たちだ。
厚紙を貼り付けてモンスターの皮を貼り付ける。
貼った上からローラを転がして、完成確認した後に「1冊が出来上がったぞ」
「出来たのか・・・インクの匂いが真新しいな」
「当たり前だ。出来立てのほやほやだからな」職人はそんな風にうそぶいた。
その本を手に取った。
本のタイトルは【単語辞典】
その本をめくって1つの単語と意味を読み上げる。
「【魔法】魔法は、神から授かりしものである。自分自身に秘められた魔力を使い、周りのマナに影響を与えて発動する。基本は、光、火、水、木、金、土、闇の7つ。それ以外はレアな魔法である」
中々な事が書かれてるな~。
私には【単語辞典】が必要だった。
これで識字率のアップが出来るからだ。
兵士たちの中でも字が読めるが書けないの者が30%いる。
それが村単位でみるともっと酷いありさまだ。
識字率は、平均30%で悪い場合は、5%にも低下。
字が読めないと危険で騙される可能性がある。
例えば、薬の処方箋の注意書きが読めない。
薬は、決められた量を決められた回数で飲む。
誤って飲み過ぎたら大変な事が起きる。薬の飲み過ぎは毒にもなる。
それに契約して書類にサインしても読めないと騙される。
今は、領内だからいいが他国との取引きをするようになれば騙され易いだろう。
今後、取引きする国の【外国辞典】も製作する積もりだ。
とりあえず南国のバーラン国の【バーラン語辞典】だ。
商人から聞き取り調査をして、製作段階に入ったばかりでいそがし。
「領主さま、教師候補の面接が始まります。そろそろお戻りにならないと・・・」」
「そうか、この単語辞典を運んでくれ」
今日は、面接の日だった。学校を建てるのも色々とやる事が多いな・・・
字と計算だけでも教える学校を建てて無料で1年間の勉強をさせる積もりだ。
これは、義務として徹底する。
村は定期的に教師を巡回させて教える。
字が読めさえすれば、独学でもなとでもなるように図書館の建築も考えている。
ここローランド城の街にも図書館を建設中で、夜の図書館を見て回ってる。
そして気になった事を置手紙に書いておく。
ここの棚を増やして欲しいとかあっちには、非常階段を付けろとか注文を書かくのだ。
それは、建設が終わるまで続くだろう。
今後は、他の街にも建てる積もりで、村には図書目録を置く予定だ。
村の収穫時期に役人の収穫税の確認に行った時に、読みたい本を受け付ける。
そして、収穫税を受取る時に、本を貸しだす。そんなシステムにする予定だ。
本来、村と街の往来は収穫期期間しかないのが現状だ。
数は少ないが商人が売り回る事もあるらしい。
なので村に手紙を届けようとすると、高い料金になる。