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初めてのパニック




遠くから鐘の音が連打されて街中が騒然としている。


「火事だ!火事だ!」


「早く逃げろ!」


私は【水のロッド】を握りしめて、外に飛び出す。


「鐘の鳴る方向は、西門近くか・・・」


急いで駆け出す。後を追う兵士をほったらかして出てしまう。

逃げる人をかわしながら思うように進めない。

もう兵士の姿も見えない。


焦る気持ちとイライラする気持ちでどうしようもない。


「どいてくれ!消火に向かってるから邪魔をするな!早く行かせてくれ」


人の流れに逆らう事の難しさを、今日、初めて体験する。

怪我を負った人や火傷の人を見るたびに、自身の無力を呪うしかない。


もっと早く作ってあっちこっちの警備所に置いておけば良かった。

「バカ野郎!」と自分自身に言いきかせながら進むしかない。


ようやくたどり着いた時には、いくつもの家が全焼して崩れ落ちている。

水のロッドを燃えている家に向けて「ウォーターショット」と叫んだ。

ロッド先から水が放水される。

放水されて消える炎。


ただ目の前の火事を消すだけで一杯だ。



誰かが肩を掴み「しっかりして下さい」と怒鳴られる。

振向くとダーク隊長だった。


「領主さま、今は西風が吹いてます。西に向かって火事が広がってるので西の家に水を掛けながら西から攻めましょう」


「そうか・・・」


放水しながら西に向かった。

成る程、まさに燃え出す家を見た。


そこをポイントに水の放水を続ける。


何処(どこ)に放水すれば効果的なのか、改めて考えるようになった。


パニックになった自分が腹立たしい。もっと早く冷静な判断が出来ていれば・・・


これが戦争なら尚更冷静にならないといけない。

そうなのだ。今は、私が領主なのだ。


徐々に火が弱まっていた。

そして全てを消し終わった。私が消したのか・・・


「領主さま、まだまだ油断は出来ません。わたしの経験から消えたと思っていた所から燃え出す事があります」


「え!そうなの」


「あの湯気が出てる所は、まだまだ熱がこもっている可能性があります」


更に水を放出し続ける。

もう服はびしょ濡れで黒くススだらけで汚れている状態だ。

そして悔しいのか涙が流れていた。




ようやく衛兵隊がやってきた。私は怒鳴りたかったが止めとおく。

私は、ローランド領の領主なのだ。もっと冷静にならないと・・・


そんな時だ・・・ダーク隊長に報告する声が聞こえた。


「住民の避難が完了しました。訓練場に入りきれない住民はルラ教会に頼み、心良く引き受けてもらいました」


「薬は充分か、負傷者には無料で配ったか」


「在庫の薬は7割を使いました。不十分ならいつでも取に来いと言ってます。もちろん無料で配りました」


「領主さま、ロッドをお貸し下さい」


ダーク隊長に手渡す。


「まだくすぶってる所は念入りに消しておけ」


衛兵隊長に水のロッドを渡して使い方を教えている。


後はダーク隊長に任せた。そして、この場を去った。




魔具工場に戻り。


【水のロッド】の生産を優先的に指示。


【水のロッド】コイン製作が始まった。


「今日は1晩かけて作るぞ。特別手当を支給するから頑張ってくれ」


私の号令に皆は「オー・オー・オー」と高らかに叫んだ。


私は消火隊なる隊を作ろうと思う。

制服は黄色に統一。消火隊が来た事がすぐ分かるように目立つ色に。


水のロッドが完成すれば、この街から配備だ。違う街にも村や砦にも配ろう。


今日の火事騒ぎで、私1人でも十分消せる事が判明した。

少数精鋭でやって行こう。そして徐々に増やせばいい。


消火方法は消火隊に任せた方が良いだろう。


とりあえず今日の反省文を書いて残しておこう。





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[良い点] 熱い顔に涙が流 [一言] 領主さん好きー
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