魔道具と馬車
ナルタに【魔道照明】を見せて説明をする。
「これは凄く明るいですね・・・早速手配をします。あの役に立たない魔石にこのような使い方があるとは思いもしませんでした。冒険ギルドにも早速、買取り依頼をしておきます」
「それもそうだな、頼むよ。出来上がった【魔道照明】を夜間の見回りや詰所と砦に使用したい」
「何故ですか」
「それを見た商人は欲しがると思うからな、値段はナルタに任せたからな」
「かしこまりました」
研究室に戻り研究の再開だ。
次に取り掛かったのは【通信鏡具】である。
鏡の前で話したい相手の通信鏡具の番号を打ち込んでボタンを押す。
すると相手とつながり鏡の相手を見ながら話が出来る。
それはどんなに遠くてもつながり話せるのだ。
それは複雑で魔法陣を30枚以上も使用する物だ。細かな部品も必要な魔道具になる。
私1人で作るには、長時間作業が必要でそんなに時間は使えない。
色々な事案を一杯に抱えているので劣化版の【通信話具】にした。
それは私が【通信鏡具】の設計図の複雑な部分を取り除いた改良品である。
それは声のみ通信する魔道具である。親話具から指定番号で子話具と通信。
子話具は親話具のみの通信が可能な魔道具である。
これだと簡単に作れるぞ。魔法陣の枚数も3枚ですむから楽々だ。
親話具を城に置き子話具は、頻繁に連絡する場所に置けばいい。
砦や港町バークレイや冒険ギルドなどの要所に置いておけば緊急連絡ができるぞ。
1人でコソコソとやっていると親話具と子話具6機が出来上がった。
ここまで簡単にできるのも鑑定Xの凄さだ。
それに、そんな知識の倉庫の【魔法陣の本】にも感謝だ。
この本には魔力が染み込んでいた。
劣化防止の付与も付けられていて、鑑定するだけで知識が頭に入ってきた。
失われた古代の知識が・・・それを使ってよりよいローランド辺境伯領にしたい。
その思いが私の使命のようにも感じる。
再度ナルタと話す事になった。
ナルタに、この魔法陣の上に魔石を置くとつながる状態になると説明。
ナルタに子話具を全てを隣の部屋に持って行かせて通信テストを始める。
「あ・あ・あ・聞こえているかナルタ・・・」
「は、はい聞こえています。声が聞こえてます」
「それでは、次の子話具にいくぞー」
「聞こえるかナルタ」
「はい、聞こえます」
無事テストが終了した。
ナルタは凄い魔具だと騒いでいるが私は次の魔具に意識がいっている。
そして子話具の置く場所を話し合う。
「砦、港町バークレイ、冒険ギルドですか・・・それは大変よい事です、早速これを早馬で送りましょう」
ナルタは衛兵に3台の子話具を持たせて早足で出て行った。
次は魔法陣の武器作りをしたいが肝心の金属が無い。
特殊な金属でオリハルコンが必要。
金属の専門家のドワーフなら知ってるだろう。ドワーフの里へ行く事を考える。
ナルタにも相談すると、急いで行った方がよいと賛成されて馬車に乗せられた。
あれよあれよと馬車は出発して、護衛官10人を連れて旅となった。
里への道中も道の手直しをしながら、馬車は進む。
この馬車も手直しされて揺れも少なくなって快適なっている。
古い技術の板バネを使用した結果だ。
この板バネも本の知識だ。ただし問題があった。
本来なら様々な金属を錬金術で合金にして作れば、粘り強く強度も兼備えた物できる。
しかし、我が領土は・・・今は物資不足で思うような金属が手に入らない。
それでもああだこうだと努力して粘りのある板バネは作った。だけど強度不足だ。
そこで強度を増す方法を試した。
板バネの強度を増す方法に、板の表面に丸状の物で強打して丸い凹みを複数作る。
それで強度が増すらしい。
それだけで終わらなかった。
板バネの枚数や板バネの反りをどうするか試行錯誤が必要だった。
合金の板バネができないだけでこんな苦労をするなんて、本当なら板バネ1枚でいいのに・・・
何度も何度もテストを繰り返した。
「できだぞ!これで完璧だ」
そんな馬車が軽快に走りだして御者は「え!いつもなら強打する尻が・・・こんなに楽に」
もうあっちこっちから注文が来て、断れない状況だ。
何度も土下座する者も現れる程だ。
御者の奥さんも来て「旦那の腰痛がひどいのです。どうかお願いします」と泣きつかれもしたよ。
ああ、徹夜して頑張ったよ・・・
そんな私も、馬車の中で物思い耽る。
魔法陣でも物を浮かせる事が出来る。しかし、やはりオリハルコンが必要。
「ドワーフの里にあればいいな~」