0090:中級者用もクリアした
ボス部屋の前で昼食を食べ始めた。そういえば、マリーナだけがボス部屋の中を覗き見したんだよな。
「マリーナ。そういえば、ボス部屋の中を覗いてたよね。中にいたモンスターって、どんなモンスターだった?」
『え~とね、頭が2つある少し大きめの黒い犬がいたよ。』
『それって、ひょっとして、ランクBモンスターであるケルベロスでは? レイさん、どうしますか?』
ランクBモンスターといえば、オークキングと同じランクだよな。あの時は倒さないといけない事情があったが、今回は無理して倒さないといけない事情は無いな。いくらジャンヌが加入して戦力アップしているからと言って無理する場面では無いはずだ。
「今回はパスするのも有りかな?」
『ご主人様、ボスモンスターはボス部屋からは出られないです。なので、戦ってみてから判断することも可能ですよ。』
ということは、アイリーンは挑戦してみたいと言っているな。確かにボス部屋から出れば追って来ないなら大丈夫そうだよね。
「そうなら、戦ってみても大丈夫そうだよね。それにレアなスキルを持っているかも知れないしね。」
昼食が終わり、まずは俺がボス部屋を覗いてみた。確かに頭が2つある大きな犬っぽいな。早速、鑑定してみた。
〈鑑定〉
ケルベロス
スキル:火魔法、俊足、隠密
「確かに、サーラの言った通り、ケルベロスだね。火魔法、俊足、隠密のスキル3つ持ちだね。」
『ご主人様、サーラ、ジャンヌ、魔法の先制攻撃をお願いします。ご主人様達が魔法を放ったら我々が突撃しますので。』
俺とサーラとジャンヌが魔法の準備を開始した。少し狡いがボス部屋の外で魔法の準備をしている。部屋の外にいる限り、部屋の中のモンスターから攻撃されない。
魔法の準備が完了し、部屋に入った瞬間に魔法を放った。
『グラァァァ』
魔法が全て直撃し、ケルベロスがよろめいたが直ぐに持ち直し、突進してくるアイリーン達に向かって炎のブレスを吐き出した。頭が2つあり、それぞれの頭の口からブレスを吐いている。
『エリーは左の炎を防いで。』
アイリーンがエリーに指示して、自分は右の炎を盾で防ぐ。その隙にマリーナ、レジーナ、ジャンヌがケルベロスの横に回り込んでそれぞれの武器で斬りつけると、『ギャン』と犬の鳴き声のような声をあげた。
そしてケルベロスはジャンヌのほうを向いた。多分、攻撃が一番効いたほうを向いているんだろう。ケルベロスはジャンヌのほうに炎を吐こうとしているようだ。アイリーンとエリーが急いでケルベロスの目の前に立ち、再びケルベロスの炎を盾で防ぐ。
ケルベロスの炎は尽きることが無く吐かれ続いている。その度にアイリーンとエリーが盾で防いでいる。ケルベロスのブレス攻撃を見ていると炎のブレスを吐いている時は身動きしていない。どうやら、動きながらブレスを吐くことが出来ないようだ。
「ジャンヌ、一気にケルベロスの首を斬り捨てるよ。」
それを聞いたマリーナとレジーナは、真っ先にケルベロスの後方に回り込んで後ろ足に攻撃を加える。ケルベロスの動きが少し止まったタイミングで、俺とジャンヌがケルベロスの首を斬りつける。
「おりゃぁぁ!」
『………はぁぁぁ!』
一刀両断とはいかなかったが、ケルベロスの息の根を止めたようだ。暫くすると、スキル取得選択が表示された。
【隠密】スキルを取得しますか?
[はい] [いいえ]
もちろん、[はい]を選択した。スキルの検証は後ですることにした。ボス部屋の奥に扉がある。あの扉の奥に中級者用ダンジョンのコアがあるはずだ。
「ちょっとだけ、コアを見てみるか。」
『ご主人様、何度も言いますけど、見るだけですよ。』
「分かってるよ。馬鹿じゃないんだから、1度言えば大丈夫だよ。」
『旦那様だから心配なんですよ、ふふふ。』
マリーナはいつもの失礼なマリーナだ。ボス部屋の奥の扉をそっと開けた。2度目のコア拝見だ。初心者用ダンジョンのコアより少し大きいサイズのような気がする。
「ひょっとしたら、コアってダンジョンの大きさに比例しているのかな?」
『はい。そのように言われていますよ、レイさん。』
「やっぱり、そうなんだ。さてとコアも見たことだし、そろそろ帰るとしようか」
本日の7階層の成果は
ケルベロス x1
ワータイガー x1
ナイトクロウ x1
ワーウルフ x92
キラーエイプ x6
ケルベロスの爪 x1
ケルベロスの毛皮 x1
虎の毛皮 x1
カラスの目 x1
狼の毛皮 x30
「何か毛皮系のドロップアイテムが多いね。虎の毛皮とかケルベロスの毛皮って何に使うのかな?」
『レイさん、虎の毛皮とかは貴族とかが家の飾りに使うんですよ。』
「うわぁぁ、成金趣味っぽいな。とりあえず、帰ってギルドで買い取りをしてもらおうか。」
ポータルを起動して戻ってきた。するといつものように入り口のオッサンが声を掛けてきた。
『おぉ、レイ達か。7階層のボス部屋には近づいていないだろうな?』
「何かあったんですか?」
『ボス部屋にケルベロスが召喚されたという噂があってな。ケルベロスはランクBモンスターでも上位モンスターだからな。もし噂が本当だとすると、放っておくと間違って立ち向かおうとする冒険者が出る可能性が高いから注意しておこうとなってな。』
「えっと、確かにボス部屋にケルベロスがいましたね・・・」
『お、本当にケルベロスが召喚されていたんだな。それでお前達は手を出してこなかったんだな。』
「えっと、倒してきたんだけど・・・駄目でしたか?」
『………は? 倒した? お前達が?』
「はい。これが証拠です。」
アイテムボックスからケルベロスの毛皮を出して見せた。
『おぉ、お前達、すげぇな。大したもんだ。ケルベロスまで倒して来たのか。これで中級者用ダンジョンもクリアか。』
ケルベロスの毛皮をアイテムボックスにしまい、オッサンに挨拶してギルドに向かった。
ギルドに到着し、受付嬢のところに向かうと受付嬢が
『レイさん、大変申し訳ありませんでした。』
受付嬢が頭を深々と下げてきた。
『ご主人様、何をやらかしたんですか?』
『旦那様、正直に言ってみて?』
『主様・・・?』
『レイさん、何をしたんですか?』
『レイくん、まさか?』
『………レイ様?』
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺、何もしてないよ。とりあえず、頭を上げて下さいよ。一体、何があったの?」
『あ、申し訳ありません。ボッター商会の件です。変な依頼を受け入れてしまったためにレイさん達にご迷惑をお掛けしてしまいまして。』
あぁ、ボッター商会のことを謝罪していたのか。別にボッター商会のことはギルドは悪いとは思っていないんだけどな。
「ボッター商会のことは、どうでもいいですよ。それよりも、買い取りをお願いします。」
受付カウンターの奥に行って、アイテムボックスから魔石とドロップアイテムを出した。受付嬢がケルベロスの毛皮を見て、口をパクパクさせている。
『レイさん、これってケルベロスの毛皮ですよね? まさか、中級者用ダンジョンをクリアしたんですか?』
「はい。そうですよ。」
『こんな短時間で初心者用、中級者用もクリアしちゃうなんて、凄すぎですよ。とりあえず、査定しますので少し時間を下さいね。』
ちなみにケルベロスの毛皮は火耐性があって、ケルベロスの毛皮で作られた防具は冒険者に人気があるそうだ。見映えは悪そうだけどね。
受付カウンター横の酒場で時間潰しに飲み物を飲んでいると、冒険者達が寄ってきた。
『お前達、ボッター商会に目を付けられたんだってな。奴はしつこいから気を付けろよ。』
「ありがとう。気を付けるよ。」
ボッターはしつこいのか。さっさと忘れてくれれば良いのに。30分くらい経過したところで受付嬢から呼ばれた。
『査定が完了しました。大金貨2枚、金貨4枚、大銀貨3枚、銀貨5枚になります。』
『『おぉ、凄いですよ!』』
アイリーン達は査定額に驚きの声を上げた。
「ありがとう。問題無いです。」
俺は平静を装っているが内心は大満足だ。大金貨が2枚もある。報酬を受け取りギルドをあとにした。
思わず大金が入ってきたな。何を買おうか? それとも貯金かな?
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