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0081:会えませんでした


昨日、ボッター商会からの指名依頼を受けたので昼の少し前に馬車を出てボッター商会の会長であるボッターの屋敷に向かった。


ボッター屋敷への道順はギルドから事前に聞いて確認している。ボッター屋敷は貴族達が多く住んでいる高級住宅街の中にあるとのことだ。ちなみに高級住宅街の屋敷はそれぞれが大きく庭もかなり広いらしい。


「凄いねぇ。商人って、そんなに儲かるものなの?」


『やり方次第じゃないですか? 旦那様。悪どくやれば、結構儲かるんじゃないですか?』


「まぁ、そりゃそうだけど。でもそんな商会なんてすぐに潰れるんじゃないの?」


『レイさん、残念ながら税金を多く納めている商会は中々潰れないんですよ。貴族も苦々しく思っていても中々手を出せないですから。』


色々と抜け道があるんだろうな。賄賂とか権力に媚びるとか。


「なるほどね。あ、そろそろ貴族街だね。確かにデカい屋敷がたくさん並んでいるね。」


豪華な屋敷が建ち並ぶ区画が見えてきた。高級住宅街の道路は道幅が広いな。貴族は基本的に馬車を使って移動するんだろうな。馬車が2台すれ違えるだけの十分な幅がある。


貴族街の入り口には警備兵が5~6人いる。当然、中にも巡回している警備兵もいるんだろうな。入り口に差し掛かると、当然警備兵から声がかかる。


『そこで一旦止まれ。この先は貴族街だ。特に用事が無いなら立ち入り禁止だ。さっさと引き返せ。』


「冒険者のレイと言います。ボッター商会から呼ばれたんですが。」


警備兵達がこそこそと相談を始めた。


『ボッターさんが、こんな子供を呼ぶかな?』

『嘘に決まってるだろう? 大方、直接会って雇ってもらいに来たんだろう。』

『確か、ランクC冒険者が来るかも知れないって連絡はあったけどな。』

『おいおい、あんな子供がランクC冒険者なはずが無いだろう?』

『それもそうだな。なら追い返すか。』


小声で話をしているつもりかも知れないが聞こえているぞ。相談が終わり、警備兵達がこっちに向かい


『悪いが、お前達みたいな冒険者が来るとは聞いていないから、ここを通すわけにはいかん。さっさと帰れ。』


こいつらは馬鹿なのかな? ちゃんと確認も取らずに自分達の判断で対応している。正直、指名依頼を受けたくないので良い口実が出来たな。


「そうですか、分かりました。仕方がないね。皆、帰ろうか。」


『え、ご主人様、良いんですか?』


「良いんじゃない? こっちとしては義理は果たしたわけだし。とりあえず、後で揉めないようにギルドに報告だけしておこうか。」


『そうですね。分かりました。』


貴族街の入り口から回れ右して戻ってきた。ギルドに行き、受付嬢に経緯を報告すると


『え、おかしいですね。確かに向こうに連絡をしてあったはずなんですけど・・・』


多分、ギルドから連絡はちゃんと通っていたようだったが、警備兵が勝手に判断しただけなんだと思う。が、すっとぼけておく。


「なら、向こうの不備かも知れないですね。まぁ、一応、向こうに出向いたわけだし、もう良いですよね?」


正直、もう一度行ってこいと言われて嫌なんだけどね。


『う~ん、分かりました。でも一応、向こうには連絡しておきますね。』


結局、今日は何も出来なかった。無駄な1日になってしまったな。


「仕方が無いね、今日は色々と買い物をすることにしようか。」


『『分かりました。』』


「さてと何を買いに行きたい?」


『『服が欲しいです。』』


というわけで、皆の服を買いに行くとこになった。服を買うこと自体は良いんだけど、選ぶのに時間が掛かるのが難点なんだよな。


服屋に到着しアイリーン達は服を選び始めた。アイリーン達が服を選び始めて、かれこれ2~3時間かけて服を選んでいる。相変わらず女性の買い物は長いな。時折


『どっちの服のほうが似合いますか?』


と俺に質問が飛んでくる。センスの無い俺に聞いちゃ駄目だよ、と思いつつも回答はする。しかしながら、やはり俺の回答が採用されることは少ない。


やっと買い物を終えて、帰りにプリンの材料を大量に買い込んで馬車に帰って来た。まぁ、アイリーン達がニコニコなので良しとしよう。


「明日はちゃんと稼がないとね。」


『『そうですね。頑張りますよ。』』


プリンを大量に作った後は、いつも通りに夕食を食べて風呂に入り、アイリーン達を抱いた。最高の時間を過ごす。もう既にボッター商会のことは綺麗さっぱりと忘れていた。


「明日はなんの依頼を受けようかな?」


ーーーーーーーーーー


『おい! 今日、レイとかいう冒険者が来ることになっているはずだが、まだ来ないとはどういうことなんだ? この儂を舐めているのか?』


『旦那様、先程ギルドから連絡がありまして、どうやら入り口の警備兵が誤ってレイ達を追い返してしまったようです。』


『なんだと! そんな馬鹿な警備兵がいるのか? ちゃんと通達はしたんだろうな?』


『はい。通達はちゃんとされておりましたが、警備兵が勝手に判断して追い返したようです。』


『なんだと? そんな馬鹿なことがあるのか? その馬鹿どもを首に出来ないのか?』


『旦那様。さすがに、それは無理かと・・・』


貴族街の警備兵は貴族街に住んでいる者達が金を出しあって雇用している。そのため、1人の一存では、首にすることが出来ない。


『ちっ、仕方が無いな。おい! 息子を呼んで来い。』


………

………


コンコンと部屋をノックする音がする。


『父上、お呼びでしょうか?』


扉の外から若い男の声がする。


『あぁ、入れ。』


『失礼します、父上。お呼びとお聞きしました。何か問題でもこざいましたか?』


『あぁ、実はな、今日呼び出したはずの冒険者を馬鹿な警備兵が入り口で追い返したようでな。だから、お前が明日、直接出向いてレイとかいう冒険者を連れて来い。』


『分かりました。では明日、その冒険者を連れて来ます。では失礼します。』


その息子と呼ばれた男が部屋を出て、ボソッと一言。


『また、父上の悪い癖が出たか。困ったものだ。後で揉め事にならなければ良いのだが。』

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