0006:冒険者ギルドに登録した
町に入って驚いたことに臭くない。確か中世ヨーロッパの町ではあちこちに糞尿が棄てられていたんだよな? 少なくとも、この町はそんなことが無いようだな。
ひょっとしたら魔法とかで汚物をクリーニングしているのか、それとも下水道がしっかりしているのかな、等と考えているとベルドから
『とりあえずは冒険者ギルドの前まで連れて行くが、レイはそのまま冒険者ギルドで登録するんだろう?』
「はい。もちろん、冒険者登録するつもりです。」
『そうしたら、冒険者ギルドの前でお別れだな。』
「ありがとうございました。すごく助かりました。」
『いやいや、助けられたのはこっちの方だからな。気にしないでくれ。』
城門を通り抜けて馬車で走ること10分程度で冒険者ギルドの前に着いた。
『じゃあ、ここでお別れだ。もし何かあればベルド商会まで来てくれ。出来るだけのことはするよ。あと宿屋はギルドの横にある宿屋が安いぞ。』
「分かりました。何かあれば頼らせてもらいますよ。」
ここでベルドと別れた。馬車が見えなくなるまで手を振った。
「さてと、じゃあ早速冒険者登録をするか。」
西部劇の酒場の入り口みたいな扉を開いてギルドの中に入って行った。中は意外に広く、真正面には受付カウンターが4つある。受付カウンターの横は酒場のようになっている。
周りをちらっと見ると冒険者と思える人達が何人かいる。
「おぉぉぉ、あれってエルフだよな? あっちは獣人だな。まさしく憧れてたファンタジーの世界だ。それにしても結構女性の冒険者もいるんだな。」
さすがにビキニアーマーということは無かった。そこは残念だ。ただ結構綺麗な女性が多いなぁ、とチラチラと見ているとあまりにも挙動不審に見えたのか受付カウンターにいた受付嬢から
『あの~、何かご用でしょうか?』
「あ、す、す、すみません。あの、実は冒険者登録をしたいのですが。」
挙動不審に加えて吃ってしまった。非常に恥ずかしい。今まで母親以外に話した女性といえば、デブを豊満とほざくメスオークと、貧相をスレンダーとのたまうメスゴブリンだけだ。なので緊張しても仕方がない。
受付嬢と比較すると、メスオークやメスゴブリンとは何故こうも違うのか?生物学的に摩訶不思議だ。あいつらはきっと何か違う進化をした生き物なのだろうと思うことにする。
『あ、はい。冒険者登録ですね? 大丈夫ですよ。身分証明書はお持ちですか?』
笑顔だ。もちろん、営業スマイルなのは理解しているが美人受付嬢の笑顔にクラクラしそうになった。美人受付嬢の笑顔は破壊力抜群だ。
「はい。あ、仮身分証明書でも大丈夫でしょうか?」
『はい。大丈夫ですよ。では少しの間、お借りしますね。』
ドキドキしながら、受付嬢に仮身分証明書を手渡した。仮身分証明書を受け取った受付嬢が奥に行き、2~3分後にカードを持って戻ってきた。
『では、登録料として銀貨2枚が必要ですが、お持ちでしょうか?』
「あ、はい。ちゃんと持ってます。」
銀貨2枚を受付嬢に手渡した。手渡すときにちょっとだけ受付嬢の手に触れた。メスオークやメスゴブリンの手と違って柔らかった。
『ふふふ、確かにお預かりしました。』
俺の顔が赤くなっているのがバレているんだろうな。恥ずかしいなぁ。
『では、このカードの上に手を乗せてください。』
受付嬢に言われるがままに、カードの上に手を置いた。するとカードが光った。
『はい、もういいですよ。このカードがレイさんのギルドカードになりますので失くさないようして下さいね。失くした場合は再発行に金貨1枚が必要ですからね。あとレイさんはランクHからになります。』
「え、もう出来たんですか?随分と早いですね。」
『えぇ、カードの発行自体は直ぐに出来ますから。』
直ぐに発行出来るのに失くしたら、再発行に金貨1枚か。死んでも失くせないな。大事にアイテムボックスに入れておこう。
『では、カードをどうぞ。しつこいようですが、くれぐれもカードを失くさないように注意して下さいね。』
失くさないように2度も念押しされ、受付嬢から手渡されたカードを両手で持ちじっくりと見る。普通のカードだよな。
『では続けて、ギルドのルールを説明しますね。』
「はい。お願いします。」
ギルドのルールは
・ギルドメンバー同士の決闘は禁止
・依頼の横取りは禁止
・年に3回以上依頼を受けること
・年に銀貨3枚納めること
・ギルドからの依頼は原則受けること
以上がルールとのこと。
『何度もルール違反を繰り返すと罰金だけじゃ済まなくなりますので注意して下さいね。』
ルールを破るとギルドカードが没収されることもあるらしい。少なくとも罰金は確実とのことだ。
『最後に冒険者ランクはH~SSSまであります。ランクアップには一定の功績を残さないと駄目ですから頑張って下さいね。』
冒険者ランクは結構、刻み幅があるな。出来ればランクAくらいまでは上がりたいな。
「はい、分かりました。頑張ります。あ、そうだ。この町に来る途中で倒したモンスターの魔石と武器って買い取ってもらえるんですか?」
『はい、大丈夫ですよ。ちなみに何を倒したんですか?』
「え~と、ラージラビットとゴブリンです。」
『分かりました。では、こちらにどうぞ。』
カウンターの奥に行き、アイテムボックスからラージラビットの死体と魔石を4つとゴブリンが使っていた武器を取り出した。
『へぇ、レイさんはアイテムボックス持ちだったんですね。冒険の役に立つ良いスキルをお持ちですね。』
少しだけ誉められたようだ。そして査定した結果を教えてくれた。
『そうですねぇ、銀貨2枚、大銅貨3枚というところですね。よろしいですか?』
「はい。それでお願いします。」
相場が分からないので頷くしか無い。ギルドを信用するしかない。さすがに新人の収入をくすねることはしないだろう。しかも無一文だしな。
『では、こちらが報酬ですね。』
銀貨2枚と大銅貨3枚を受け取った。 これでなんとか宿屋に泊まれるかな。