0046:異世界にもホテルがあった
セレシーナの店で朝を迎えた。セレシーナは既に起きており朝食を作っていた。
『ほら、朝食だよ。しっかりと食べて行くんだよ。朝食は私の奢りにしておくよ。まぁ、簡単に作ったもんだけどね。昨日は久しぶりに楽しく話が出来たからね。』
セレシーナが短時間で作った朝食も美味しかった。ひょっとしたら、セレシーナは料理のスキルでも持っているんじゃないのかな?
「御馳走様でした。凄く旨かったです。」
『そうかい。満足してくれて良かったよ。また、遊びに来ておくれよ。』
「はい、そのうち必ず来ますね。」
セレシーナの店を出て、馬車まで戻ってきた。御者のオッサンが
『全員揃ったようなので、出発しますね。』
と言って馬車を出発させた。また暇との戦いが始まった。村を出発して数時間が経過したところで護衛の1人が叫んだ。
『コボルトの集団が襲ってくるぞ~!』
モンスターの襲撃の声に全員が素早く反応した。俺もアイテムボックスから全員の武器を取り出したところで馬車が停止した。
「どうする? 待機する? それとも外に出るか?」
『ご主人様、とりあえず、馬車の外に出ましょう。』
馬車の外に出ると既に護衛とコボルトの戦闘が始まっている。護衛は6人の冒険者達だが、コボルトは30匹くらいかな。
護衛達にはちょっと手に余るようだ。アイリーン達は戦いたくてウズウズしているようだ。一応確認してから手助けをすることにする。
「ねぇ、俺達も戦闘に参加しても良い?」
『あぁ、手助けしてくれるなら助かるよ。』
よし、許可を得たことだし、コボルト達を倒すことにした。ちょうど良い暇潰しとばかりにアイリーン達はコボルトを倒していく。
他の冒険者達の馬車の外に集まって来たが
『あれ、俺達は必要無いね。』
『そうだな。見てるだけでいいかな。』
と言いながら、ボケッと立っている。俺とサーラはアイリーン達が倒したコボルトから魔石と討伐証明部位を剥ぎ取りしていく。
そんなに暇だったのかな? アイリーン達は楽しそうにコボルトを倒していく。そして10分くらい経過した。
『あ、ご主人様。コボルトは全部倒しましたよ。』
『良い運動になったよ、旦那様。』
『主様も参加すれば良かったのに。楽しかったよ。』
「………良い暇潰しが出来て良かったね。」
『『はい。良い運動になりました。』』
他の冒険者達が小声で会話している。
『30匹くらいのコボルトを3人で倒しておいて暇潰しか。』
『あのパーティーにはちょっかい出さないほうがいいな。』
『あの娘達、美人なのにな。なんか勿体無い気がするな。』
その後も何度かコボルトが襲ってきたが難なく撃退した。俺とサーラも何回か戦闘には参加した。レジーナの気配探知が凄すぎて護衛よりも先にモンスターを発見していたため、少し護衛が落ち込んでいたが。
そして翌日、ようやくダンジョン都市に到着した。予定よりも1日早く着いたようだ。御者のオッサンに
『あんた達のおかげで早く到着したよ。ありがとうな。』
御者のオッサン曰く、普通はモンスターとの戦闘にはもっと時間が掛かるため、本当なら明日到着する見込みだったらしい。
俺達としては暇潰しが出来て、かつ小遣い稼ぎも出来たので問題は無い。まぁ、戦っていたのは主にアイリーンとマリーナとレジーナの3人だけだが。
さて、これから重要なミッションだ。宿屋の確保をしなければならない。しかも相部屋は無しだ。
「よし、これから全員で宿屋を探すよ。5人部屋で、かつ相部屋は無しということで。」
『かなり気合いが入っていますね、旦那様。』
『まぁ、主様の気持ちは分かるかな。男の冒険者の視線は気持ち悪いし。』
『ご主人様、先にギルドに行かなくても良いのですか?』
「もちろん、宿屋のほうが優先だよ。皆で探しに行って、少ししたら此処に戻ってきてね。」
全員が宿屋を探しに散って行った。ダンジョン都市には多くの冒険者が集まるため宿屋が多い。なので、全員であちこちの宿屋に空き部屋があるか確認しまわった。
約1時間後に全員が戻ってきた。さて宿屋を確保出来たか確認だ。
「皆戻ってきたね。宿屋を確保出来たか確認しようか。まずは俺からだけど、ゴメン。こっちは駄目だったよ・・・」
『ご主人様、スミマセン。私も駄目でした。』
『主様、ごめんない。私も。』
『レイさん、私も駄目でした。』
「そうか、全員駄目だったか。」
『ちょ、ちょっと待ってよ、旦那様。私を忘れてるよ?』
「あ、マリーナ、ゴメン。そっちも駄目だったよね?」
『え? ちゃんと宿屋を確保出来ましたよ?』
「そうだよね、こんな時間からじゃあ、宿屋なんて取れないよねって、え、マジで? 宿屋取れたの?」
『はい、マジですよ。ただ、値段がちょっとだけ高いですけど、大丈夫ですか?』
「ちょっとくらいなら、相部屋を回避出来る費用だと思えば多少は大丈夫だよ。」
早速、マリーナが探した宿屋に向かったが、宿屋に着いたらビックリだ。かなり高価な雰囲気が漂う宿屋だ。普通の宿屋が民宿なら、ここは間違いなくホテルだな。
「ここって、本当にちょっとだけ高いのか? 実は凄く高いんじゃないの?」
『えっとですね、一泊1人あたり銀貨4枚って言っていましたよ、旦那様。』
オークシンの宿屋は安かったんだな。あっちは1週間で銀貨5枚だったのに。
「5人だと大銀貨2枚かぁ。でも今からだと普通の宿屋には泊まれないし、仕方無いかな。」
念のため、アイテムボックスに入っている金を確認した。アイテムボックスに入っている物はわざわざ取り出さなくても数が分かる仕様だ。
金貨 x1
大銀貨 x28
銀貨 x35
大銅貨 x24
銅貨 x19
それなりに金は持っていたな。ダンジョンでどれくらい稼げるか分からないが暫くは大丈夫だろう。
「じゃあ、中に入ろうか。」
『レイさん、大丈夫ですか?』
「大丈夫だよ。それよりも早く中に入ろうか。手続きもあるだろうし。」
宿屋というか、ホテルの中に入ると立派な受付カウンターがある。カウンターには受付嬢がいる。
『いらっしゃいませ。ご宿泊でございましょうか?』
この受付嬢の笑顔も、サーラに負けじと破壊力が抜群だな。緊張するなぁ。
「あ、はい。5人部屋をお願いします。」
『はい。畏まりました。それでは、お風呂付きとお風呂無しが御座いますが、どちらの部屋をご希望でしょうか?』
「え? 風呂付きの部屋があるの?」
『えっと、はい。お風呂付きの部屋も御座いますよ。ただし少々、お値段が上がりますけど。』
「はい。なら、お風呂付きで!」
『え? ご主人様、大丈夫なんですか?』
『レイさん、お金足りますか?』
アイリーンとサーラがお金の心配をしているようだ。
『え、あ、はい。あと、お風呂の大きさは如何致しましょうか?』
「え? 風呂の大きさ? 大きい風呂も有るんですか?」
『はい。御座いますよ。ただし、お風呂のスペースが広いため、逆にお休みするためのスペースが少し狭くなっていますが。あと、お値段のほうがもう少し掛かりますけど。』
風呂があるだけじゃなく、大きい風呂まであるのか? 大きい風呂があるってことは、そういうことだよな? これは期待しても良いんじゃないかな? これはもう、大きい風呂を選択するしか無いよな。
「じゃあ、風呂のスペースが広い方でお願いします!」
よければブックマークや評価してもらえると凄くモチベーションアップしますのでよろしくお願いいたします。




