0033:緊急依頼が発動された
翌朝、起きて朝食を食べるために食堂に向かった。食堂には数人の冒険者達がいたがほとんどが緊急依頼が出るかどうかの話をしているようだった。
「やっぱり、緊急依頼が出るのかな?」
『ご主人様、隣村を襲ったモンスターがこの町に向かっているなら今日辺りにでも緊急依頼が出るかと思いますよ。』
「そっか。じゃあ一応、朝食後にギルドへ行ってみようか?」
『旦那様、了解しました。』
『主様、分かりました。』
とはいえ、急ぎでギルドに行く必要も無いだろうから朝食はゆっくりと食べた。朝食を食べ終わり食器を片付けていると、マーサが俺の側にやって来た。
『ねぇ、レイさん? もしモンスター達がこの町にも襲い掛かってきたらレイさん達も戦うの? ねぇ、恐くないなの?』
モンスターと戦うのだから恐く無いはずが無い。
「まぁ、俺達のランクでも討伐依頼に参加出来るなら参加するつもりだよ。恐いか、恐くないかで言えば恐いよ、やっぱり。でも戦える人が参加してモンスターを倒さないと、この町の人が困るでしょ?」
うん、良いこと言うなぁ、俺。
『うん、そうだね。そうなんだよね。でも、なんかレイさんのくせに生意気だなぁ・・・』
「え~、なにそれ? なんかおかしくない?」
アイリーン達がクスクス笑っている。
『もういいから、早くギルドに行って来なさい。』
照れているマーサに追い出されるように宿屋を出た。宿屋を出て、隣のギルドへ向かおうとするとギルドの入り口が混雑している。
「なんだろう? 明らかに混雑しているね。これじゃあ、とても中に入れそうにも無いね。」
ギルドの中に入れないため、同じようにギルドに入れない冒険者達の会話を盗み聞きする。情報収集は大事な作業だよね。
『隣村を襲ったモンスターの群れがこの町に向かって来ているらしいな。』
『その情報って本当なのか?』
『討伐依頼に行っていた複数パーティーが確認したらしいぞ。』
どうやら、モンスターの群れがこの町に向かってきているのは確定のようだ。
『ご主人様。おそらく、もうすぐ緊急依頼が発動されるかと。』
「この冒険者達は皆、緊急依頼が発動されるのを待っているのか?」
『おそらくはその通りかと。』
暫く待っていると、ギルドの中から1人のごっついオッサンが出て来た。そしてギルドの職員と思われる男達が演説台をギルド入り口前に設置した。演説台が完成すると、演説台の上に登ったごっついオッサンが話を始めた。
『皆、良く聞いてくれ。皆も知っているように隣村がモンスターの群れに襲われた。そして、そのモンスターの群れがこの町に向かっている。』
まぁ、もう色々と噂が出回っている話のため、誰も驚いた様子は無い。
『モンスターを見た冒険者達からの情報から群れの構成はゴブリン、コボルト、ワーウルフとのことだ。また、その数だが、およそ300~500匹程度だと思われる。』
ゴブリンやコボルトは何匹も倒しているがワーウルフは見たことが無い。ちょっとだけ興味がある。どんなスキルを持っているのかな?
『今回のモンスターはランク自体は低いが数は多い。なので討伐参加に冒険者ランクの制限は設けない。なのでそこは自己責任で参加してくれ。報酬は参加料で銀貨1枚、討伐証明部位は通常の3倍で買い取る。』
結構、破格な条件のような気がする。元々参加するつもりだったので参加確定だな。
『ちなみに、今回の討伐隊のリーダーは副ギルド長である俺、ザインが務める。参加するものは受付で登録してくれ。モンスター達は明日の昼頃、この町に到着する見込みだ。なので、参加者は明日の朝、ここに集合してくれ。以上だ。皆の参加を期待している。』
以上で緊急依頼が発動されたようだな。受付に冒険者達が集まっている。100人くらいの冒険者達が受付に並んでいる。
『なんか、今回の緊急依頼は報酬が渋いよな。』
『あぁ、でもモンスターがゴブリンとかコボルトじゃ仕方無いよな。』
『高ランクの奴らは今回の参加を見送るらしいな。まぁ、万が一のために町に待機しているらしいがな。』
あれ? 報酬は破格だと思っていたが違ったらしい。でも参加することには変わらない。
「俺達も並ぶとするか。」
アイリーン達も頷いた。俺達も受付をするために冒険者達の列に並んだ。受付にはいつもの受付嬢がいた。
『あ、レイさんじゃないですか。レイさんも今回の討伐隊に参加するんですね。レイさん達なら大丈夫だと思いますが無理をしないで下さいね。』
「もちろん。無理はしないです。」
『分かりました。ではギルドカードを預かりますね。』
ギルドカードには今まで倒したモンスターの種類と数が記憶されているらしく、討伐戦前のデータを控えておき、討伐戦後との比較で誰がどのモンスターを何匹倒したかを確認しているらしい。
なので、討伐戦ではわざわざ討伐証明部位を剥ぎ取りしなくていいとのことだ。これは凄く楽チンだ。
『はい。ギルドカードをお返しします。頑張って下さいね、レイさん。でも、くれぐれも無茶はしないようにお願いしますね。』
討伐隊参加の受付が終わった後はすることが無くなった。昼前にすることが無くなったことは記憶に無いな。
「この後はどうしようか?」
『旦那様、皆でデートをしましょうか?』
『主様、デートって何ですか?』
レジーナはデートを知らなかったようだ。マリーナがレジーナにデートの意味を教えている。正直に言えば、俺もデートの経験が無いから何も教えられない。
『レジーナ、デートって、男の子と女の子が一緒に町の中を歩いてみたり、何かを買ったり、何か美味しい物を一緒に食べたりすることよ。』
マリーナが得意気にレジーナに説明している。しかし、レジーナの一言。
『え? それっていつもの事と同じじゃないの? 何が違うの?』
『あれ? そうね。そう言われれば・・・いつもと同じよね? じゃあ、いつもデートをしていることになるのかな? どう思う、旦那様?』
「本当にそうなのか? それは、ちょっと違う気がするんだけど?」
『そうよねぇ・・・』
アイリーンも含めてデートとは何か? 皆で考えてみたが、本当のところは良く分からない。
誰か、正しいデートって何かを教えてくれ・・・




