0275:原因の対処完了
3発目の圧縮ファイアボール強化版はリッチに吸収されずに大爆発となった。
俺達は魔法シールドを展開していても爆風に吹き飛ばされ、後方にいたはずのアレックス達も吹き飛ばされた。
「いててて、みんな、無事かぁ~?」
『『いたたた、なんとか無事です~。』』
良かった、アイリーン達は無事のようだ。
『俺達も何とか大丈夫だ・・・』
どうやらアレックス達も無事だったようだ。とりあえず全員に回復スキルを使った。しかし非難轟々だった。
『ダンジョンが崩れなかったのが奇跡です。』
『あんな魔法は2度と使うな!』
『私達まで殺す気ですか?』
『もう少し常識を学べ!』
そうは言うけど、あれくらいしないと倒せなかったと思うんだけどなぁ。
「あ、しまった。これで"種"が何なのか聞けなくなっちゃったな・・・」
すると、どこからかは分からないが声が聞こえてきた。
『はははは、まさか我の分身体を倒すことが出来る人間がいるとは思わなかったぞ。』
この声は先ほど倒したはずのリッチの声だ。
「分身体? ということは、この声の主が本体なのか?」
『左様だ。いかにも我がリッチの本体だ。』
『くっ、大人しく姿を現しやがれ!』
アレックスが上のほうを向いて叫んだ。
『ふふふ、それは御免被るな。我が姿を見せれば、お主達は我を害しようとするであろう?』
『当然だ。何を当たり前の事を言っていやがるんだ!』
『ふふふ、ならば姿を見せるわけにはいかないだろう? 我とて消滅はしたくないからのう。』
まぁ、確かにリッチの言う通りだよな。
「それは今のあなたよりも俺達のほうが強いということですか?」
『そうだ。分身体等を使わずに戦っておれば我のほうが強いがな。分身体が消されてしまった以上は元の半分しか力が出せんからな。まぁ元の力が戻るのに数百年は掛かるかのう・・・』
「そうですか。今のあなたの本体がどこにあるのか分からないので倒しようが無いのは分かりました。でも約束通り、あなたの言う"種"については何なのか教えてください。」
『おぉそうだったな。確かに約束したな・・・まず始めにだが、お主達はダンジョンコアがモンスター共を外からダンジョンの中に連れてきているのは知っておるな?』
「はい、そう聞いていますね。」
『それは本当は正しくは無いのだ。』
「え? 正しく無い? それって・・・」
『正しくはモンスターを複製しておるのだ。』
複製っていうことはコピーを作っているということだよね。
「モンスターの複製ですか? もしかして霊的存在が複製の元ネタか?」
『中々察しが良いな。その通りだ。あれはダンジョンコアから排出され、ダンジョン内を漂っておりダンジョンコアが複製元のモンスターを決めてモンスターを複製しておるのじゃよ。』
「なるほど・・・で、あなたはここで何をしていたのですか? あなたは我の種と言っていたことからすると霊的存在を集めていた?」
『くくくっ、お主はつくづく察しが良いな。その通りじゃよ。我は"種"を集めていただけじゃよ。』
「………それで霊的存在を集めて何をしようとしていたんですか?」
『本当は秘密にしておきたかったんだがな。まぁ約束だしのぅ・・・仕方が無いな。ダンジョンコアと同じようにモンスターの複製が出来るかどうかの実験をしようと考えておったのじゃよ。』
ここまでの話は理解出来た。しかし1つ疑問がある。
「そのモンスターの複製ってダンジョンコアからの距離が離れると強いモンスターが複製出来ないので無いですか?」
もし、ダンジョンコアからどんなに離れていても強いモンスターが複製出来るなら1階層から強いモンスターが出てくるはずだ。
『くくくっ、その通りじゃよ。まったくもって素晴らしい理解力じゃな。強いモンスターを複製するためにはダンジョンコアの近くで複製するか、"種"同士を融合させて強い"種"を作ることが必要なのじゃよ。』
「なるほどね、ようやく理解出来ましたよ。」
『ふふふ、お主は本当に面白いな。良かったら我と同じくリッチに生まれ変わって共に研究しないか?』
「御断りします! 」
『ふふふ、まぁ、そう言うだろうと思ったが残念じゃのう。』
「最後に聞きたいんですが、この霊的存在が急に増えた理由って分かりますか?」
『恐らくじゃが、ダンジョンコアにちょっかい出している何がおるんじゃないのか?』
ダンジョンコアにちょっかい出しているのがいるのか。そいつが何なのか分からないがそれを排除すれば解決するということだな。
『これで約束は果たしたぞ。おぉ、そうだ。お主の名前は何というのだ?』
「冒険者のレイです。」
『そうか、レイか。覚えておくとしよう。しかしレイは強いのう。我の分身体はランクS相当の強さのはずなんじゃがな。』
「皆がいたからですよ。1人では無理でしたよ。」
『ははは、謙遜じゃな。レイよ、我の名前はガラムじゃ。ではまた会おうぞ。それまではさらばじゃ!』
ガラムの声が去っていったところで圧倒的な存在感も消えた。さてと原因は分かった。ダンジョンの最下層に行かないといけないが俺達はまだ最下層に行ったことが無い。
『というとこは、一度ダンジョンを脱出してレイが俺達と一緒にポータルで入り直すか。』
ポータルの水晶に触れている人に触れてさえいれば仲間と見なされて一緒に移動出来る。1度でも行ったことがある階層にはポータルで移動出来るようになる。
なので1度ダンジョンを脱出した。そして俺とアレックスの2人でダンジョン最下層まで移動してすぐに入口まで戻ってきた。
そしてポータルに手をかざすと行ける階層に最下層が追加されているのを確認した。
『レイ君、それじゃあ最下層へ向かうよ。僕達が最初に行くからね。』
ソリアーノ達が最初に最下層へ向かい、すぐに俺達も続いた。
『来たな、レイ。あそこに見える扉がダンジョンコアの部屋の扉だ。間違ってもコアを破壊するなよ?』
アレックスは俺の事をどう思っているのやらだ。少なくともアレックスよりは思慮深いつもりなんだけどな。
『うん? 何か言ったか、レイ?』
「ナニモイッテナイヨ。」
『そうか? 気のせいか。まぁいいや、じゃあ扉を開けるぞ。』
扉を開けると部屋の中央に巨大なコアが光輝いていた。今までに見たコアよりもデカいな。
『す、凄い大きさですね!』
『しかも他のコアよりも輝きが凄いです!』
『魔力の量が半端無いですね!』
「………うん、確かに凄いね。でもコアにちょっかい出しているというモンスターの姿が見えないね?」
『『あ、確かに・・・いませんね。』』
念のため周囲を鑑定してみる。するとコアの周囲から鑑定に引っ掛かったものがいた。
〈鑑定〉
魔吸虫
スキル:魔力吸収
親指程の大きさの虫が無数した。
「そこら辺に虫がいるね。それも結構な数だね。」
『レイさん、これは魔吸虫ですね。ひょっとしてダンジョンコアにちょっかい出しているのって、この魔吸虫のことじゃないでしょうか?』
サーラ曰く、この魔吸虫は魔力を持った生物に取り付いて魔力を吸収するらしい。まるで蚊みたいな虫だ。
「なるほどね。これがコアにちょっかい出している存在の正体か。早速、この魔吸虫を潰していくか。」
『えっと、ちょっと虫系を潰すのは・・・』
『私もパスしたいな・・・』
『ここは男達の出番でしょう・・・』
『そうよね、頑張れ~!』
え? 女性陣は全員拒否ですか?
『え、それは狡いぞ!』
『ここは皆でやるべきだろう?』
『お前ら、こんな時だけ女の振りをし・・・』
最後に喋りかけたアレックスは女性陣からボコボコにされている。
「何でそんなに虫を潰すのを嫌がるの?」
『レイ君は知らないのかい? この魔吸虫は潰すとかなり臭い液体が飛び散るんだよ。しかも2、3日はその匂いが取れないんだよ。』
「それは嫌だな・・・あ、そうだ。潰さないで生け捕りするのはどうかな?」
そう言うと、俺はアイテムボックスから飲み干したポーションの空小瓶を取り出した。
「生け捕りした魔吸虫をこの小瓶を詰めるのはどうかな?」
『確かにそれなら大丈夫そうだね。女性陣もそれなら大丈夫かな?』
ソリアーノが女性陣に向かって話を振ると女性陣も渋々了承した。
1時間程でコアの部屋から魔吸虫を一掃した。鑑定で部屋中確認したが1匹も取りこぼしは無い。完璧に取り尽くした。
『ふぅ、目が疲れた~』
『かなり腰も痛いよねぇ~』
『まぁ、これでダンジョンも安定するよね。』
確かに目と腰が疲れたな。
『よし! 帰ってギルドに報告して今日は宴会だな。』
アレックスはもう宴会モードになっていた・・・




