0202:未踏破ダンジョン5日目その1
昨日は大変だったな。ロックスパイダーの糸の粘液で身体中ベトベトになり、服もベトベトになり洗うのに凄く時間がかかった。まだ少し眠いが朝食後に魔石とドロップアイテムを売りにギルドへ向かうことにした。
ギルドの中に入るとダンジョン都市のギルドにいた受付嬢がいた。
『あ、レイさん。一昨日話した通り昨日からこちらのギルドで仕事をしますのでよろしくお願いしますね。それで今日はどうしたんですか? いつものように買取ですか?』
「はい。買取をお願いします。」
するとカウンター奥へ案内された。
『こちらへどうぞ。これくらいの広さなら大丈夫ですかね?』
さすが慣れた受付嬢だな。俺達が持ち込む魔石やドロップアイテムの量がどのくらいなのか良く把握しているな。
アイテムボックスから魔石とドロップアイテムを取り出した。迷彩の革はいつか使えるかもしれないので残しておく。
『いやぁ、やっぱりレイさん達は違いますねぇ。相変わらずモンスターを虐待していますねぇ。』
おい、虐待って言うなよ。この受付嬢は・・・
『とりあえず査定しますから、カウンター横の酒場あたりで待ってて下さい。』
受付嬢は俺達を手であしらうような仕草をしてカウンター奥から追い出した。
「………なんか、俺達の扱い軽く無いかな?」
『………ご主人様、きっと気のせいですよ。』
とりあえず、受付嬢に言われた通りカウンター横の酒場で飲み物を飲みながら呼ばれるのを待つことにした。
こういう時は大事な作業がある。それは周りの話を盗み聞きすることだ。そこから情報が聞こえてくることもある。
しかし、聞こえてくる話は新しく発見されたダンジョンの話ばかりだった。しかし、その話の中で気になる言葉を聞いた。
『見ろよ。この剣だが5階層の宝箱で見つけたんだぜ。中々良い剣だろう?』
5階層? 宝箱?
「アイリーン、今の話聞こえた? 5階層で宝箱って言ってたよね? そんな低階層でも宝箱が出るの?」
『それはもちろん、出るときは出ますよ。』
「そっかぁ、そうだよね・・・」
しまったなぁ。折角ダンジョンに潜っているのに宝箱の存在を忘れていたな。さすがにレジーナも宝箱の気配とかは分からないだろうしね。まぁ宝箱は引き続き見つかったらラッキーだと思うようにしよう。
『レイさ~ん、査定が完了しましたよ~!』
受付嬢の大きな声がギルド内に響いた。
「お、もう査定が終わったようだね。」
飲みかけの飲み物を急いで飲み干してからカウンターに向かった。カウンターに到着すると受付嬢は笑顔だった。
『レイさん。今回の買取価格ですが、白金貨1枚、大金貨5枚、金貨7枚ですね。相変わらず稼ぎますねぇ。』
随分と多いと思ったけど買取増量中だったな。ならば今は稼ぎ時だよな。
報酬を受け取り、ギルドを出る前に受付嬢に言った。
「また来ますね。ギルドの金庫が空になるくらいモンスターを倒して来ますから。」
『え? ちょっ、ちょっとレイさん。待って下さい。少しは自重して下さいよ?』
受付嬢の言葉に俺は笑顔で手を振った。心の中では、"自重なんかしないよ" と呟いてダンジョンに向かった。
ダンジョンに到着するといつもの受付のオッサンがやってきた。
『よう、レイ。今日は随分とゆっくりした出勤だな。』
出勤じゃないし・・・冒険者を会社員扱いにしないで欲しいな。確かに調査隊の依頼を受けている最中だけどさ。
オッサンと少し話をした後、ポータルを使って11階層へ向かった。
11階層に到着すると、目の前に無数の池があり、その池の周りには雑草がびっしりと生えている。そして池と池の間には巨大な木が所々に生えている。
「これって結構戦いにくいんじゃないかな?」
所々に狭い道が見え、狭い道では2人が並んで歩くのがやっとの広さだ。
『結構じゃなくてかなり戦いにくいですよ、ご主人様。出来る限りの狭い道は回避したほうが良いですね。遠回りになってしまうかも知れませんけど。』
全員が頷き、先に進み始めた。すると周囲の池から泣き声が聞こえてくる。
『ゲコゲコ』
『ゲロゲロ』
「明らかに蛙の泣き声だね。」
『嫌な予感がしますね、レイさん。』
池の周囲の草むらから色とりどりの蛙達が続々と姿を現してくる。蛙の大きさはどの蛙も1m程の大きさだ。
〈鑑定〉
ポイズントード x5
スキル:毒攻撃、毒耐性
ファイアトード x6
スキル:火魔法
サンダートード x3
スキル:雷魔法
ウォータートード x4
スキル:水魔法
パラライズトード x5
スキル:麻痺攻撃、麻痺耐性
「ちょっと種類が多過ぎだね。とりあえず斑模様の蛙に気を付けて。毒持ちと麻痺持ちだからね。」
皆に注意をしたところで、突然ジャンヌが張り裂けんばかりの叫び声をあげた。
『………いやぁぁぁぁぁ、気持ち悪ぃぃ!』
その瞬間、周囲からバリバリと耳が痛くなるような音が響いた。ジャンヌのサンダーレイが炸裂した。
20匹以上いた蛙達があっという間に魔法で倒したかと思えば、その直後に生き残った5匹の蛙に対して大剣で斬りつけている。
『………はぁはぁ、すっきりしました。』
本当に20匹以上の蛙をジャンヌ1人で倒してしまった。さすがに肩で息をしている。
「えっと、ジャンヌ、大丈夫・・・かな?」
『………すみません。お見苦しい姿を晒してしまいました。』
「いや、それは良いんだけど。ジャンヌは蛙が苦手なのかな?」
『………いえ、そこまで苦手では無いのですが、今回のは色が駄目でした。』
確かに所謂蛍光色の蛙だったな。まぁ気持ち悪いのは間違いなかったな。
『旦那様、魔石とドロップアイテムを拾って来ましたよ。』
ジャンヌと会話している間に魔石とドロップアイテムを拾って来てくれたようだ。ちなみにドロップアイテムは蛙の革と蛙のモモ肉だった。
その後も何度か蛙達の襲撃を受けたが、その度にジャンヌが発狂したように1人で撃退していった。
『レイ殿。ジャンヌって凄いわね・・・』
「そうだね。俺もそう思うよ・・・」
皆してジャンヌの発狂ぶりに唖然とするしかなかった。でもジャンヌのおかげで楽して全員分の毒攻撃、毒耐性、麻痺攻撃、麻痺耐性のスキルが取得出来た。
そして、ついに12階層への下り階段を発見した。
『………レイ様! 早く降りますよ! 早く!』
「あ、はい・・・分かりました・・・」
ジャンヌに急かされるがまま、下り階段を降りて行った。階段を降りると目の前には扉があった。おそらく中ボスの部屋だろう。
「どうやら、このダンジョンは6階層毎に中ボスの部屋があるようだね。」
『そのようですね、ご主人様。』
仮のポータルを設置しつつ、目の前の扉を確認するが扉は閉まっている。なので中で誰かしらが中ボスと戦闘中のはずだ。
「すぐに扉が開くかも知れないから昼食は軽めにしておこうか。」
アイテムボックスから串肉を取り出し、全員に串肉を渡した。
「そろそろ中ボスもランクAモンスターになったりするのかな?」
『どうかしらね、レイ。多分だけど次もランクBモンスターだと思うわよ?』
「なんでそう思うの? なんか法則とかがあるの?」
『特にちゃんとした法則があるわけじゃないわ。ただ、ダンジョンにはキャパシティというのがあるって言われているのよ。なのでランクの高いモンスターばかりだとキャパシティオーバーしちゃうのよ。もちろんダンジョンコアの質にもよるらしいわ。』
なるほどね。そういう説もあるのか。だが俺の考えでは階層とモンスターのランクがリンクしているんだろうと思う。キャパシティの話が正しいのならば、低階層に高ランクモンスターを配置した方がコアからすれば安全だと思うからだ。
すると目の前の扉が開いた。どうやら先に来ていた冒険者達との戦闘が終わったようだ。冒険者達が勝ったのか負けたのかは不明だが。
もし先に来ていた冒険者達が負けたのならば弱っている中ボスが相手になる。勝っていれば新しい元気な中ボスの対戦になる。もちろん先に到着した冒険者達の敗戦を望んでいる訳では無い。
「よし、じゃあ中に入るよ。」
『『はい。いつでも大丈夫です。』』




